第20話

とりあえず、位置情報の共有をという訳で、お互いのGPS情報を交換した。



私の方は、

クラスの友達やら、サークル仲間やらとの待ち合わせなんかで、比較的お馴染みの機能だったけれど


師匠の方は

「こういうの、やったことねェンだよ…」

と、心細い声を上げる。



大丈夫かな?…と不安になったけれど、


「先生、貸してください。私がやります」という


居酒屋の大将の孫娘、めぐちゃんこと萌生姫の声がして、


救難の聖女の如く、

とっとと師匠の携帯を操作して、手続きを済ませてくれたようだった。



めぐちゃん、…梅津萌生孃は、何を隠そう、小学生の頃、「雑木林」で、例の「お祭り」の阿仁さん達に睨まれて、やむ無く退却した仲間の一人である。



思わず

「めぐちゃん、ありがとう。キミは天使だよ…!」

と誉め称えたところ、


「別にそんなお世辞は可いから、竹内先輩が無事に帰って来られるようにして。

ちーちゃんが一人で『雑木林』に入るって聞いた途端、

先輩、血相変えて、私に警察への電話連絡の係を押し付けた上に、

私のスクーターの鍵まで分捕って飛んでっちゃったんだから…」


と、非常に恨めしそうな口調で言われてしまったので、


私は

「あはは、ごめんねぇ…」

と、笑って誤魔化すしかなかった。



めぐちゃんの気持ちを私は知っている。



「それより、本当に気をつけてよ?

先輩も無茶苦茶なところあるけれど、ちーちゃんは先輩に輪を掛けて無茶苦茶。

ホントお似合いの二人…」


「だーいじょーぶだーいじょーぶ、この千歳さんに任しときなさいって」


「…ちーちゃんがそうやって根拠のない大見得切るの、

不安で一杯の時に決まってる…」


「……さーすが、小中高通しての我が相棒、湊南高校剣道部の敏腕マネージャー」


「だからそんな、いかにも見え透いた、ご機嫌取りのお世辞、いらない…。

お願い、…まずはちーちゃんが絶対無事で帰って来て…」


「大丈夫だよ…。萌生、愛しいキミを残して逝くものか!」


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