3章 部活動

3-1

ゴールデンウィークも終わり、放課後俺は推理同好会の部室に向かう。

これが初参加になるとかマジかよ。

自由参加とはいえ、流石に1ヶ月も行かないとか正気か?

まぁ、行ってないやつが言うセリフではないことは確実だな。

行ってないやつ・・・・・・俺と紅梨さんだな。

あと、雰囲気から紗弥さんも入りそうだな。

あの紗弥さんが紅梨さんから離れるなんて考えられないからな。

扉を開けて中に入ると、水無瀬が居た。


「あ、いらっしゃい。今日が初めてだよね?」

「あぁ」

「部員は私と五十嵐先輩、安城さんと西条寺さんと島田くんだよ」


あ、やっぱり入ってるんだ。

予想通りってやつね。


「で、その安城さんは?」

「今日来るはず・・・・・・」


言い終わらないうちに扉が開き、紅梨さんが入ってくる。

その隣には今日転校してきたばかりの紗弥さん。

しばらくすると、男の人が入ってくる。


「おうおう、フルマンバーか。俺が部長の五十嵐達也」


五十嵐先輩は椅子に座る。

自己紹介をして、活動内容を改めて聞く。


「基本、何やるも自由」

「マジですか?」

「おう」


水無瀬の提案で推理同好会のやるようなこと(推理)をすることになった。

過去の事件記録から、推理するようになった。

紅梨さんが石川さん・・・・・・って言っても本人と連絡を取り、安城さんが手帳にメモをする。

どうやって返信しているんだろう。

俺はそんなことを考えて、紅梨さんがホワイトボードに書いた図を見る。

部屋の中で殺人事件で、詳細も書いてある。

難しい。俺はお手上げ。

紗弥さんもお手上げしている。

五十嵐先輩がお茶を取ってくる。


「難しそうだね〜」

「他人事ですね」

「そうじゃん」


水無瀬が首を捻る。

石川さんからWPTで答えが送られてくる。

そんな感じで第一回部活動が終わる。

本当に暇だね。この部活。

仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。

紅梨さんと紗弥さんと別れて家に向かう。


「珍しく部活行ってきたんだね」


家に帰ると陽菜が俺を横目で見る。

陽菜、なんか怒っているような・・・・・・。

俺、怒るようなことなんてしてないぞ。


「俺、なんかした?」

「朝、私なんて言った?」

「夕方、一緒に図書館・・・・・・あ」

「謝罪は?」


陽菜の右目の青の目を光らせる。

怖えぇよ。


「ごめん」

「よろしい。代わりに今日の夜、遊んでくれますよね」


180度回転した陽菜は今度は左目の黄緑の目を光らせる。

なんで回転した・・・・・・。


「わかったよ」

「やったーー」


陽菜は走って台所の方に行った。



食事が終わると、陽菜は俺の部屋に押しかけた。

俺、まだ宿題も終わってないし、風呂も入ってないんだが・・・・・・。

まだ陽菜が無邪気で良かった。

反抗期入ったら絶対にめんどくさいやつ。

そんな予感がする。

陽菜が部屋に帰ると、まず風呂に入る。

その後、宿題を片付ける。

WPTを開くと、ふと思い付いた。


島田裕志:≪紅梨さん、今良い?≫

澤井紅梨:≪全然OKです≫

島田裕志:≪どうやってみんなが居るところで返信しているの?≫

澤井紅梨:≪それは安城の方の携帯に石川から送られてくる、

     ということでしょうか≫

島田裕志:≪そうそう≫

澤井紅梨:≪それはポケットで操作してる≫

島田裕志:≪え、マジで?≫

澤井紅梨:≪配置覚えれば出来ますよ≫


いやいやいや、無理でしょ。

ピアノなら目をつぶって弾けるけどさ。

それと同じノリなのか・・・・・・?

流石に違うだろ。

布団に潜ると、少し考えながら寝た。



朝から雨だった。

ザーザーというよりもドザーと言う擬音語のほうが合致するだろう。

朝から大雨特別警報が発令されていた。

学校から来れる人のみ来ると連絡が来たので、俺は行かないことにした。

普通そうでしょ。

例え学校行けるとしても、こんな連絡きたら行くわけない。


島田裕志:≪紅梨さん、今日は学校行くの?≫

澤井紅梨:≪家の周りが浸水しているので無理ですね≫


ほら、この優等生でさえ行かないと言っている。

紅梨さんが優等生なのが前提話になってるな・・・・・・。

意外とあの子・・・・・・・・・・・・。

いや、これ以上評価は崩さないでおこう。


島田裕志:≪よかったらウチくる?≫

澤井紅梨:≪いいんですか?≫

島田裕志:≪両親は出勤したし陽菜は寝てるから≫

澤井紅梨:≪姉を連れていきます≫

島田裕志:≪OK≫


これじゃぁどっちが姉かわからないよ。

紅梨さんが姉か、靜枝さんが姉か。

というか、家の周りが浸水してるなら俺の家に来るのも無理だろ。


「おはよ〜」

「陽菜、今日学校は・・・・・・」

「休みだよ。さっき連絡来たもん」


朝からため口するな。

昨日のことは謝るって。


「そんな陽菜に朗報。安城さん、来るって」

「え、本当!?陽菜、嬉しい〜」


陽菜は喜びながら走って台所に入って行った。

さっきの態度は何だったんだ?

寝起きだからと信じよう。

しばらくすると、インターホンがなる。

紅梨さんと靜枝さん、紗弥さんが来た。


「いらっしゃい、安城さん」

「お邪魔します。陽菜ちゃんも久しぶりですね」

「2日前に会ったけどね」


陽菜が正論を言ってしまう。

あれだけは言ってはいけないだろう。


「と、とりあえず安城さん、上がって上がって」

「お邪魔いたします」


靜枝さんと紅梨さんが家に上がってくると、陽菜がお茶を持って来る。

紗弥さんはベランダの方へ行った。

靜枝さんが道具を出して漫画を書き始める。

生の作家がこの場で漫画を描くなんて機会、おそらく最初で最後だろう。

紅梨さんが紗弥さんが居るベランダに出て外を見る。

雨で景色は見えない。

雷がなっているから陽菜が窓から1番遠い位置で縮こまっている。

かわいい面もある陽菜に対して紅梨さんが雷を今か今かと待っている。

紅梨さんの弱点、そんなにないんじゃない?

まぁ、紅梨さんならあり得る。

誰でもない紅梨さんだし。


カラガラドカン


雷が落ちた。

陽菜はビクッと震えて縮まる。


「紅梨さん、何か見える?」

「いえ、何も。ちょっと考えてました」

「何を?」

「島田くん、探偵向いてますよ。冗談抜きで」

「え、そうか?」

「観察力が抜群です」


そうかな・・・・・・。

紅梨さんが家に戻る。

席に座って紅茶を飲む。


「少し、泳がせておきますか」

「何の話?」

「いえ、こちらの話です」


探偵として話せないこともありそうだな。

その時、玄関のドアをノックをする音がした。

ドアを開けると、水無瀬が立っていた。


「どうした?ていうかどうやってここに入ってきた?」

「いや、暇だからね。わたくしが入る時に別の人が出てきたからね」


暇って・・・・・・。

外に出るなっていう意味で大雨特別警報が出ているんですが・・・・・・。

まぁいいか。

俺は水無瀬に緑茶を渡す。


「思ったとおり、みんな居たね」

「幸雄さんは?」

「家で雷怖いって留守番してる。残る方が怖いと思うんだけど」

「確かに」


俺がWPTを見ると、幸雄さんから着信があった。


Yuki’o  :≪朝起きたら誰も居ないんだけど。もしかして香織がそっちに行ってる?≫

島田裕志:≪来てますよ≫

Yuki’o  :≪そんなことよりも雷怖い。お前もそう思うよな?≫

島田裕志:≪ソウデスネ≫


返信を適当にしておいた。

ていうか水無瀬、幸雄さんを家に置いていたのかよ。




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