①孤独なコドクと蟲毒都市
澤松那函(なはこ)
プロット
◯参考作品
『フリーダムウォーズ』
『バイオハザードシリーズ』
『ONE PIECE』
『ハンター×ハンター』
『ジョジョの奇妙な冒険』
『シティーハンター』
『とある魔術の禁書目録』
『カウボーイビバップ』
『トライガン』
『リコリス・リコイル』
『トランスポーターシリーズ』
『パシフィックリム』
『パイレーツオブカリビアン』
◯世界観
時代設定は、近未来の日本。2040年ぐらいを想定。
2000年
日本に異次元に住む怪獣が出現。自衛隊と在日米軍の共同作戦で討伐される。
怪獣の亡骸から目には見えないほど小さな大量の卵が飛散した。
卵の正体は寄生生物であり、寄生された人間は体組織の組み換えが行われ、異能と超人的な身体能力を持つ異能者(バグズ)となる。
日本から発生して世界中に波及した異能者たちの存在は、治安の悪化や犯罪の凶悪化などの大きな社会問題を生み出した。
2010年
アメリカ政府が国連に、世界中の異能者が日本に集め、異能者最初の発生地である埼玉県に作られた施設に隔離することを提案。
日本を除く全ての国連加盟国の賛成で決定された。
隔離施設は異能者の増加と共に巨大化していき、やがて都市となり、北関東一帯に広がった。
さらに隔離された異能者たちが生存をかけて殺し合い、交配を繰り返すことでより強力な異能者が生まれるようになる。
この頃から異能者の隔離された都市は『蟲毒都市』と呼ばれるようになった。
2020年
異能者たちの異能を元に日本で数々の新技術が作られた。
世界の技術力を飛躍的に発展させ、日本は加害者扱いされる立場から世界経済の牽引役を担うようになる。
世界中が異能者たちの異能を求めるようになり、より強力でこれまでにない異能を開発するために日本政府は『蟲毒計画』を立案。
荒れ果てた蟲毒都市の治安維持とまだ見ぬ異能の誕生を促すため、異能者全員に独自の電子マネー『蟲毒ポイント・通称コドポ』を設定。
コドポの多寡は、個々の異能者の行動によって上下し、多くの異能者を殺したり、蟲毒都市から外に出ようとした者ほど高く設定される。
対象異能者の細胞サンプルを日本政府に提出すると、コドポが付与される仕組み。殺す必要はないが
さらにコドポを使えば蟲毒都市では入手しにくい外の世界の品物と交換できる。さらには蟲毒都市の外に出られる権利まで販売された。
コドポの導入で、異能者たちはいくつかのグループに分かれた。
日本政府と手を組んで政府が求める異能を持つ異能者を狩るグループ
高額ポイントが設定された凶悪な異能者を狙うグループ。
複数で弱い異能者を狙い、安全にコドポを稼ぐグループ。
弱い異能者を守る代わりに、警備費用としてコドポを要求するグループ
グループに属さずに一人でコドポを稼ぐ者。
蟲毒都市の中で独自の経済圏が確立された。
2040年
蟲毒都市の治安と経済は一部で安定し、中でももっとも治安の良い『異能産業特区』には外界の人間が多く訪れている。
異能産業特区は、政府に雇われた異能者が警備しており、各国の一流企業が支社を構えていた。
異能産業特区は、蟲毒都市の外に暮らす人間にとって気楽に訪れる観光場所と化している。
しかし蟲毒都市の大半の地区は治安が不安定なままで、多くの異能者がコドポ目的で殺戮を繰り返していた。
蟲毒都市には今日も死亡者数を告げる人工音声の放送が流れる。
『蟲毒都市、本日の負傷者数は二百八十九人。その内、死者数は七十九人です。今日虫けらのように死ぬか、より高次元の存在に進化して明日を生きるか、全てはあなた次第です。それでは異能者の皆様、コドポ獲得のため今日もこれからもレッツ闘争!』
・異能者
寄生蟲に感染して異能を授かった者の総称。
既存の物理法則を超越した存在。
全ての異能者が異能と身体強化と身体操作の三つの力を持つ。
異能は各人が固有の能力を一つだけ持っている。複数の異能を持つものは基本的には存在しない。
異能をコピーする異能を持っていれば複数の異能を行使することも可能。
身体強化は、超人的な身体能力とそれに耐える肉体強度を異能者に与える。
上位の異能者の肉体強度は、既存の通常兵器はおろか核兵器ですら損傷を与えることは不可能となる。
身体操作は、生命力や質量などを操作ことができる。異能者ごとに得意な身体操作は異なる。
生命力を極めれば首が切断されても数分生存出来たり、質量操作を極めれば拳や蹴りで山を砕く破壊力を生み出すことも可能。
・怪獣
世間的には太古の地層から突如姿を現した規格外の生物。
その正体はアメリカ政府の依頼を受けた製薬会社の赤地製薬が作った生物兵器の試作型。
太古の地層から発見された寄生蟲の兵器化を目的として開発された。
自衛隊と在日米軍の共同作戦で赤地製薬本社ビルの傍で駆除されたが、死亡した際、多量の寄生蟲がばらまかれてしまった。
駆除作戦に従事した自衛隊員と在日米軍兵士を介して世界中に寄生蟲が拡散することとなる。
怪獣の遺体は、死後40年たっても腐敗することなく、赤地製薬の本社ビル前にそびえている。
世間一般では、寄生蟲によって突然変異した生物とされており、アメリカ政府や赤地製薬との関連は隠されている。
・寄生蟲
太古の地層から発見された寄生蟲。
寄生した者の体組織を置き換えて物理法則を逸脱した超常的な力を与える。
人類は猿だった頃に一度寄生蟲に寄生されている。その影響で脳が置き換えられて異常発達。他の動物を圧倒する知性を得た。
アメリカ政府と赤地製薬が寄生蟲の兵器化を考え、DNA操作を行った。
DNA操作された寄生蟲が再度人類に寄生することで、誕生したのが異能者である。
世間一般でも怪獣から寄生蟲が発生したこと。寄生蟲の感染によって異能者が生まれることは知られている。
ただし寄生蟲がアメリカ政府と赤地製薬によってDNA操作されたことは知られていない。
・赤地製薬
漢方を中心に販売していた日本の小さな製薬会社であったが、寄生蟲を太古の地層から発見したことがきっかけでアメリカ政府に買収された。
表向きにはアメリカの大手製薬会社に買収されている。
本社があった埼玉県の地下で寄生蟲の兵器転用の実験をしていたが、コレクターの暗躍で怪獣の暴走事故を招いてしまう。
現在本社ビルは、コレクターの根城となっている。
・コドポ
各異能者に割り振られたポイントであり、蟲毒都市内で流通している電子マネー。
物価に関しては現実の現代日本とほぼ同じ。
弱い異能者は数百~数千ポイント。強力な異能者なら数千万~億越えがごろごろしている。
異能者の強さを図る目安でもあり、1~9999コドポで無級。1万~100万コドポで下位級。101万~1000万コドポで中位級。1001万~9999万コドポで上位級。1億コドポ越えが神位級(かむいきゅう)と呼ばれる。
あくまで目安であり、設定されたコドポと強さがかみ合わない者も中に入る。
◯作中キーアイテム
・コドクの銃
コドクがカスミから託されたリボルバー。
カスミからコドクに託された時、カスミの異能が施された強力な弾丸が一発だけ装填されていた。
コドクは、この弾丸でコレクターにとどめを刺すことを誓っている。
・形見の弾丸
カスミが異能を施した弾丸。山脈を粉砕するほどの絶大な威力を誇っている。
後述するABBをはるかに凌駕する威力であり、どんな異能者でも直撃すれば絶命不可避である。
・ABB(Anti Bugs Bullet)=対異能者用強化弾
ABBと呼称される強力な銃弾。
カスミと同系統のエンチャント系異能者を解析して造られた弾丸で寄生蟲由来の強大なエネルギーを秘めている。
蟲毒都市の外界の技術であり、蟲毒都市の外に異能者が出た際や蟲毒都市の外で発生した異能者が蟲毒都市への移送を拒んだ際の鎮圧用に開発された。
外界から来た異能者が何発か蟲毒都市に持ち込み、コレクターによって技術解析された。
現在では、蟲毒都市内でも広く流通している。
核兵器すら効かない上位級の異能者の肉体をも貫通する威力を持っており、攻撃力に乏しい異能を持つ異能者の護身武器として人気がある。
一発当たりの値段は拳銃弾が25コドポ。散弾で100コドポ。ライフル弾で250コドポ。
◯主要キャラクター
弧宮独歩:作中呼称コドク(20)
主人公。男性。殺し屋。設定されたコドポは、9000万コドポ。
後天的な異能者で10歳の頃に蟲毒都市に隔離された。
白い髪が特徴。体格はやや細身ながら鍛え抜かれている。細マッチョ。
服装は上下黒のスーツと黒いネクタイ。トランスポーターのジェイソン・ステイサムに憧れてこの服装にしている。
蟲毒都市でも名の通った殺し屋で、多くの異能者から悪魔のように恐れられている存在。
実際には、おしゃべり好きの騒がしい性格で、自ら正体を明かしても世間のイメージと違いすぎて誰にも信じてもらえない。
人と一緒にいるのが好きな寂しがり屋だが、自分が足手まといとなって師匠のカズミが死んだ過去から、人と深く付き合わないようにしている。
