学園探険(3)
正面入口から入ってすぐの場所に、保健部の部室はあった。
「異能部にとって、保健部はこれからよくお世話になる場所だからねぇ〜。せつなちゃん、ちゃんと場所、覚えておくんだよ〜」
入る直前、
「異能部一同、失礼するぞ」
奈子は言って、保健部の扉を開いた。
扉の先には、三人の少女が談笑しているところだった――その中には、くるるもいた。
「くるるちゃん!」
くるるを見つけたせつなは、思わず名前を呼んだ。
「せつなさん!」
くるるも顔が明るくなる。二人は駆け寄り、互いの手を合わせた。
「あら〜。さっき話してた、異能使いの一年生さんかしら?」
くるるからせつなの話を聞いていたのか、保健部のひとりであろう、サイドテールの少女がそう言った。
「もう! せっかく新入生ちゃんと友好を深めてたっていうのに〜」
「ごめんごめん。ソラビト退治のおかげで、ひとり、目を回してるやつがいてさ。めんどうみてほしくって」
「あー。そういえば、ソラビト警報出てたわねー。小型だって聞いてたから、つい油断して忘れてたわ」
「軽い貧血ね。鉄剤を飲んで休んでたらすぐによくなるわ。にしても、林檎って本当に燃費悪いわねぇ」
薬を飲みきった林檎を確認すると、白髪の少女はせつなに視線を向けた。
「……さて。あなたのところの先輩はもう大丈夫よ。くるるからあなたのことは聞いたけれど、改めて、あなたから自己紹介を聞こうかしら」
「一年、異能部所属、
せつなは一礼すると、
「じゃ、こっちもご挨拶を。わたしは三年、保健部部長、
と、
「二年、保健部副部長、
ねっとりと囁くように話す癒月の視線に、せつなは、背筋を指先で撫でられたような、ゾワリとした感覚を覚えた。
二人の紹介を経て、最後にくるるも、異能部へ向けて、自己紹介と挨拶をする。
「わたしは、一年、ほ……保健部所属、
初々しいくるるの挨拶に、奈子、亜仁、林檎は微笑みを浮かべていた。
「ああ。これからよろしく頼むよ。くるるさん。わたしたちは――」
「あー大丈夫よ。さっき、わたしから
奈子が自分たちのことを話そうとすると、輪香はそれを遮った。
「特に、林檎は要注意って話しておいたわ」
「わたしだって好きで倒れてるんじゃない!」
林檎は顔を赤くして反論した。
「――あの。わたし、さっき聞いていた会話でひとつ気になったことがあったんですけど……」
上級生に囲まれる中、せつなは右手を小さく上げて、そう切り出した。
「どうした? せつな」
奈子の返事を受け、せつなは話し出す。
「奈子お……奈子部長と輪香先輩の会話で、『ソラビト警報』という
せつなの質問のあと、くるるも、「……それ、わたしも気になりました。そもそも、今日は警報らしいものも聞いていないような……?」と、言った。
上級生一同は顔を合わせ、それから癒月が口を開いた。
「そういえば、ソラビト警報が出たのは昨日のことだものねぇ。二人が知らないのは当然よね。……ソラビト警報っていうのは、ソラビトの出現を察知すると、校内に流れる警報のことよ〜」
癒月に続いて、亜仁も答える。
「『ソラビト対策兼司令部』がねぇ、ソラビトがどこに現れるか、予測しているんだよ〜」
「そ、ソラビトって、出現予測ができるんですね……!」
くるるは関心を示すと、輪香はこう答える。
「そうよ。ソラビトが出現する場所はね、なんか特別な信号? とやらが出るみたいで……ま、詳しくはあっちに聞いたほうがいいわね。」
せつなとくるるは「へぇ〜」と、口を揃えて頷いていた。
「そうだ。さっき話した学園案内のことだけど、まずはその
奈子の誘いに、くるるは興味を示すが、保健部のことを気にかけたのだろう、輪香と癒月に視線を送る。
二人はもちろん、
「いっておいで」
「いってらっしゃい。楽しんでね〜♡」
と、快く送り出してくれた。
くるるは笑顔を浮かべ、奈子に「わたし、行きます!」と、答えた。
奈子は亜仁と林檎を保健部に残し、新しい後輩二人を連れ、保健部をあとにした。
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