二人の最強能力者は「混沌」と世界を描く
語部 歯車
プロローグ 幻想が壊れだした日
夜の静寂が森を覆う中で、一人の少年が森の中を駆けている。彼は、淡く赤色に輝く森の先へ向かって駆けていた。木々を避け必死に森の向こうへ向かう。
彼が、しばらく走ると森の木々の隙間から漏れる光の強くなり、彼は走る速度を上げる。森の木々は光が強さに反比例して数を減らしていった。彼は森を抜け、燃える街を目の当たりにした。少年は彼の瞳からは涙を流しながら街を見ながら立ち尽くした。しかし、彼は直ぐに我に帰り街の中を駆け出す。
街の中は人や構造物などが燃えた匂いが充満し、道には焼き焦げた人だったモノが転がっている。建物は今にも崩れてしまいそうな物が多く、誰かに破壊されたかの様にも見える。そんな燃え盛る街の中を彼は駆けていた。
家族は無事かもしれない、生きているかもしれないという、ありもしない妄想と、その考えを否定する絶望が入り混じった状態で自身の家へ向かう。
当然、こんな状態で生きているなんて
開いている玄関の扉からは家から逃げ出そうとしたかのような位置で黒く焦げた家族だった
当たり前だ。誰だって分かる簡単な事だったが、彼はただ考えないようにしていただけだったのだから。彼は膝から崩れ落ちる。地面は火災によって熱せられ火のよう熱く、彼の肉を焼く。しかし、彼は気にも留めていどころか気付いてすらいなかった。何故なら、彼は叩きつけられ現実によって正気を手放そうとしていた。
「アイィィィ!アアアァァァアアアアアァァァアァァアア!!」
どんなに叫んでも、呼ぼうとしても少年は言葉を紡ごうとしても少年の嘆きが言葉として紡がれなかった。彼の頭の中では、一人の少女と家族となった人たちとの思い出が駆け巡る。顔は涙でぐちゃぐちゃになり、地についた膝と手は熱に爛れ、彼の気管を少しずつ焼いていく激痛を襲うが今の彼はそれにすら気がついていない。
「ククク」
燃え盛る街の中においてそれは本来、鳴るはずのない音と声が発せられる。彼は無意識に音に反応し、その姿を見て失いかけた正気が戻る。いや、戻らざるを得なかった。炎が燃え盛る道を平然と歩くその男がいたからだ。その男の異様さは雰囲気という部分だけでは収まらない。男が進むのに邪魔な瓦礫は道を開けるかのように左右に勝手に分かれる。炎はその存在を敬うかのように恐怖するかのように炎は燃えるのを止める。男の通った後には火災によって燃えた跡だけが残っている。
彼は、身内から溢れ出る恐怖が身に降りかかり、もうすでに正気を手放す事すらできなくなっていた。男は服装が詳細に確認できる距離まで近づいていた。男は19世紀を思わせる様な服に杖を持ち黒い帽子をかぶっている。まさに、紳士の服装と言えば分かりやすいかもしれない。そんな男は彼の直ぐ近くまで近づき彼を見下ろす。男の瞳は何処までも黒く狂気と呼ぶにはおこがましい何かがうごめいていた。そして、彼の様子を楽しむかの様に口角は上がり笑いだす。
彼を写す男の瞳は、狂気濁っていた。彼はその瞳を見た途端に体の底から恐怖が湧き出す。体が、恐怖によって縛られ、指の先を動かす事すらかなわない。
「おっと。脅かし過ぎた様ですね。つい楽しくなると制御できないようで、いけませんね。今回も人間が狂う所を見られそうにありませんし新しくどの辺りに行きましょうか。10年ほどの準備して駄目でしたし、手法を変えなければなりませんね。この町の人間も、特に面白みも無かったですから」
男は心底、つまらなそうに言い放ち、彼への興味を無くし、先程歩いてきた道へと向き直り歩き始める。その様子と言葉に彼の恐怖心は消え失せ、恐怖が怒りへと変化すると同時時に自身への憤りにも変化する。
(今、俺は家族を殺された男に恐怖したのか? 友を殺された男に恐怖したのか? ふざけるな!! 唯一生き残った俺が今! この男だけには恐怖しては行けない! 何があってもこの男をもう、恐れない!! 殺す!!)
彼の持つ感情は堰を切った様に溢れ出す。その強い、怒り、殺意の感情に応えるかの様に彼の身体に変化が現れる。黒かった髪色は白銀色に変化し、瞳は深紅に染まる。彼の体を中心に突風がもとからそこにあったように発生し、回転をしていた。彼の細胞が、神経が、脳が、魂が別の存在へと変質していく過程がために強烈な痛みが伴い彼は絶叫する。男は、彼の変化に気付き、彼へ再び意識を向ける。
「があああぁああぁあああぁあああああぁああああぁ」
「?!。 能力へ覚醒ですか。しかも、あなたは、私と同じ宿命を持っているようですね。良いでしょう今日はあなたを生かしましょう。成長し私を殺したいなら殺しに来なさい。この『混沌』と名乗らされているこの私を殺しに『
男は腕を振るい彼の周囲の炎と家々を吹き飛ばす。男は携帯を懐から取り出すと何処かへ連絡をし、その場から消える。彼も男が消えると同時に混沌がいう能力への覚醒が終わったのか、風も止み彼は倒れ、気を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます