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「つまり今の自分を変えたいって事か?」
酔ってるとはいえ、恥ずかしいことを口走ってしまった。でも今の俺の周りにはこんな話を出来るやつは居ない。だからそのまま話を続けた。
「そうなんだ、日々同じ事を惰性で繰り返すことが楽だと思っている自分が、たまに嫌になるんだ。別に今の生活に不満があるわけじゃないんだけど、このままずっとこんな生活をしていくのかと思うと……。あの頃胸に秘めていた熱い感情があれば何かが変わるような気がして……」
「マインド・コントロールが必要って事だな」
なんか急に怪しげな言葉が出てきた。
「さて、ここに……」
そう言うと田中は鞄の中から何かを取り出そうとした。運気の上がる壺でも出てくるのか?買わないぞ。
「壺?なんだよそれ?……ここに紐のついた五十円玉がある」
なんだ?いつもそんなものを持ち歩いてるのか?催眠術か?なんで五十円玉なんだ?
「五円玉より10倍効き目がありそうだろ、さあ今から振り子のように動かすから五十円玉を目で追えよ」
田中はぶら下がった五十円玉を左右に振り始めた。
「お前はだんだん高校生の頃に戻る、だんだんあの頃の情熱が戻ってくる」
そうだ、田中はイタズラ好きだったな。あの頃は一緒になってよく悪ふざけをしていたっけ。
少し愉快な気分になって悪ふざけにつき合うことにした。俺は五十円玉を目で追った。右に左に。酒を飲んでいるせいか、すぐに頭がフラフラとしてそのまま机に突っ伏して寝てしまった。
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