第4話
とにかく、その当時でも、真夏の日中のウォーキングなんてものは、真っ平御免…と言いたくなるようなシロモノだったから、
私がウォーキングに出るのは、日が沈んだ後、夕飯を終えた、おおよそ7時半から8時の間と決めていた。
その少し前くらいから、近所で、学校の部活や塾の帰りの女の子、それに、勤め帰りの若い女性を狙った痴漢が出る、という話が、ご近所の噂話にもなっていたし、回覧板でも回ってきた。
噂を耳にした大伯母が心配して、一緒について来てくれようとはするのだけれど、
大伯母は、夕御飯を頂くとすぐにこっくりこっくりし始めるし、
よしんば一緒に歩いたとしても、ウォーキングの歩幅も速度も、私とは全然違うし、
また大伯母と一緒に歩くとなると、
熱中症予防に、首周りに保冷剤を巻いたり、
水分補給のための、麦茶入りのマグボトルを、普段は使わないものを戸棚から出してきて余分に用意したりと、
まるで、話に聞く「大名屋敷の奥方の、火事場の備え」のような騒ぎになるので、
結局、大伯母が舟を漕いでいる隙に、手早く夕飯の後片付けを済ませ、こっそり支度をしてメモを残し、そっと鍵を掛けて出掛ける、というのが慣わしになっていた。
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