眠れぬ夜

柏堂一(かやんどうはじめ)

 

 ある晩、帚星ほうきぼしのやつが何度も空を横切るものだから窓がガタガタと騒ぎ眠れなかった。


 眠れないじゃないかと怒って空を見上げるとカラカラと笑っていたので煙突の天辺てっぺんに登り尾っぽを捕まえた。


 キャっと言って手からすり抜けたが、そのまま螺旋らせんを描いて落ちてきた。


 馬鹿にするなと踏みつけるとパンっと弾けて街灯の下に青い粉が散らばった。


 自分はそのまま部屋に戻り眠りについた。




 次の夜、今度は流星群のやつが空から星の雨を降らすものだから、人声が騒々しくて眠れなかった。


 眠れないじゃないかと怒って空を見上げたが、どの流星に文句を言えば良いのかわからない。


 自分は昨日帚星を踏みつけた街灯の下に行き青い粉を集め、部屋に戻ってソーダ水の中に放り込んだ。


 途端にしゅっと音を立てて瓶の中から帚星のやつが飛び出した。


 窓を開けると今度は外に飛び出し、星の雨を尾っぽに巻き込んで、天頂の彼方へと消えていった。


 自分はそのまま眠りについた。



 朝になると窓の下に青いラムネの粉が落ちていた。



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眠れぬ夜 柏堂一(かやんどうはじめ) @teto1967

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