第019話 旧校舎に巣食うモノ
俺は目の前にある尻を追って先を進んでいく。しかし、これでは肝心な戦闘で役に立てない。そこで以前同様に目を瞑る。
これなら声を掛けられなけば、中身がはみ出たゾンビ同士の絡みを想像しながら進めば徐々に沈静化できるはずだ。
彼女の気配を追って先に進んでいく。
進行方向から何やら別の黒いモヤモヤとした気配が近づいて来るのが分かった。
「むっ」
來羽もそれに気づいたらしく足を止め、扉の開いている部屋に身を隠す。今度はそのプリッとしたお尻に顔を突っ込まないように俺も立ち止まり、その後を追って身を隠した。
俺と來羽は扉の反対側に対面で相対している。
「なんで目を瞑ってるの?」
「いや、訓練だ」
「そう。でもダメ。今は仕事中。ちゃんと目を開ける」
「あ、はい」
そうすれば必然的に俺が目を閉じているのが分かる。そのせいで來羽に怒られてしまった。確かに彼女の言うことは最もなので目を開く。
一メートル先には元々ピッチリしているスーツがかがむことでより生地が伸びてムッチムチに見える太ももと、鼠蹊部の食い込みが視界に飛び込んでいた。
「うっ」
その瞬間、折角血が散っていき始めていたのにも関わらず、一瞬で一か所に血が戻ってきてしまった。
本当になんでそんな恰好をしているんだよ。
そう思わざるをおえない。
「それでいい」
俺が目を開いたのを見て無表情のまま満足そうな雰囲気を漂わせる來羽。
くっ。まさか目を閉じていることを封じられてしまうとは!?
これは大ピンチだ。視覚から入ってくる彼女のエッチなを封じることができないとは……。
これではこの先さらに厳しい状況に追い込まれて行きそうだ。いや、すでに追い込まれている。
今のままでは俺は動くことができない。
「私が行く」
「了解」
俺の絶望を感じ取ったのか、來羽は近づいてくる気配に対して自分が攻撃を仕掛ける合図をしたので、然も問題ないという態度で返事を返した。
股間は來羽から見えないように立てている膝で隠していたのでバレていないはずだ。
彼女は今度は身振りでサインを出し、視界に悪霊が入った途端、外にはじかれたように飛び出して腰の短刀を振りぬいた。
「オオオオオ……」
その悪霊は一瞬で浄化された。
どうやらあの短刀には聖属性か何かの属性が付与されているらしい。
「お疲れ様」
「奥に行く」
「了解」
俺は教室の入り口の中から下半身が見えないように顔を出しつつ來羽を労った。彼女は頷いて先を促す。
俺も頷き返し、來羽が進み始めたのを確認してからその尻をまた追った。
それから幾度かの戦闘を経て、一番奥の部屋の大分古めかしい昭和の気配を感じさせる引き戸の前までたどり着いた。
勿論その全てを來羽が対処した。
かがんだ状態から起き上がれない俺は完全に役立たずで、彼女についていくので精いっぱいだ。
「この先にいる」
「そうみたいだな」
その扉の先に気配がハッキリと感じられる。
今回の依頼のターゲットはそこにいるとみて間違いない。
「入る」
來羽が先行してその扉を開けて中に入る。
中は元々は多目的室だったようで、ただ広いだけで一見何もなさそうだが、確実にそこには邪悪な気配が漂っている。
姿を隠しているらしく、その詳しい場所までは分からない。
「どうするつもりだ?」
「こうする」
彼女は俺の質問に行動で返す。
何やら忍者漫画のような印を素早く結んだ後で手を床にたたきつけた。
その途端、何やら古語の文字列のようなものが地面を這いずり回り、一定の範囲に広がった後で輝きを放つ。
その光が部屋中に広がると、毒々しい色の粒子が部屋全体から一か所に集まってその姿を形成していき、その姿を俺たちの前に現した。
その姿形は半透明のイソギンチャクのようでいくつもの触手を持っている存在だった。
その触手はどちらかといえば凧のようにぬめぬめしていて、てかてかと艶めかしく光っている。
「ク゛ォ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛……」
そいつはどこから出しているのか分からない地鳴りのような声を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます