27.女子トークと宴会

 普段はベン様と二人での夕食が多い。

 だけど、今日はセリナ先生がいるから賑やかになる予感がした。


「セリナ先生! ベン様の小さい頃ってどんな人でした?」


 私は自分でも分かるくらいに目を輝かせて質問をする。


「今とあまり変わらず、仏頂面で面白みのない子供だったよ」

「小さい頃から冷静で知的だったんですね」

「アイラは本当にベンのことが好きなんだね」


 微笑ましいと呟くセリナ先生は私の横腹を指でつつく。

 好きと言われることがくすぐったく感じる。


「二人とも何を話しているんだ?」

「な、なんでもないですよ!?」


 いきなりベン様に質問をされて、慌てて反応してしまう。


「どうかしたのか?」

「なんでもないですから!」

「なら、良いが……」


 恥ずかしさで顔は真っ赤に染まっている。

 それでも、ベン様から追求されなくなって、少し安心感を覚えた。


「鈍感め」

「なぜ俺は悪口を言われなければならない」

「自分で察しな」


 セリナ先生は何故か唇を尖らせて、ベン様にキツく当たっている。

 

「アイラももっとグイグイ行かなきゃダメだぞ」


 セリナ先生は私の耳に顔を近づけると、いきなり変なことを言い出す。


「は、はしたないですよ!」

「良いのか? 他の令嬢にベンを取られても」


 見てくれだけは良いからなとセリナ先生は付け足した。


「ちゃんとベン様は優しいお方ですよ!」

「そう言われると、照れるな」


 私が大声で反論すると、ベン様に聞かれていた。

 恥ずかしさで顔が燃えるように熱を帯びる。


「あまりアイラを揶揄い過ぎるなよ」

「はいはい」


 そんな話をしていると、夕食が出来たと使用人さんから連絡が来た。


「ここの料理は美味しいから期待してるぞ!」

「あくまでもアイラのためのご馳走だからな」

「はいはい。これだから嫁にだけ甘いやつは……」


 セリナ先生はやれやれと言いながら、食堂へ早足で向かう。

 

「遠慮しないでほしいです」

「そうかい。主役が言うなら、遠慮なく食べさせてもらおう」

「はい!」


 そんなことを話しながら食堂の扉を開けると、いつもよりも豪勢な料理が並んでいた。


「すごい良い匂いがします!」

「アイラ様がいつも美味しいと言ってくださるので、張り切って作り過ぎましたね」

「ありがとうございます!」


 公爵邸で働くコックさんが笑顔を浮かべながら、恥ずかしそうに頭を掻く。


「それじゃあ、アイラの音楽団入団決定を祝して乾杯!」

「おお!」


 ベン様の掛け声と共にパーティーが始まる。

 セリナ先生がお酒を飲むと、途端に涙を浮かべた。


「本当にすぐに卒業したから寂しいよ」

「それはセリナ先生の教え方が上手だったからですよ」

「ありがどぉ。音楽団でアイラの演奏を楽しみにしてるよ」


 そう言って私の手をぎゅっと握る。

 私は音楽団での出会いを楽しみにしながら、豪華な夕食を楽しんだ。

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