第50話 強くなる俺達の想い
俺と恋乃ちゃんの話は続く。
「わたし、他の男の人に興味を持とうと思っても持てなかったの」
「告白してくる男の人は結構いたんでしょう?」
「みんな断ったんだ」
「うん」
「でもイケメンもいたんじゃない?」
「いたとは思う。でも興味は持てなかった」
「性格が合いそうな人は?」
「それはいなかったと思う」
「少しだけなら付き合おうと思う人もいなかったの?」
「うん。いなかった」
「断る時はつらくなかった?」
「わたしへの想いを断るということだから、つらいところはあった。でも好きになれそうもない人と付き合うのは、お互い気分の良くないものだし、無理して付き合っても別れるだけだから。無理して付き合う方がその人に申し訳ないと思ったの」
「つらい思いをしていたんだね」
「うん。でもそれは仕方がないと思う」
誰とも付き合ってこなかったのは奇跡的だと思う。
恋乃ちゃんは少し恥ずかしがりながら、
「わたしが告白してきた人をすべて断ったのは、恋まではいっていなかったとしても、康夢ちゃんのことは、幼い頃から好きだったからだと思う。その気持ちが小学生の頃から恋する気持ちになっていればよかったのにね。そうすれば、康夢ちゃんも他の女の子を好きになって、失恋なんかしないですんだかもしれないのに、と思う。高校生になるまで恋する気持ちになんでなれなかったんだと思っている」
と言った。
「幼い頃から好きだったと言ってくれただけでもうれしい」
「康夢ちゃんはわたしのこと好きだったの?」
「俺も恋までは行っていなかったけど、恋乃ちゃんのことは好きだった」
「両想いだったのにね」
「両想いだったら、恋にまで進んでいたかもしれない。もう少し俺がしっかりしていれば、と思う」
「まあでもこうして恋人どうしになれたんだし。昔の分を取り戻すぐらいの勢いで康夢ちゃんと過ごしていきたい」
「俺もこれからは恋乃ちゃんとずっと一緒にいたい」
しばらくの間、俺達は唇を重ね合っていた。
やがて、唇を離すと、恋乃ちゃんは、
「わたし、他の女の子と比べても、そんなに魅力がある方だとは思っていないの。それなのになんで告白されるんだろうと思ってきたの」
と言った。
「そんなことはない。これだけ魅力的な女の子だもの。男の人は好きにって告白したくなると思う」
「わたし、魅力がある方なのかな。自分ではわからないけど」
「あるよ。俺がもう夢中になっているんだし。恋乃ちゃんはとても魅力的な女の子だよ」
「それはちょっと褒めすぎだと思う」
「そんなことはないよ。ただ魅力的だから、これからもいろいろな男の人が恋乃ちゃんのことを好きになってくると思う。その中には、俺よりも素敵な人がいるかもしれない。そうしたら、失恋することになってしまう」
「恋乃ちゃん……」
「俺、もう恋乃ちゃんとは二度と離れたくない。他の男の人に心を奪われてほしくない」
俺がそう言うと、恋乃ちゃんは、
「わたし、これからも康夢ちゃん以外の人を好きになることはない。好きなのは康夢ちゃんだけよ」
と言って微笑んだ。
「そう言ってくれるとうれしい」
「康夢ちゃんこそ、これから好きになる人が増えると思う。既に二人に想いを寄せられているんだから」
「いや、二人には断っているし、その二人以外に想いを寄せる人はいないと思うけど」
「康夢ちゃんは自分の魅力を理解していないと思う」
「そうかなあ」
「優しいし、頼りになるし、これほど素敵な人はいないと思う。うわさでは、告白しようと思っている女の子が数人いるという話よ」
「この俺が?」
「だから、わたしももっと努力して康夢ちゃん好みの女の子になりたいと思っている」
「恋乃ちゃんは今でも素敵だよ。その子たちの方へ心は向くことはない。俺の心は恋乃ちゃんで一杯だ」
「うれしい」
「俺もっともっと恋乃ちゃんのことが好きになる。二人がまたアプローチしてきても、他の子がアプローチしてきても、恋乃ちゃんのことだけが好きだ」
「康夢ちゃん、ありがとう」
恋乃ちゃんは、俺に唇を近づけると、
「康夢ちゃん、好き」
と甘い声で言いながら、俺の唇に重ね合わせた。
恋乃ちゃんも俺とキスをするのが楽しみになってきているようだ。
恋乃ちゃんが俺の唇から唇を離すと、
「わたし、もっと自分に自信を持てるようになりたい」
と言った。
「恋乃ちゃんは、優しくて、かわいくて、頼りがいのある、とても素敵な女の子だよ。俺が振られて苦しんでいた時に、癒してくれたし、もう恋乃ちゃんがいないと生きていけないくらいだよ」
「うれしい。そう思ってくれるなんて。わたし、康夢ちゃんの為になれるよう、もっともっと努力する」
「今でも充分だと思うけど」
「まだまだだと思っている。わたし、まず康夢ちゃんのことをもっと好きになっていきたいと思う」
「ありがとう。俺も恋乃ちゃん好みの男になれるように、もっと努力する」
俺がそう言うと、恋乃ちゃんは微笑んで、
「康夢ちゃんは今でも充分素敵。大好き」
と言いながら、俺にまた唇を近づける。
「恋乃ちゃん、好き」
俺と恋乃ちゃんは唇を重ね合わせた。
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