番外編
番外編:結婚記念日
「そろそろ二年だな」
朝日を浴びながら二人で紅茶を飲んでいると、ベン様は小さく呟く。
ベン様と一緒にいる時間はとても充実をしていて、あっという間に感じた。
「ベン様と結婚できて良かったです」
「そうか……」
迷いなく今の気持ちを伝えると、ベン様は照れ臭そうに頭を掻く。
結婚した当初から変わらない癖を見て、安心感で頬が緩む。
「アイラと結婚できて、俺も幸せだよ」
ベン様は幸せに満ちた表情で笑う。
仕事をしている時の凛々しい表情も素敵だけど、私だけに見せてくれる笑顔も好きだと感じた。
「長い時間が経っても、ちゃんと大切にしてください」
「あぁ。アイラのことを一生かけて幸せにするよ」
素敵な女性と沢山出会ったけど、ベン様はずっと一途に私を愛してくれている。
それが嬉しくてたまらなかった。
「日を追う事にアイラが好きになっていくよ」
「そうですか?」
「毎日アイラの新しい魅力が見つかって、充実している」
ベン様の気持ちがなんとなく私にも分かるような気がする。
一緒に生活していると、常にベン様の優しさに触れることができた。
「折角だから結婚記念で何か出来たら良いな」
「そうですね……」
私は顎に手を当てて、何が良いか考える。
「プレゼントでアイラに似合うものを探してくるよ」
公爵家に来た当初は空っぽだった引き出しに大量の物が詰まっていた。
出掛ける度にベン様は私に似合うと言って、色々なものを買ってくれる。
「プレゼントは十分過ぎるほど貰ってます……」
ドレスもアクセサリーも沢山あり過ぎて、毎回選ぶのに困ってしまう。
「それに、あんまり無駄使いしたら良く無いです」
「そうか……」
止めなければベン様は無尽蔵に買い物をする。
だけど、見るからに落ち込むベン様を見て、何か特別なことをしたい気持ちはあった。
「折角の記念日だから、何か一緒に出来たら良いですね」
「そうだな」
そんなことを考えていると、軽快な音を響かせて部屋がノックされる。
「失礼します」
出会った時から変わらずに綺麗な容姿を保つナターシャさんは私にとって憧れだった。
「ベン様とアイラ様にお届け物です」
「そうか。確認する」
腕にようやく収まる位の大きな荷物をベン様は受け取る。
「アイラと俺宛の手紙だ」
「読んでも良いですか?」
「もちろんさ」
私は丁寧に便箋を開けると、音楽団のメンバー達からの手紙が出てきた。
ちょうど結婚記念日をお祝いするような内容が書いてある。
いつまでも幸せでいてほしいというメッセージが嬉しくて、心の内からポカポカとしたものが溢れた。
「アイラはみんなから愛されているよ」
「ベン様だって、多くの人に尊敬されています!」
ベン様は時折満遍の笑みを見せながら手紙を読む。
大きな荷物は私とベン様に贈られたプレゼントらしい。
「プレゼント、すごくデカいですね」
「あぁ。二人で楽しんでくれと書いてあったが……」
ワクワクとした気分で何重にも梱包された紙袋を破いていく。
「ワインだ……」
「これ、かなり上質で有名な銘柄じゃないか」
ベン様の目はキラキラと輝いていた。
「あまりワインに詳しくないが、これは俺でも知っている位有名で良いものだ」
普段の冷静な様子と違って、興奮気味に説明するベン様は珍しい。
「私も飲んで良いですかね?」
「うーん……」
これまでに何度か試そうとした。
だけど、ベン様は子供にお酒を飲ませる様子を渋るように止められてしまう。
「私だって立派な大人です」
私は頬を膨らませて、子供じゃないと主張する。
「そこまで強い訳ではないし、一緒に楽しもうか」
ベン様は諦めたように息を吐くと、優しい笑みを浮かべた。
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