第3話 黄
地上の洋菓子などという軟弱な食べ物を食べたら強くはなれない。
何処から仕入れた知識なのか甚だ疑問ではあるが。
宣言して以降、地上の洋菓子が禁止されてしまった。
が。
毎年一度。
十月三十一日。
唯一地上に訪れる事ができる日に目を奪うのは、町という町に埋め尽くされるかぼちゃの洋菓子。
プリン、タルト、クッキー、ゼリー、ロールケーキ、チーズケーキ、パウンドケーキ、パフェ、アイス、マフィン、スコーン、シフォン、ティラミス。
だめよだめだめ。
地上に来た目的を思い出しなさい。
かぼちゃの味を奪う悪霊を成敗する為でしょう。
決してかぼちゃの洋菓子食べ歩きに来たわけじゃないの。
認められた死神しか地上に行けないからって厳しい鍛錬を続けてきたのは何の為。
人々を守る為でしょ。
自分の欲を満たす為じゃないでしょ。
あのおじいさんが作ってくれたかぼちゃの煮つけ、超美味しいでしょほっぺた落っこちちゃったでしょ超満足でしょ超任務に励めるでしょ。
決して。
決してあのおじいさんちのかぼちゃで作った洋菓子は美味しそうだなって、いや美味しいに違いないって思っちゃダメ。
おじいさんに作ってくれないかなって思っちゃダメ。
だめよだめだめ。
一生懸命頑張っている娘の為にも。
我慢だ親父。
(2022.10.9)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます