時渡り2ー水の神と子狸編ー
碧 心☆あおしん☆
第1話 祭りと座敷わらし
こちらを見つけていただきありがとうございます。
こちらの物語は、『時渡り』の後の物語となっております。
こちらだけでも分かる内容ですので、まったく問題ないですが、『時渡り』を読んでいただいてから、こちらを読んでいただくと、より分かると思います(^o^)
こちらを読んでいただき、気に入ってもらえたら、『時渡り』も読んでいただけたらとても嬉しいです(≧∀≦)
よろしくお願いいたします。
碧 心☆あおしん☆
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「わあ! わたあめー! 射的ー!」
初めて見る色々な屋台に
「こら!
「はーい!」
早歩きで射的の出店へ向かう時和を見ながら
「はぁ。せっかくの休みになんで
「しかたないだろ。
翔琉と亘、時和は
時和の母親の友来は、亘の父親と翔琉の母親の兄妹にあたり、今2人目が産まれそうで入院中だ。父親の浩介は付き添いで友来についているため、時和は友来の実家でもある亘の家で預かっていた。
翔琉は18歳、亘は22歳。2人は実家の神社を継ぎ神職の仕事をしている。だがそれは副業だ。本業は先祖代々続く表舞台には決して出ない、『
『時渡り』の仕事内容は、過去へ行って金品財宝を盗む不法トラベラーを捕まえ、時空警察に引き渡すのが主な仕事だ。
これが思っているよりも過酷で忙しく命の危険もあるため、翔琉はいつも「ブラック企業だ!」と叫んでいる。
そんな中、やっと取れた貴重な休みを子守で潰れたものだから機嫌がすこぶる悪い。
「なんで俺と亘なんだよ」
不貞腐れた顔で文句を言う翔琉に亘は苦笑する。
「しょうがないだろ。たまたま今日休みだったのが俺とお前だったんだから。他の者は皆、時渡りの仕事に出掛けているんだ。それに祭りは今日だけだしな」
祭りは、池がある大きな公園で毎年夏に行われている街一番のイベントだ。屋台もたくさん出て、公園の真ん中では
時和が母親がいなくて寂しがっているから、気晴らしにお祭りに連れて行ってやってくれと祖父に頼まれたため、今こうして3人浴衣を着て祭りに来ていた。
すると時和がまた走ってどこかに行こうとしていたため、翔琉は浴衣の襟首を掴み止める。
「こら! 勝手に行くんじゃねえ! 迷子になるだろ!」
「うー!」
「翔琉、そう怒るな。時和にとって祭りは初めてなんだ。好きにさせてやれよ」
「亘は甘過ぎなんだよ。こんな人が多い場所でうろちょろされたら迷子になるのが見えてる。普段でも落ち着きがないんだからこいつは――」
そう言って時和を見ると、当の本人がいない。
「あー! いねえ!」
「あれ、どこ行った?」
辺りを見渡すが、人が多すぎて見つからない。
「ほれ見ろ! こうなるんだよ!」
すると声だけが聞こえてきた。
『翔琉、時和はこの先の金魚すくいの所だ』
「お! シュラ! さすが。サンキュー!」
翔琉はあっという間に人混みをかき分け走って行ってしまった。
「――たく、翔琉も時和と変わらないじゃないか」
嘆息しゆっくり後を追う亘に、また声だけが聞こえる。
『翔琉が落ち着きがないのはいつものことだ。どこぞの守護神と一緒だな』
『リュカ! 誰が翔琉と一緒だ!』
『俺は誰もシュラだとは言ってないぞ』
『どうみても俺のことじゃねえか!』
『自覚はあるようだな』
『うるせい!』
そんな2人の言い合いを聞いていた亘はまた始まったと大きなため息をつく。
「2人ともいい加減、仲良く出来ないかなー」
『亘! お前の守護神! 解雇してやれ!』
「解雇って……。そんなシステムないんだけど……」
時渡りの人間には守護神が1人必ず生まれた時からついている。雇っているわけではないのだ。
『シュラ、気に入らないならお前が翔琉の守護神やめろ』
『誰がやめるか! 俺と翔琉の絆は切ることは出来ねえんだよ!』
『そう思ってるのはお前だけじゃないのか』
『あー! 聞き捨てならねえ!』
「はいはい。分かったから君達、少し静かにしてくれないかな」
うるさいなと耳に小指を突っ込みながら亘は金魚すくいの屋台の場所まで行く。すると翔琉と時和が金魚すくいをしていた。
「翔琉兄ちゃん、がんばれ!」
「おう!」
だが翔琉の網はすぐに破れてしまった。
「あー! くそー!」
「あーあ。翔琉兄ちゃん下手くそー」
「うっ!」
そんな2人を見て亘はクスっと笑う。あれだけ文句を言っていたのに結局一緒に楽しんでいるではないか。
――翔琉もまだまだ子供だな。
「下手だなー。翔琉」
「うるせい! 難しいんだよ」
「お前が下手なだけだろ。こつを掴めば簡単だぞ」
「そんなこと言うなら、亘、やってみろよ」
「ああ、わかったよ」
結局亘は6匹の金魚をゲットした。
「すごい! 亘兄ちゃん!」
金魚を受け取りながら喜ぶ時和を見て翔琉はムっとする。
「亘、うめえじゃねえか……」
そんな翔琉にシュラがゲラゲラ笑う。
『翔琉、お前何やってもだめだなー』
「うるせい! 笑うな!」
すると時和が不思議な顔をして首を傾げる。
「ねえ、さっきから翔琉兄ちゃんは誰と話してるの?」
「!」
――しまった。シュラとリュカの声は時和にはまだ聞こえねえんだった。
「えっとな……」
どうやって言おうかと逡巡していると亘が代わりに応えた。
「神様だよ」
「わ、亘!」
言っちゃだめだろと慌てる翔琉を亘は手をあげ制する。
「神様?」
「ああ、そうだよ。俺達は神社で働いているだろ? だから神様の声が聞こえるんだ」
時和は目を輝かせる。そんな会話を聞いていた翔琉は、ぼそっと呟く。
「あれが神か? どう見てもチャラい兄ちゃんと厳い
シュラとリュカの外見から出た言葉だ。
すると後ろから「うるせい」とシュラに軽く頭を殴られた。
「じゃあ僕も大きくなって神社で働くことになったら神様の声が聞こえるようになるの?」
「ああ。なるよ」
「やった!」
時和は大喜びし、また屋台を見始めた。
「亘、いいのかよ時和に言って。高校卒業するまでは話しちゃいけねえんじゃなかったのかよ」
「別に俺らの仕事のことを言ったわけじゃないし、普通でもあり得る会話を話しただけだ。問題ないよ」
そうかと横を見ると、また時和がいない。
「あれ? あいつまたどこ行った?」
『おい、翔琉』
シュラが翔琉の首を両手で持ち、ある方向を向かせる。
『時和はあそこだ』
「え?」
見れば、屋台の裏の離れた奥まった薄暗い場所の木の下で女の子に金魚を見せながら何か話している。よく見れば女の子は生きている人間ではない。格好もおかっぱで着物を着ている。
「亘、あの子、生きてないよな」
「ああ。でも死んだ人間でもないな」
するとシュラとリュカが言う。
『あれは、精霊の類いだな』
『ああ。お前達人間の言葉で言えば座敷わらしになるか』
「座敷わらし? でもなんで座敷わらしがこんなところに?」
『まあ普通だろ。精霊達もお前達と一緒で、祭りや楽しいことが大好きだからな。遊びに来たんじゃねえか?』
シュラはさも珍しくないことだと言う。確かに精霊だけではなく、幽霊の類いもちらほら祭りを楽しんでいるのが見える。
翔琉は時和へと歩み寄り話しかける。
「時和、勝手に1人で離れるなって言ってるだろ」
「あ、翔琉お兄ちゃん、この子がお願いがあるんだってー」
「お願い?」
「うん。なんか助けてほしいんだって」
翔琉は座敷わらしをじっと見て眉を潜める。翔琉には座敷わらしの話していることは分からないのだ。
――子供にしか言葉は分からないのか?
「シュラ、なんて言っているか分かるか? 俺には何も聞こえないんだけど」
シュラが翔琉の隣りに姿は見えないがやって来たのが分かった。すると座敷わらしはシュラがいる場所を見る。やはり座敷わらしにはシュラが見えているようだ。
『なんかこいつが――』
その時だ。バリバリバリと爆音と共に目の前の木に雷が落ちた。同時に翔琉と時和の姿が消えた。
そして次に翔琉と時和が現れたのは、周りは山と田園風景が広がる田んぼの真ん中だった。
時和は周りをキョロキョロする。
「あれ? ここどこ?」
翔琉は目を見開く。
「……ちょっとまて。これって……」
遠くには着物を着て、田んぼの手入れをしている人や、牛を引いて歩く人、着物姿の子供達が走り回る光景が目に入った。
「おいおいまじかよ……」
そして翔琉は叫ぶ。
「時渡りして過去に来てるじゃねえかー!」
すると後ろでシュラが姿を現した状態で隣りにいる座敷わらしを指さして言う。
「なんかこいつが神様のお社を作ってほしいんだとよ」
「は?」
見れば、座敷わらしがニコッと笑う。
「翔琉さん、よろしくお願いします」
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1話を読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
続きも読んでいただけたら嬉しいです。
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