第6話 スライムから【スルメ】を手に入れた!
「キュイイイイイ!」
「お、オレが誰だか分かってんのか? このダンジョンのラスボスだぞ!」
ダンジョンから出ようと試みて、とりあえずダンジョンの入り口付近に転移したところ。なんとそこには、野生のモンスターがいた。
青く透き通ったぷにぷにとした体を持つこのモンスターは――
『スライムです』
「知ってる! いや見たのは初めてだけども! でも何となく分かるよ! そんなことよりどうしたらいいんだこれっ」
目の前にいるのは、1匹のスライム――ではなく。
なんと10匹も同時に現れたのだ。
しかもそのうち1匹はやたらと大きく、175㎝あるオレの身長の半分はある。
一応武器は持ってきたが、いざモンスターと遭遇すると、ちょっとした動きでとびかかってくるんじゃないかと怖くて動けない。
――くっ。こんなことなら【認識阻害ローブ】着てくるんだった。
「メカニー、こいつらいったいどうしたr」
メカニーの指示を仰ごうとしたそのとき。
10匹のスライムたちが、一斉に襲い掛かってきた。
――だ、駄目だ。間に合わない。
転生したばかりだというのに、また死ぬのだろうか?
しかもスライムに殺されて。
そう思ったが。
『スキル【料理】を発動しますか?』
「――はあっ!? ちょ、おま、今そんなこと言ってる場合じゃ」
いやでももう時間がない!
何もしないよりはもしかしたら時間が稼げるかもしれないし!
「ああもう! します! してください!」
やけくそになってそう叫んだ次の瞬間。
スライムたちは真っ白な光に包まれ、その場にポトポトと落ちた。
「――は? え?」
下を見ると、そこにはスライム――だったはずの、干からびて薄く小さくなった半透明の塊が10匹分散らばっている。
な、なんだこれ?
『スキル【料理】により、スライムから【スルメ】を生成しました』
「はあああああああああああああ!?」
相変わらず感情の欠片もない無機質な音声で、メカニーが淡々と説明する。
「す、スライムの干物……ってことはつまり、これは食料なのか? というかオレ今何もしてないんだが? これどうやって倒したんだ?」
『スライムは雑魚モンスターですので、ラスボスである蒼太様の魔力に当てられて勝手に死にました。それをスキル【料理】で干物に』
「そ、そんなことできるなら先に言え!!!!!」
まったくこっちは死ぬ覚悟までしたんだぞ!
まあでも、とりあえず生き残れてよかった……。
というか、そういやさっきこいつ【スルメ】って言ったよな?
「この世界では、スライムの干物をスルメって言うのか?」
『いえ。このスキル【鑑定】は蒼太様専用ですので、蒼太様に分かりやすいよう自動的に翻訳されます』
「お、おう。つまりオレに説明するのに一番適切なのが【スルメ】だったと」
『はい。試しにご試食されては?』
――こ、このさっきまで動いていたスライムをか?
いやでも、たしかに言われてみれば匂いはスルメだな。
さっきまで青かったのに今はスルメみたいな色してるし、触った感触もまんまスルメだ。
ここはもう転生前の世界とは違うわけだし。
そう文句ばかりも言っていられない――か。よし。
オレは思い切って、持ってきた【龍の短剣】で【スルメ】を薄く切り分け、端っこをかじってみた。
「…………うん。完全にスルメだな!」
『はい』
――あれ、でも待てよ?
さっきこいつ、「コンフードと呼ばれているもの以外は、貴族の贅沢品」って言ってたよな?
こんな雑魚モンスターからも簡単に食料が生成できるのに、なんであのまっずいコンフードしか手に入らないんだ?
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