【完結済】異能部へようこそっ!
みおゆ
第1話・ようこそ、異能部へ!
ようこそ、異能部へ!(1)
「いってきまーす!」
潮風を背に受けながら、この春中学生となる少女――
目に涙を浮かべ手を振り返す両親は、徐々に小さくなっていき、いよいよその表情も読み取れないほど遠のいたころ、せつなは船の進む方角を向いた。
せつなは、今日から新しく通うことになる学園へ向かっているところだった。学園の名は、『国立・
国家からの指名がなければ入学することのできない特別な学園で、入学資格を得た時点で、その将来は一生を確約されたものと同義であり、同時に、国の平和を維持する責任を負うという、使命を与えられるのだ。
彼女らにとってそれは大変誇るべきことであり、名誉であった。
国家から指名を受ける条件はただひとつ――国家が認める高度な技術や技能、頭脳など、他者より秀でた才能の持ち主であること。
せつな自身も、国家からある才能を認められ、この学園に入学する運びとなった。
その才能とは――否、正確にいうと
「……あ! 島が見えてきた!」
すでに数百メートル先には、目的の学園のある島があった。せつなは、「……よし」と、呟き、リュックのベルトを握りしめ、島を真っ直ぐと見据えると、腰を低く落とす。
「――ひとあし先に、レッツ、ゴー!」
刹那、船の上からせつなの姿は消えた。一体少女はどこへ消えてしまったのか――。
「……おととっ。ギリギリだった。距離感取るのって、まだちょっと慣れないかも」
船の上から消えたせつなは、次の瞬間、すでに島の浜辺――より細かくいうならば、ギリギリ海水に触れない程度の、波打ち際に立っていた。
船の上から消えた少女は、瞬きをしている間に、すでに砂浜の上へと移動していたのだ。
――そう。せつなの持つ異能は、『瞬間移動』だった。
十二歳になる前日に、この異能は現れた。
当時、せつなは自室にいたのだが、「夜ご飯の支度ができたから、リビングへ来なさい」と母に言われ、歩いていくのがめんどうだと感じた。そんな些細な瞬間に異能は開花し、せつなはリビングのソファに腰かけていたのだ――ついさっきまで、自室のベッドに寝転がっていたはずなのに。
その後しばらくして、国家より学園の入学推薦状が自宅へと届いた。両親は大喜びし、せつなを学園に入学させることを決めた。
せつな自身、両親の離れることを少し寂しく思ったが、何よりも、そんな自分が誇らしいと感じたのだった。
ようやく、楽しみにしていた学園の第一歩を踏みしめたせつな。
せつなは島を見上げ、なんとも言えない高揚感に包まれていた。
自然に溢れた、だけれども、文明をしっかりと残した施設が建設されているこの場は、ひとつの街のようだった。
せつなは、山の上にそびえ立つ学園を見上げ、目を輝かせて頬を紅潮させる。
「……わたし、この学園でたくさんいい成績を残して、お父さんとお母さんを驚かせるんだ」
意気込みを口にし、改めて身を引き締めたせつなは、学園へ向かって歩き出した。
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