横川小探偵団の事件ノート

小原頼人

第一話 少年探偵団、最初の事件

プロローグ 僕は名探偵

「――そういうことか」

 少年はそう呟くと、立ち上がった。振り返り、集まった人々の顔を見回す。驚き、恐怖、緊張――あらゆる感情を浮かべた数々の眼が、少年を見返してくる。そんな彼らに向かって、彼は宣言する。

「皆さん。謎は解けました」

 ザワッとした反応が周囲に広がる。そんなバカな、殺人事件だぞと誰かが呟く。

 そう、これは殺人事件なのだ。ここは山奥にあるとある別荘。今日、ここで自身の誕生日パーティーを開いていたある会社の社長が殺されたのだ。それも、完璧な密室の中で。

 普通なら、警察に任せるべきなのだろう。しかし、今回に限ってその必要はない。なぜなら、ここには彼がいるからだ。先ほど「謎は解けた」と宣言した、一見どこにでもいそうな少年が。

 そう、僕は名探偵なんだ。そう少年は自分に言い聞かせながら、一同を見回す。その中の一人と正面から向き合ったとき、少年はつと人差し指をあげ、その人物を指さした。

「犯人は……」

 あなただ、そう少年が言おうとしたその瞬間。

 一瞬にして世界はひっくり返った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る