第11話 人脈って大切

 私は転がっていた木の棒で模様を恐る恐る突いてみた。突くとすぐに笛のような音が鳴り響く。

 うるさいよ!! 私は耳を押さえて考える。


 罠が発動、警報かな。

 キョロキョロと見回していると模様の丘の頂点に動きがある。


 そこは地下基地の格納庫、古典アニメのロボット出撃のように扉がスライドする。格納庫から埴輪のような巨大ロボ・ゴーレムが白煙を上げ湧き出るように現れた。


 模様の入った丘、それは埴輪から連想して古墳、前方後円墳だったのね。


 埴輪は砂を巻き上げながら地面をホバークラフトのように進んでくる。


 異様なのは足がないからで、ハンディ掃除機のように砂煙を後ろに残して爆進していた。デカブツは加速しながら距離を詰めてきて、近寄ってくるとその大きさに驚愕してしまう。


 無理、無理、戦いたくない。


「マオウノテキ! ミツケタ!!!」

「見つかってしまったわ!」

「姫様倒していい?」

「あなた達、大丈夫なのね?」

「姫様任せて!」

「よし、討伐よ!」


 エリシャが地面に手を当てる。


「ネズちゃん、ハリネズミ。みんなで仲良く通せんぼ!」


 地面が隆起して中心から崩れていく。3体の石でできた丸々と太った動物が現れ、召喚獣は身震いすると凶悪な針を逆立てる。


 石の特大ハリネズミは針を伸ばして肥大化していく。もはや針というより刺突兵器だ。埴輪はハリネズミのパイル群に激突して速度を落とし、左右からもパイルに貫かれてやがて停止する。


 スキリアが大きく空を飛びスピンしながら落下体制に入る。逆さ姿勢のままで埴輪の頭に手を当てた。空中浮遊してるよ?


 実際は埴輪が暴れているにもかかわらず、器用にも頭上で姿勢を維持している。


「氷のお花ね? スキリア!」


 エリシャが尋ねると姿勢を維持したままスキリアがウインク、すると埴輪の全身からツララが生えてきて氷花になった。


 埴輪は内圧に耐えられなくなり甲高い音をたてて弾けて散った。粉砕された石と氷はいつしか砂となり風に乗って消える。


 オーバーキルよね。

 それに対して私は何も役に立っていない。


 今回は上手く魔物を倒せたけどエリシャが言うにはこれでも雑魚クラスらしい。


 そんなエリシャのコメントに、モザイカは普通の高ランク討伐者でもパーティー単位でなければ対処できないと補足する。さらに、お節介にも二人が対処できない敵がこの先現れるため勇者の補充は急務と脅してくる。


 敵対者の影におびえる私、まだ死にたくない。


 とりあえず、魔物は大方退治できたので餌を用いて害獣駆除を問題なく片付けた。

 きっとモザイカのアドバイスがなかったら呼び寄せることはできなかったはずである。




 家に帰って剣を抜き素振りをしていると我が家の騎馬隊長のメトリックがじっと私を見ている。

 確か滅亡した帝国の師団長? 将軍? なんだか覚えてないけど剣の腕前は確かなはず。


 そうだ、相談してみましょう。


「身を守らないといけないのだけれど、軟弱者が自衛のため、生き残りをかけた剣ってあるの?」

「熱心に稽古しているのは生存戦略の一環ですか?」

「まだ死にたくないのに変な者たちに詰め寄られて自衛が必要なの」

「なぜ防具ではなく剣なのですか?」


 そういえば考えたことなかったわ。

 モザイカに勧められるまま選んだだけだった。


 どう答えましょう。


「えっと、攻撃は最大の防御、だったかしら? そんな感じ」

「それは基本ができてからでは? もはや古典というか今時通用しますか?」

「盾とか持つと動けなくなるから、剣で防御とか……」


 かなり苦しい言い訳。困ったわ、真剣に話してくれるから有難いのだけれど。

 私の知識が足りなさすぎる。


「なるほど、それでショートソードを選んだわけは?」

「私の体力に合わせてかしら。ロングソードまだ持てないし」


 モザイカの受け売りだ。


「賢明ですね。体力がついてから防御の型を教えましょう」

「ありがとう!」

「稽古が必要なら、組合で同年代の人と模擬戦するのもいいですよ。受付で相談するといい。それではまた」


 去り際の立ち姿に惚れ惚れとしてしまった。


 お父様は一見さえない印象だけど人脈は確かそうね。

 体力つけるのどうやればいいのかな。

 ボーっとしてないで聞けばよかったじゃない。


 私はいつも考えが足りない。




 それからも少し素振りして疲れたので休憩していた。そういえば、体力やスキルって見えないのかな。ゲームでよくあるやつ。


 なんだったか……あ、ステータスだ。


 こういうときはモザイカ、モザイカ!


「ねえ、モザイカ。私の基本情報、たとえばステータスやスキルは見えないの?」

『見えるはずですが、エラー表示になっていて。現在表示を消しています』

「優秀過ぎて、エラーなのね。私ったら!」

『申し訳ありませんが、低すぎるのが原因ではないのかと。上限はありませんので』

「またしても、残念な結果。ここは気を取り直して、スキルよ。スキルはどうかしら」

『残念ながらございません』


 なんとなくわかっていたが、クルートのなかでも最弱クラスのようだ。

 モザイカによると表示可能レベルになるとステータス表示等を解放してくれるらしい。



 そうとわかれば素振りの再開なのだ。

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