メイと一緒にいるようになってからは、様々な話を振り、ちょっと引かれたりもする。
人を殺す時は無表情になり、一切躊躇しない。
可視化されたオーラを物体や四肢に付与する異能を持つ。
派手な見た目の異能だが、オーラに攻撃力向上などの特殊な効果はまったくない。単なる目くらましの効果しかもっていない。
身体強化と身体操作、特に質量操作を極めることで凄まじい攻撃力のオーラを纏う能力だと周囲に誤認させている。
無効化能力でオーラを無効化されても、山をも蹴り砕く生来の脚力で相手をしとめる。
これはコレクターの虚を突く戦略の一つ。
カスミの形見のリボルバーとクナイをけん制用の武器として使う。リボルバーはオーラを応用した煙幕弾として使う。
クナイも煙幕散布の道具として使用する他、腕にオーラを纏って用いることで相手の虚をつける。
またカスミがエンチャントを施した強力な弾丸を一発だけ持っている。これはカスミの仇のコレクターにとどめを刺すためのもの。
コドクは、コレクターとの戦いで自分の異能が目くらましの効果しかないことを気づかれることを見越しており、コレクターが蟲毒の異能は警戒すべき要素がないと油断したところでカスミの弾丸を撃ち込む作戦。
総合的な戦闘能力は、上位級の異能者だが、自己評価は極めて低く、自分は誰にとっても足手まといだと思い込んでいる。
蟲毒都市で生きる力のない弱い異能者の依頼を受けて討伐ポイントを稼ぐことを生業にしている。
始めた理由は生きるための金を稼ぐためと、カスミが自分を助けてくれたから同じようなことをしたいと思ったから。
だがカスミとは違って救世主ではなく、殺し屋として名をはせるばかりの現状が一層自己評価と自己肯定感を低くしている。
メイに命を盗まれて、依頼を強制的に受けることとなる。
だがそれはコドクの策略であり、警戒して姿を現さないコレクターを釣るために、彼がメイの命を狙っていることを知っていたコドクがあえてメイの策略に乗った。
全てはコレクターへの復讐のために。
「誰かと話すなんて久しぶりでワクワクしちゃうなぁ! あ、この店は俺のおごりだからじゃんじゃん頼んでくれていいよー!」
「うわーお! メイちゃんってば辛辣! お兄さんのハートブレーイクッ!」
「メイ。殺してもいい。殺さなくてもいい。どっちを選んでもいいから迷うな。迷いは躊躇を生む。戦闘中の躊躇は死を意味する。殺すなら迷わずに殺せ。殺さないなら相手を確実に無力化する方法を即座に考案し、実行するんだ。どっちもできないなら戦うことをやめたほうがいいよ」
「俺の命は返さなくていいよ。メイが死ぬんならそんなのはいらない」
「俺は師匠と違って弱い悪人だからさ。誰かと一緒にいたいなんて思っちゃいけないんだ。悪人として生きることは俺が選んだことなんだし」
「俺はもう一人に戻りたくないよ……誰かといることの楽しさを……嬉しさを思い出したんだ。だから頼むよメイ。俺を孤独(ひとり)にしないでよ」
神谷
ヒロイン。
死神と呼ばれて恐れられている高懸賞金の異能者。設定コドポは1億5000万コドポ。
焦げ茶のミディアムヘヤーの美少女。体型はスレンダー型だが、胸はそこそこある。
服装は、学校の制服。ブレザーっぽい感じ。
強い力を持ちながら平和志向の異能者たちによって自治されていた地区の出身。
外の世界と大して変わらない学生として生活していた。
半年前、メイの異能の噂を聞いたコレクターが現れて、地区は壊滅。
大切な人の犠牲によって逃げ延びたメイは、コレクターへの復讐を誓う。
ですます口調で話すため一見丁寧に見えるが、思ったことをすぐ口に出すタイプ。
ただし人を深く傷つけることは言わないし、心根は優しい。
なんだかんだと情に流されやすいタイプで、復讐者として強くあろうと振舞っているが、から回ることも少なくない。
暗い場所や幽霊が苦手な怖がりで寂しがり屋な面も持っており、コドクと一緒にいられる状況になんだかんだで安心感を抱いている。
安全な場所で育った影響で蟲毒都市についてよく理解していない部分があるため、設定説明の聞き役も担う。
また育った環境ゆえ、常識的な感性の持ち主で突っ込み役担当。やかましいコドクに様々な突っ込みを入れる。
命を盗む異能を持っているが、まだ人を殺したことはない。
人を殺すことは怖いと思っているが、復讐のために割り切ろうとしている。それでもいざとなるとあと一歩が踏み出せずにいる。
コドクを復讐の道具にしようと思ったのは、人の命を奪うことに生業にする冷酷な殺し屋であればコレクターを殺すことに躊躇しないと思ったから。
また殺しを生業にしている悪人なら使い潰しても心が痛まないからと考えてのことだった。
しかしコドクが想像していた冷酷な殺し屋とは真逆の性格をしていたので、戸惑いながらも情を抱いてしまう。
手で触れた生物の命を盗んで自分と共有する能力を持つ。
一度に共有できる命は一つだけ。共有を解除すると盗んだ相手に命が返却される。距離や場所は関係なく、どれだけ離れている相手でも返却可能。
この性質を利用してメイは、自分の命を狙う相手の命を盗んでやり過ごし、また別の敵が出てきたら前に盗んだ命を返却して、新しい敵の命を盗むを繰り返して生き延びてきた。
相手の命の一部を消費することで自分の負ったダメージを急速に治癒することができる。
命を共有している相手の怪我もメイがその気になれば治せる。
全ての命を使い果たすと命の本来の持ち主は死んでしまう。
メイも盗んだ命を使い果たした時点で、致命傷を負ったままだと新しい命を盗まないと死んでしまう。
一定範囲内の命の気配を感知することも可能で、敵の居場所を探るレーダーのような使い方もできる。
コドクの異能の煙幕との相性は抜群。
命を盗むのではなく、相手から完全に奪って自分のものにすることも可能だが、殺しをしたくないメイはこちらの使い方は基本的にしない。
自分が受けたダメージを命を共有している相手に押し付けることも可能。
身体操作と身体強化を生命力の強化と治癒力の向上に使っているので首が切断されても数分生きていられるが、戦闘はやや不得手。
拳銃を使って相手をけん制しつつ、生命力の強さを生かして接近して命を盗んで脅し、相手の戦意を挫く戦法を取る。
1億5000万の高額コドポは、コレクターがメイの情報を追うために工作して釣り上げた金額。
メイは多くの異能者から狙われることとなってしまう。
そのためメイ自身の戦闘力とコドポの額は釣り合っていない。
「殺し屋コドクがこんな人だったとは予想外です。ちなみに褒めてません。けなしてます」
「壊れたスピーカーよりもやかましい人ですね。私には大きな後悔が一つありましたが、二つに増えました。一つはコレクターから大切な人を守れなかったこと。もう一つはあなたを戦いのパートナーに選んだことです」
「私の異能は命を奪うんじゃありません。盗むんです。ここすっごく大事なところなので忘れないでください」
「ここ幽霊が出るって噂が……こ、怖くないです! で、でもコドクさんがどうしてもって言うなら手を繋いであげてもいいですよ?」
「こんな異能を持ってるのに、私怖いんです。誰かの命を奪うことが」
「コドクさん。あなたは冷酷非道な人だと思ってました。なのに騒がしくて人懐っこくて……優しくて楽しくて……どうしてあなたは……そんな人なんですか? これじゃあ私、あなたに何かあったら自分を許せなくなります」
「コドクさん……生きてください」
新島霞:作中呼称カスミ(23)
蟲毒都市に入れられた独歩が最初に出会った女性。設定コドポは9500万コドポ。
黒髪長髪の美人。フライトジャケットとデニムパンツを身に着けている。
心優しい性格で困っている人は放っておけない。
蟲毒都市に来ておびえるコドクと出会い、彼に蟲毒都市での生き方と異能の扱い方を伝授した。
物にエネルギーを込めるエンチャントの異能の持ち主でリボルバーを武器にしていた。
かなり名の通った異能者で命を狙われることも少なくなかった。
コドクは足手まといであったが、それでもカズミは一切コドクを足手まといだとは思うわず懸命に守り抜いた。
コレクターに異能を狙われ、襲われてしまう。
最終的にコドクを逃がすためとコレクターに自分の異能を奪われないため自爆した。
形見のリボルバーは独歩が持っている。生前エンチャントが施された弾丸が一発だけ装填されていた。
「君は子供だよ。弱くて当たり前。子供を守るのが大人の役目なんだ」
「師匠かぁ。いいね! その呼ばれ方!」
「独歩君。君の異能はしょぼくない。どんな異能でも絶対に有効的な使い方がある。一緒に見つけよ? あたしは君の師匠なんだからさ」
「独歩君には指一本触れさせないよ!」
「独歩君……生きて」
コレクター(80)
本作の黒幕。日本人の男。実年齢は老人だが、美少年の姿をしている。設定コドポはなし。コレクターを討伐した者の言い値で配布されるコドポが決まる。
非常に子供っぽい性格で自分の好奇心を満たすためならどんな犠牲もいとわない、
赤地製薬の研究者であったが、寄生蟲の性質と人類の進化の真実に気付く。
そこで人類がさらなる進化をする姿を見たい好奇心に憑りつかれ、意図的に怪獣の暴走事故を引き起こした。
自身も異能者となり、蟲毒都市で長年生き続けている。
蟲毒都市ではコレクターと呼ばれ、非常に恐れられている存在。
相手の細胞を取り込んで異能をコピーする異能を持つ。
一度に使える異能は一つだけ。他を使うにはわざわざ切り替えないといけない。
異能を取り込む時にも、一つの能力を取り込むのに数時間かかり、その間はほかの能力は取り込めない。
さらに一度に大量の細胞を取り込んでしまうと、身体の変化が抑えきれず異形の姿になってしまう。
多くの異能を取り込みすぎたせいで限界寸前になっており、いつ暴走してもおかしくない状態。
また全盛期に比べると肉体の変化が激しく起きているせいで弱体化しつつある。
そんな自分の状態すら好奇心の対象であり、ここから先自分がどうなるかを詳細に記録するため、スマホにメモしたり、ボイスレコーダー機能で自分の状態を記録している。
怪獣暴走と寄生蟲の真実を知っている人物のため、アメリカ政府と日本政府により何度も暗殺が計画されたがコレクターの驚異的な力の前に全て失敗している。
そのためコドポを討伐者の言い値で支払うことにしたが、誰も成功していない。
「だって興味があるじゃないか。寄生蟲が人類をどんな存在に進化させていくのか」
「科学者とは、好奇心を追求する仕事だ。倫理観を理由に、好奇心を押し殺すようでは務まらない。」
「人類の可能性は寄生蟲によって無限になった。僕はこの世界に新たなる秩序と福音をもたらした。だけど僕は自分を神だとは思わない。達観して人類の行く末を見守る存在になるつもりはない。僕は人だ。科学者だ。だから好奇心のままにこの世界を生きていく」
「多くの異能を用いて若さを保っているが、限界が近くてね。だからこそ君の命を奪う異能が欲しかった。もっとこの世界で僕は生きていたい。やりたい実験がまだ何万とあるんだ! まだまだ終わるわけにはいかないんだ!」
「そうか。僕の肉体の変化は、もはや止まらないか。素晴らしい! 寄生蟲の暴走で僕自身が怪獣になるとはこれは素晴らしい! 世界で初めて確認されたケースだ! 実に興味深い!」
時を止める異能者(23)
大柄でスキンヘッドの男。かけられているのは7000万コドポ。
コドクとメイが作中最初に戦う敵。
コレクターが異能を狙っていると噂されており、ずっと身を隠してきたがコドクとメイに見つかってしまう。
臆病な性格で廃墟を転々としながらコレクターの追跡から逃れていた。
時を止める異能とはブラフで実際には極限まで感覚と思考を鋭敏化して周囲の風景が止まって見えるだけの異能。
敵の行動を観察して対処法を練るので、攻撃を当てるのはかなり難しい。
だがコドクの身体能力に対応しきれずに殺される。
その際、命乞いをしてメイの心に傷を残す。
◯物語構成
・全4章構成 各章2万~2万5000文字 全8~10万文字
・1章
突如日本に怪獣が現れた。その姿を見つめる科学者の男(後のコレクター)が歓喜している。
怪獣は、自衛隊と在日米軍によって倒されたが、その直後から世界中で超人的な力を持つ異能者が確認されるようになった。
異能者が隔離されている蟲毒都市。そこで悪名高い殺し屋のコドクという男がいた。
コドクは、ネックレスに加工された一発の弾丸を見つめている。
コドクは、弾丸をしまってから殺しの依頼のターゲットであるメイという少女を殺す。
メイを殺したコドクは、血液と細胞のサンプルを採取するために近づく。
その瞬間、メイが息を吹き返してコドクの腕を掴む。身体中から力を抜かれる感覚を覚えるコドク。
コドクにメイを殺すように依頼したのは、メイ自身だった。
メイはコドクの命を盗み、最強の異能者コレクターの殺しを依頼する。
「異能無効化から瞬間移動までできる奴だよ? 本当にあいつと戦えって?」
「はい。戦わなければあなたが死にます」
メイが自分の手を傷つけるとコドクの手に傷ができる。
メイは、命令を聞かなければコドクを殺す。こちらを殺そうとしてもコドクが逆に死ぬと脅す。
コドクは、依頼を快諾。さらにはメイを食事に誘う。メイは、人懐っこくおしゃべりなコドクに驚く。
さらに2人は、どちらも映画好きで話が弾む。
コドクは手に入れたコドポを使って大量の映画を見ており、メイも父の影響で映画が好きであった。
コドクにコレクターを殺そうとする理由を問われると、コレクターに故郷が破壊されたことを告げる。
食事を終えてコレクターを殺しに向かおうと提案するメイだったが、コドクは抱えている依頼があるからそれを優先するという。
盗んだ命を人質に言うことを聞かせようとするメイだったが、コドクはメイの脅しを意にも介さない。
コドクは、殺しの対象の時を止めると噂される異能者をメイの異能の命の探知を用いて補足。仕事を開始する。
コドクは、時を止める異能の正体が感覚に高速化であることを即座に看破。優位に渡り合う。
「自分の異能を強力に見せるのは、蟲毒都市で効果的な処世術だけど正体が看破されたら脆いもんさ」
コドクの戦闘能力と分析力に驚くメイ。同時にコドクの異能の違和感に気付く。
オーラで攻撃力を増強する異能のはずなのに、煙幕のような使い方がメインだったことを疑問に思う。
メイは、戦いを援護するが、敵が命乞いをしてくる。
とどめを刺せるタイミングで、メイはとどめを刺さなかった。
隙を見て敵がメイに攻撃を仕掛ける。
メイをかばい、コドクは傷を負う。
コドクが敵の異能者を殺して血液サンプルを2本取る。
メイが慌ててコドクの治療をしようと服を脱がせると、首元にある弾丸が目に入った。
「銃弾」
「宝物なんだ。この銃と一緒に大事な人がくれたんだよ。君みたいにとっても優しい人だった」
コドクは、メイが人の命を盗んで脅せても人の命を奪うことはできない優しい少女だと見抜いていた。
ブラフを見抜かれたメイは、コドクが自分から離れてしまうと考えた。
命を人質にしても殺す覚悟がないのだから意味がない。
脅しとして成立していないのだ。
しかしコドクの反応は、メイの予想とは違っていた。
「まぁでも依頼は受けちゃったからね。最後まで付き合うよ。俺、義理堅い性格で通ってるから」
コドクの回答に、メイは驚きをあらわにした。
・2章
コドクは、サンプルを1本納品してコドポを得る。
残りの1本は、コレクターと戦う時に使うとメイに説明する。コドクは、他にも多くの異能者の血液サンプルを持っている。
コドクが多くの命を奪ってきた事実に、メイは複雑そうな顔をする。
「俺は蟲毒都市に名を轟かせる悪人だからね。メイちゃんも悪ーいお兄さんに利用されないように気をつけなよ~」
コレクターの根城とされる赤地製薬の本社ビルに向かうコドクとメイ。
その最短ルート上にメイの故郷があった。メイの故郷は、既に廃墟と化している。
何があったのか尋ねるコドクにメイは答えた。
メイはここで平和に暮らしていたが、コレクターの襲撃で家族も友達も皆殺しにされた。
メイは致命傷を負ったが、父親がコレクターを食い止め、母親が命をくれたので生きている。
「母がくれた命も私はとっくに使い切っています」
メイは何度も命を狙われてそのたびに、敵の命を盗んでやり過ごし、また別の敵に襲われたらその敵の命を盗むを繰り返してきた。
そうやってずっと命を繋いできた。
「私の命はもうとっくにありません。空っぽなんです。もしこの場でコドクさんに命を返却したら私は数分で死ぬでしょう。誰かの命にただ乗りしないと私は生きていけない寄生虫なんです。だからコドクさんはすごいと思います。たった一人で生きていて憧れます」
「俺だってたくさんの人を犠牲にしてるよ。多くの命を奪ったし、大切な人も……」
「大切な人? 例の銃と弾丸をくれた人です?」
「行こうか」
「珍しく口数が少ないですね。いつもそうだと鼓膜が休まってありがたいです」
「辛らつだねぇメイちゃんは」
コドクとメイの心の距離が少しずつ近づく。やがて二人は赤地製薬の本社ビルに辿り着いた。
赤地製薬本社ビルの前には、怪獣の遺体が腐敗することなく残されている。
怪獣はこの場所から出現し、この場所で自衛隊と在日米軍に討伐された。
赤地製薬本社ビルに入った二人。
そこにある資料を見てメイは怪獣の存在に疑問を持つ。
コドクは、怪獣と赤地製薬の関係性を説明する。
世界に真実に驚くメイ。
何でそんなに詳しいのか問うメイに、コドクは師匠であるカスミの存在を話す。
彼女は世界の真実にある程度気付いており、コドクに分かる範囲の事実を聞かせていた。コレクターが怪獣暴走の黒幕であることまでは知らない。
突然、空間転移能力を持つ昆虫人間と化した異能者が姿を現す。
コレクターが作った異能者であり、本社ビルを守る存在であった。
驚異的な力を持つ異能者に苦戦したコドクとメイは、コドクの異能の煙幕でいったん異能者の前から撤退した。
空間転移に対抗するため、メイの探知能力を使おうとするが、声で伝えるのでは遅すぎる。
そこでメイは、異能の応用である思考の共有を提案する。
「コドクさんと私で思考の共有をすれば……」
「え!? 俺の考えてることがメイにばれちゃうの!? きゃー恥ずかしい―!」
「この状況でどんなこと考えてるんですか!?」
「聞きたい? ……んもうエッチ! メイちゃんってば積極的! きゃー! コドクさんの妄想が駄々洩れになっちゃよー!」
「私で何を想像してるんですか。顔赤くしないでください。はたきますよ」
思考の共有をしたコドクは、メイと協力して苦戦しつつも異能者を倒す。
しかしコドクは異能者と相打ちになってしまい、気絶する。
・3章
コドクは、師匠であるカスミとの過去を夢に見る。
カスミがコレクターに殺されたこと。
銃と異能が込められた弾丸を託されたこと。
コレクターに復讐するため生きてきたこと。
コレクターの情報を追う内に、彼が死神と呼ばれる異能者であるメイを狙ってることを知ったこと。
死神の殺しの依頼が来た時、コドクは運命だと思った。
コレクターが誰かに殺しを依頼をするはずがない。獲物を奪われるリスクを冒すわけがない。
コレクターがメイを狙っているのに横取りを狙うやつもいない。コレクターを敵に回す異能者はいないから。
となればメイの殺しを依頼するのはメイ自身とコドクは、考えた。
メイは殺し屋の命を掌握して自分の手駒として使ってコレクターに対抗するつもりではないかと。
コドクは、メイが自分の命を盗んでコレクターの殺しを依頼するだろうと踏んでいた。
そしてコレクターに復讐するため、メイをおとりに使うと決めた。
コドクが目を覚ますと、そこにはメイがいた。製薬会社ということもあって医薬品が残されていたのでそれを使って治療をしてくれた。
メイは落ち込んだ顔をしている。思考の共有していたので、コドクの考えがメイにも伝わってしまったのだ。
「いいんです。私もあなたを利用しようとしたんですから……」
コドクは、何も言葉が出てこない。いつものように饒舌に語れない。
突然コレクターがコドクとメイの前に姿を現す。
コドク、殺意をむき出しにしてコレクターに襲い掛かるもコレクターは、空間転移で逃れる。
空間転移をしながら攻撃してくるコレクター。
メイも立ち向かうが、恐怖で竦んでしまう末にコドクを信用できないのか思考の共有もうまくできない。
コドクとメイは連携がうまく取れない。
終始優位に立ちまわるコレクターがメイを捕らえ、血を飲もうとする。
メイはコレクターに触れて命を盗もうとするが、コレクターの異能無効化の異能で無力化される。
コドクは、煙幕を使って身を隠しつつコレクターにこれまで集めてきた異能者のサンプルをまとめて打ち込む。
コレクターの身体は急激に変化していく。
しかしコレクターはコドクに攻撃。コドクは吹き飛ばされて赤地製薬の本社ビルから叩き出される。
メイがコドクの名前を叫ぶ。
・4章
気絶していたコドクが目を覚ます。
赤地製薬の本社ビルに向かうも、メイとコレクターの姿はどこにもなかった。
コドク、自分の詰めを甘さを痛感。結局自分は足手まといでメイを犠牲にしてしまったと後悔する。
打ちひしがれるコドクの掌が突然痛み出して血が流れ出す。
掌の血を見たコドクは立ち上がり、走り出した。
メイは、コレクターに連れ去られて廃墟と化した生まれ故郷に帰ってきていた。
コレクターはメイの故郷を壊滅させてそこを第2のアジトにしていた。
メイは、コレクターが来た時のことを思い出して怒りを燃やす。
コレクターは、身体の変化が著しく、まだメイの異能を吸収できる状態ではない。
コレクターは嬉々として異形と化していく自分の肉体の記録を取っている。
メイは、コレクターに気付かれないようにガラスを使って掌を切っていく。しかしメイの手に傷はできないし、血も流れない。
メイは、コレクターにどうしてそんなに楽しそうなのかと聞く。
コレクターは、自分が怪獣を意図的に暴走させたことを明かした。
人類が寄生蟲でどのように進化していくか見るのが楽しいと語る。
メイは、自分の異形化する肉体すらも好奇心の対象とするコレクターに恐怖する。
コレクターの肉体変化が収まる。その姿はもはや人間ではなく、怪獣の姿となっていた。
怪獣化したコレクターがメイの異能を吸収しようとする。
コドクがコレクターに蹴りを浴びせてコレクターを吹き飛ばす。
コレクターは、コドクが駆けつけたことを驚く。
コドクの掌にメイの故郷の場所が書いてある。メイがコドクに現在地を教えたのだ。
コドクとメイは、怪獣と化したコレクターとの最終決戦に挑む。
コレクターは、異能を無効化する異能を使ってメイの異能を無効化。コドクに命が強制的に返却される。
自分の命を既に失っているメイは、異能者由来の強靭な生命力をもってしても数分しか命を繋げられない。
コドクは、メイに近づき再び命を共有しようとするが、コレクターがこれを阻んでくる。
コドクはコレクターにキックで攻撃を仕掛ける。
コレクターは、コドクのオーラを無力化。コレクターは、カウンターを合わせに行く。
コレクターは、勝利を確信するも凄まじい威力の蹴りを頭部に浴びて大ダメージを受ける。
コドクの異能は、あくまで目くらましの効果しかない。凄まじい破壊力の蹴りは異能者由来の身体能力から来ている。
無効化の異能でコドクの身体強化を無効化しようとするコレクターだが、今度は異能の目くらましと銃弾のコンボでダメージを受ける。
「赤地製薬であんたがメイの異能を無効化した時、俺のオーラの煙幕を無力化しなかった。その結果大量の血液サンプルを打ち込まれてる。大失態だ。でも油断したんじゃない。あれは複数の異能を無効化できなかったんだろ?」
無効化の異能で消せる異能は同時に一つまでという制約があった。
3章の赤地製薬本社ビルでの戦闘は、コレクターがメイをさらうために抱きかかえていた。そのため常にメイの異能を無力化していないと命を盗まれてしまう。だからコドクの異能を無力化することができなかったのだ。
コドクは、蹴りとオーラと銃弾とクナイを駆使してコレクターにダメージを与えていく。
コレクターは、異能無効化からバリアに能力を切り替え。コドクの攻撃が防がれる。
コドクは、コレクターのバリアを突破できず、猛攻を受けてしまい満身創痍となる。
息も絶え絶えのコドクにとどめを刺そうとするコレクター。
そこへ最後の力を振り絞ったメイがコレクターに駆け寄ってくる。
メイがコレクターに触れようとすると、バリアに阻まれる。
コレクターをメイを殺そうと攻撃するとコドクは身を盾にして防ぐ。致命傷を負うコドク。
コドクは、最後の力を振り絞って弾丸を装填してコレクターに放つ。
コレクターは、バリアで防ぐも弾丸はすさまじい威力のオーラを纏ってバリアを貫通。怪獣化したコレクターの肉体にも大ダメージを与える。
それはカスミがコドクに残した形見の弾丸であった。
バリアが破れた瞬間、メイはコレクターの命を盗む。
命を盗まれても怪獣となったコレクターは即死せず、最後の力を振り絞ってメイから命を取り返そうとする。
メイに迫るコレクターに、コドクは渾身の蹴りを浴びせてとどめを刺した。
復讐を遂げたコドクは、その場に倒れ込む。自分の死を覚悟していた。
メイは、コレクターの命をコドクに与えて生きながらえさせようとする。
「俺みたいな悪人は死ななきゃ。それが映画のハッピーエンドってもんだよ」
「それは私の好きなハッピーエンドじゃないです。悪人が幸せに生きる映画があったっていいじゃないですか。だからコドクさん……生きてください」
メイは、コドクを生かして自分は死ぬつもりであった。
コドクはそれを拒絶する。
「俺はもう一人に戻りたくないよ……誰かといることの楽しさを……嬉しさを思い出したんだ。だから頼むよメイ。俺を孤独(ひとり)にしないでよ」
メイは、コドクとコレクターの命を共有することにした。
2人は、命を共有したパートナーとなって仕事をする。
ただしその方針は、少し変更となった。
「映画では生き残った悪人が改心するもんだからね。というわけで仕事の方針は、人の役に立つことするってことで」
「いいと思いますよ。それじゃあお仕事行きますか独歩さん」
かつてコドクと呼ばれた弧宮独歩は、相棒のメイと共に依頼を受ける。
かつてのメイの故郷のような平和な地区からの依頼だ。
独歩とメイは、そこを荒らしに来た凶悪な異能者に立ち向かう。
孤独だった蟲毒都市の殺し屋は、蟲毒都市で困っている人を助ける二人で一人の便利屋に生まれ変わったのであった。
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