第22話
(めぐちゃんの可愛さ、声だけでご飯三杯軽く行ける。…祥太郎センパイ、本当に見る目ないよなあ…)
『雑木林』の入り口で、
バッグを自転車の前かごに戻し、かごに付いている防犯用のネットを念入りに掛け直してから、
さっきまで、先生やめぐちゃんと喋りながら、出来る限りのスピードで準備した「装備」の、最終確認を取る。
スニーカーの紐は、
絶対にほどけないように、改めて特殊な結び方で結び、
肩先から肩甲骨の合わせ目に掛かる長さの髪は、
家を出た時のポニーテールを一旦解いて、
頭部と頸部との境目、ちょうど盆の窪の上あたりで結い直してある。
その上から、出掛けに首に掛けて出て来た、青地に共濃の丁子唐草のマイ手拭いで、
ちょうど植木屋さんがするように、
額から頭部全体に掛けて包むように覆い、頭の後ろで結んでいる。
ゴルフクラブは、
師匠の言う「先まで全部金属の奴」を選り出す時間的余裕はとてもなさそうなので、
一番最初に抜き出したものに、
旧日本軍の軍刀の「刀緒」のように、
大判のハンカチを斜めに折り畳んだものを、
ハンカチの真ん中で、グリップ…握りの、ヘッドに続くシャフトとの接合部分に結び付け、
次にハンカチの端と端とを合わせて、
ほどけないようにひとつに結び、輪っかにしたものを、
左手の手首に掛け、グリップごと握る。
ゴルフクラブ以外の「得物」は、
みっつとも先程公園で、
作動するかどうかと、基本的な実際の使い方とを確認してあり、
ふたつは取り出しやすいように、
ウェアの左右のポケットに、それぞれ別々に入れてある。
もうひとつは、今、私の右の掌の中だ。
付属のストラップを右手首に掛けて、
いつでも使えるように握り込んでいる。
(それこそ「救難の聖女」、
剣と車輪とを携えた「乙女の守護聖人」…って言うよりは、
何だか、棒と手榴弾を手にしたテロリスト、
…せいぜいがゲリラ兵にしか見えないだろうけど…)
己の姿を省み、思わず苦笑した後、
左手のゴルフクラブを軽く振るって感触を確認してから、
私はロープの隙間から「雑木林」の中へと身体を滑り込ませた。
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