第010話 無知無自覚無頓着無表情スレンダー美少女の猛威
「忍野さん、前はなんて学校にいたんですか?」
「姫乃森学園」
「えぇ~!! 超有名校じゃないですか!!」
「なんでこの学校に」
「保護者の都合」
「どうして先生に指示された席じゃなくてこの席に」
「なんとなく」
ホームルームが終わった後、俺の近隣が俄かに騒がしい。
なぜならクラスの女子連中が彼女を取り囲んではしゃいでいるからだ。いつも俺と一緒にだべっていたが、勝は騒ぎに関わりたくないからか、今日は大人しく席に座っている。
來羽は周りから投げかけられる質問に全く表情を変えることなく、ただ淡々と返している。教室の外には野次馬が覗きに来ていた。
來羽の表情からは質問攻めに対してどう思っているのか読み取ることはできないので、俺は口も出さずに見守っている。
―キーンコーンカーンコーン
そして、そのまま何もできずにその時間も終わりを告げた。
「あ、またね忍野さん」
「うん」
チャイムと共に女子連中が自分の席に散っていった。
「大丈夫か?」
「問題ない」
「そうか」
俺は念のため小声で確認するが、特に表情も変える事もなく首を振る。
―ガラガラガラガラッ
そうこうしている内に先生が入ってきて一限目の授業が始まった。
「ど、どうしたんだ?」
「教科書持ってない」
しかし、來羽は全く授業の準備もすることなく、ピンとした姿勢で真っすぐに前を向いていた。
その様子を訝し気に思って尋ねたら、教科書を持っていないという。
それくらい言ってくれればいいのに……。
「先生、忍野さんが教科書ないみたいなんですが、見せてもいいでしょうか?」
「お、そうか。そうしてあげなさい」
「分かりました」
一応先生に許可を取り、彼女と席をくっつけて間に教科書を置く。
「ありがとう」
「いやいや、気にするな。同じ仕事仲間だしな。何かあったら言ってくれ」
「分かった」
彼女は無表情のまま俺の方を向いて礼を言う。俺は肩を竦めて返事を返したら、彼女はコクリと頷いた。
―ピトッ
ただ、そのあと俺は予想外の展開に直面する。それは忍野の距離の近さ。
肩と肩が触れ、いや彼女の頭が完全にコテリと肩に乗っている。彼女の感触が伝わってきて全身に寒気が走ったようにブルりと体を震わせてしまう。
俺の一部がムクムクと急成長を始めた。
この子は一体何をやってるんだぁ!?
俺は思わず内心で叫んだ。
「お、おい……」
「ん? 何?」
「い、いや何でもない……」
近すぎると注意しようと視線だけ來羽の方を向けるが、肩に乗った頭を動かして至近距離で純粋な瞳で上目遣いされると、俺は何も言えなくなってしまった。
しかし、指摘しないということは彼女の体の感触や、漂ってくる香りがずっと感じ続けるということ。
成長を始めたマイサンはいつの間にか立派な大人になってしまった。
「コホンッ!! 本野!! 次の部分を読むように!!」
「は、はい!! いったぁ!!」
どうやら來羽が俺にしなだれかかっているのを見ていた先生が俺に古典の文章を読むように指名する。
俺は咄嗟に立ち上がったが、硬く大きく育った第三の足が机に激突して、俺は思わず股間を押さえた。
痛みで急速に凝りがほぐれていく。
「だ、大丈夫か?」
「問題ありません……」
俺は前かがみになったまま答えを述べる。
「ふむ。その通りだ。座ってよろしい」
先生の話は聞いていたので問題なく読むことができ、事なきを得た。
「大丈夫?」
席に腰を下ろしたら隣から無表情なのはいつも通りだが、全身から心配そうな雰囲気を醸し出しながら來羽が俺の顔を覗き込む。
そのせいで半分くらい沈静化しつつあった体の一部が再び激化した。
「あ、ああ……大丈夫だ。気にしないでくれ」
俺は体を起こしてアワアワしながら小声で返事をした。
まさか起たせてぶつけましたとは言えないならな……。
「腫れてる……」
しかし、俺はすっかり忘れていた。今俺の体の局所が凝り固まっているのを。体を起こせば当然その部分が目に入る。
彼女はその部分をそのほっそりとした手で撫でた。
―ビクビクビクンッ
俺はあまりの衝撃で体をガタガタと痙攣させることになった。
ズボンの中で生暖かい感触が広がる。
「ピュリフィケイション」
俺はすぐに自分に浄化の魔法を掛ける羽目になった。この時ほど浄化魔法を覚えていて良かったと思ったことはない。
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