第24話 シスターローズ
扉を調べても外からしか開けることができず。よくあるゲームの転移陣なども存在しない。エリシャにお願いして壁の破壊を試みたが魔法や物理攻撃でどうにかできるような強度ではなかった。
はっきり言って詰んでいた。
最後の手段は礼の石棺である。敵の罠の確率が高く、できれば避けたいところであるが、他に脱出の手段がない。
このままいても飢え死にすることは目に見えている。
「あなた達、石棺を開けることにしたわ。何かいい方法はない?」
「魔法で壊す?」
「ちょっと物騒ね。他にはないかしら」
「……」
三人して首を傾げて悩み始めた。無い知恵絞っても妙案は浮かばない。
いろいろとまずいよね。
「キャッキャツ・キャ!」
「あ!」
私が振り向くと石棺を怪力ソフィーが開けたところだった。
「ちょっと! 何やってるのこっち来なさい」
石棺が開いて白煙が噴き出している。ソフィーは慌てて戻って来た。
いつかやると思っていたけどこんなところで……。
最悪よソフィー!
「まあ、皆様こんにちわ。わたくしたち待ちくたびれていたのよ。もう!」
「そうよね、石棺のなかで抱き合ってたの長かったしね」
白煙が晴れると見たくない二人組が現れた。
女装をした大男と中性的な地味服の小男。
何者よ!
「あなた達は敵対者なのね?」
男たちは目をパチクリしながらナヨナヨと話し出す。特に大男が気持ち悪い。
「あたしたちは
「メフューザスの両腕って、もう本人じゃない!」
ハモってクネクネするのやめてほしい。
「あら凄いわ! いいとこに気づいたわね。可愛がってあげなくっちゃ。ねー!」
「そう、ねー!」
ただのゲイボーイズで始終イチャイチャしている。そして社交ダンスのように絡みつき、果てにはアルゼンチンタンゴなのかと疑うぐらい密着して腰をくねらせる。
「溺愛よねー」
「そう、溺愛よねー。あたしたち!」
怪しいおネエ様は叫びながら抱き着く。もう見ていられない。
「ところで何しに来たのかしら?」
シスターローズは二人して私の顔を見て歪に笑った。
「もちろん、この石棺に入ってもらうのよ。永遠におやすみなさい!」
二人はハモってこちらに向かって来る。顔は真剣そのものだった。
いきなり、投斧を取り出して投げてくる。
「姫様、私が守ります。スキリアは攻撃!」
スキリアが小男の投げた斧をたたき落とし攻撃に向かう。エリシャは大男の斧をキャッチして、小男にむけて回転を加えながら投げつける。
シスターローズは魔法の武器合成で、斧を作っては投げてくる。
狙いは私だ。
エリシャは盾や石壁などを駆使して防御を固める。スキリアは大男にフェイントをかけては小男を付け回す。
油断していた大男はエリシャの礫を喰らって仰け反った。スキリアが小魚を呼び出して凍らせてしまう。小男は隙ありとばかりにスキリアに迫るが、エリシャが炎の壁を設置して妨害。
小男が回避した隙にエリシャとスキリアで凍結中の大男を焼き殺す。
「よくもやってくれたわね! 絶対許さない!!」
小男は私めがけて魔法を受けてもお構いなしに突進してくる。エリシャが大きな石盾を地面に突き刺して構えた。スキリアは剣をもって小男に体当たりする。
エリシャが私を突き飛ばして、石盾の形状がスパイク付きの盾に変わる。
私は後ろに転がって立ち上がった。
盾に貫かれた小男は残念そうに私を睨んで自爆する。楯のおかげで私は被害を免れることができたのだ。
双子は回避していたようで警戒しながら私のほうに駆けてきた。
我々はどうにかシスターローズを討ち取った。
それにしても、私の実力アップよりも敵のレベル上昇が早すぎる。
不安が加速的に増していく。
石棺を調べるとこの部屋の開放具が出てきて、古代霊廟から無事に脱出することができた。一安心である。
アクエリアン・ノーツの街に戻った私たちは、メフューザスが化けていたフレイアを探したのだが、誰も知らないということだ。変身魔法か何かを使えるので探すだけ無駄な気がしてきた。
とりあえず、ユリアのお土産を忘れるところだったので、家族分のプレゼントを考えて購入した。トリステの土産よりはましだけど、あまり感心できるものではなかった。
その後は特に何事もなく無事屋敷に帰ることができた。
浴室でエレナに嫌というほど磨かれ、旅の疲れを流した私は部屋に戻って寛いでいた。たぶん、そのうち私が帰宅したことを知った兄か妹が押しかけてくるパターンじゃないかと思う。
予想通りエレナが現れた。
{フランツ様とユリア様がお見えですが如何いたしましょう?}
「追い返してもてもそのうち押し入ってくるから通してちょうだい」
「はい、承知いたしました」
しばらくすると二人が連れ立って現れた。仲が好さそうでよかったよ。
私は早速土産を取り出した。
「お兄様、こちらが旅の土産になります。古代霊廟にあったとされる古文書のレプリカです」
私がフランツ兄さんに手渡すと泣いて喜んでいる。ユリアはそれを不思議そうに見ている。まあ、女の子は興味ないよね。
「カーラありがとう。嬉しくて首を吊ってしまいそうだ!」
「フランツ兄さん物騒なこと言わないでください!!」
「すぐに読みに行っていいかな」
「遠慮せず、お部屋で読んでください」
「ああ、カーラは闇夜の天使だ。愛してるよカーラ!」
返事を待たずにフランツ兄さんは引き揚げていった。次はユリアね。
「ユリアにはこれね、妖精珊瑚の置物よ。ベッドサイドに置いておくと美容に良いそうで、特にお肌がつやつやになるとか」
「お姉さま嬉しいです。もう抱きしめて眠りますね」
「抱きしめると壊れるわよ……」
「わたくし妖精だから大丈夫です!」
「自慢げに言われると困るわね。大事にしてね」
「はい」
その後、古代霊廟や旅のことを根掘り葉掘り質問攻めにあってしまう。
ユリアと話していると思いだすかもしれないと期待して会話するが、結局のところユリアのことを全く思いだせなかった。
私の記憶どうなってるのかしら。
∽∽ 後書きみたいなもの ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ∽ ∽ ∽ ∽
お読み頂きありがとうございます!
この物語は「楽しくお仕事 in 異世界」中編コンテストに向けて掲載しています。
その関係でストック分をすべて公開する暴挙に出ています。
中途半端なところで更新を一時停止することになり申し訳ありません。
ご理解のほどよろしくお願いいたします。
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