摩耶

摩耶と秋奈は朝早めに起床。そして旅路に着く。


「摩耶ちゃん、お姉ちゃんの近くにいてね。お姉ちゃんが魔物から摩耶ちゃんを守るから!」

「ありがとうございます。秋奈お姉ちゃん。では失礼します」


 摩耶は私の服の裾(すそ)を力強く握り歩く。


「秋奈お姉ちゃん、ここを左に曲がって少しすると山が見えます。その後は...」


 秋奈は摩耶をまじまじと見つめ少し間を置いてからもう一度口を開いた。


「ふと思ったんですが秋奈お姉ちゃんは、可愛くて且つ実力もありますよね」

「ありがとうね。でも生意気な子にはこうよ」


 裾を握っている摩耶を抱っこする。


「わぁ!びっくりした...秋奈お姉ちゃん急にどうしたのですか?」

「摩耶ちゃんごめん。何者かが、こっちに来る気配したから。けして摩耶ちゃんの臭いを嗅ぐ目的ではないんだからね。そこは勘違いしないでよ!」


 私は摩耶の臭い嗅ぎながら、気づかれないように歩いていくと、摩耶の言っていた通りの山が見えてきた。


「あれが零脈山(れいみゃくさん)です。以前お話しした零脈花は、零脈山の一番上にしか咲かない花なので取得が大変難しいんです」

 

 摩耶の説明を聞きながら、なんとか山の中心部くらいにたどり着く事はできた。


「零脈の花って貴重らしいけど、悪い人が奪おうすることはあるのかな?」

「珍しい品物なので市場では高値で取引されます。だから略奪行為やそれによる殺人事件などが多発しています」


 摩耶のその顔は、哀歓や憂虞(ゆうく)的感情、そした憤怒など、様々な感情を宿していた。そんな中で私達は零脈山の頂上にたどり着いた。


「到着。零脈の花を摘んだら、すぐに帰りましょ」

「ありがとうございました。これで、私達は救われました」


 零脈の花をいっぱい、摘み私は、摩耶の手を強く握り締め走っていく。


「しかし呆気なかったわね。本当に入手が困難な花なのかしら...」

「お姉ちゃんが凄いからこんなに容易く手に入ったんですよ!!」


 そんな他愛もない話をしていると急に秋奈が摩耶の手を取り走り出した。


「秋奈お姉ちゃん急に走り出して、どうしたのですか?」

「私達が花を摘んでいた所を何者かに見られた。今すぐここから離れないと!!」


 物凄い洞察視力である。


 摩耶が言った通りの事が起きた。恐らくずっと監視していた悪人達が、あとをつけてきて場所を特定したのだろう。そしてその悪人達は摩耶の目の前に現れ、摩耶達を追いかける。私達は摩耶のいた村へ、走って逃げることにした。

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