第3巻 第5章 (恐怖は従順と秩序と専心の好機)

V

第3巻 第5章 (恐怖は従順と秩序と専心の好機)(慢心による無秩序と反抗に注意)(慢心による堕落に注意)(優れた先祖や最前線にいる競争相手を学べ)(無学な上位者は反抗を招く)(天然の要塞の活用と奇襲の勧め)



(*Version A: )A conversation held with Pericles the son of the great statesman may here be introduced.(*Version B: On one occasion Pericles was the person addressed in conversation.)

ここで、大いなる政治家である大ペリクレスの、息子である小ペリクレスと(ソクラテスの間で)行なわれた会話を(私クセノフォンは)紹介できる。(ある時、ソクラテスは、小ペリクレスという人へ話しかけた。※別の版)

Socrates began:

次のようにソクラテスは話し始めた。

I am looking forward, I must tell you, Pericles, to a great improvement in our military affairs when you are minister of war.

「小ペリクレスよ、あなたが、軍事の長官(である将軍)に成ったので、我々の都市国家アテナイの軍事を大いに向上させるのを、私ソクラテスは、楽しみにしている、と言わなければいけない」

The prestige of Athens, I hope, will rise;

「アテナイの栄光が高まるだろう、と私ソクラテスは期待しています」

we shall gain the mastery over our enemies.

「我々の都市国家アテナイは敵対者達を圧倒するだろう」

Pericles replied:

次のように小ペリクレスは応えた。

I devoutly wish your words might be fulfilled, but how this happy result is to be obtained, I am at a loss to discover.

「あなたソクラテスの言葉が実現するのを、私、小ペリクレスは、心から望んでいますが、どうしたら、そのような幸せな結果を獲得できるのか、知るのに困っています」

Shall we (Socrates continued), shall we balance the arguments for and against, and consider to what extent the possibility does exist?

(次のようにソクラテスは話を続けた。)「賛否を議論して調和させて、可能性が、どの程度、存在するか考えてみましょう」

Pray let us do so (he answered).

(次のように小ペリクレスは答えた。)「ぜひ、そうしましょう」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

Well then, you know that in point of numbers the Athenians are not inferior to the Boeotians?

「ええ、では、人数という点では、アテナイ人は、ボイオティア人に劣っていない、と知っていますか?」

Per.

次のように小ペリクレスは話した。

Yes, I am aware of that.

「はい、知っています」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

And do you think the Boeotians could furnish a better pick of fine healthy men than the Athenians?

「では、ボイオティア人は、(心の)美しい健全な人達のうち、アテナイ人よりも、より優れた選び抜かれた人をもたらす事ができる、と思いますか?」

Per.

次のように小ペリクレスは話した。

I think we should very well hold our own in that respect.

「その点では、我々アテナイ人は、とても良く持ちこたえている、と思います」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

And which of the two would you take to be the more united people-- the friendlier among themselves?

「では、アテナイ人と、ボイオティア人という二つのうち、どちらが、より一致団結している、より仲が良い人々である、と思いますか?」

Per.

次のように小ペリクレスは話した。

The Athenians, I should say,

「アテナイ人が、より一致団結している、より仲が良い人々である、と私、小ペリクレスは思います」

for so many sections of the Boeotians, resenting the selfish policy of Thebes, are ill disposed to that power, but at Athens I see nothing of the sort.

「なぜなら、ボイオティア人の非常に大部分の人達が、テーバイ人の利己的な政策に怒っていて、テーバイ人の支配に悪感情を抱いていますが、アテナイでは、そのような事は何も無い、と私、小ペリクレスは思います」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

But perhaps you will say that there is no people more jealous of honour or haughtier in spirit.

「では、『(アテナイ人よりも、)より名誉を大事に守る人々、また、より誇り高い精神の人々はいない』と多分あなた小ペリクレスは思うだろう」

And these feelings are no weak spurs to quicken even a dull spirit to hazard all for glory's sake and fatherland.

「そして、このような気持ちは、愚鈍な精神の持ち主ですら、栄光のために、また、祖国のために、全てを賭けるように高めるように鼓舞する強さと成るのである」

Per.

次のように小ペリクレスは話した。

Nor is there much fault to find with Athenians in these respects.

「そして、この点において、アテナイ人に大きな落ち度は無いのです」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

And if we turn to consider the fair deeds of ancestry, to no people besides ourselves belongs so rich a heritage of stimulating memories,

「また、先祖の善行を熟考すれば、(善行を)鼓舞する記憶という、とても豊富な伝承に属する人々は、我々アテナイ人以外にはいないのである」

whereby so many of us are stirred to pursue virtue with devotion and to show ourselves in our turn also men of valour like our sires.

「そして、先祖の善行によって、我々アテナイ人のうち、とても多数の人達が、善行を献身的に追求するように鼓舞されているし、自身も先祖のような勇者であると示すように鼓舞されているのである」

Per.

次のように小ペリクレスは話した。

All that you say, Socrates, is most true,

「ソクラテスよ、あなたの話は全て、もっともな真実です」

but do you observe that ever since the disaster of the thousand under Tolmides at Lebadeia, coupled with that under Hippocrates at Delium, the prestige of Athens by comparison with the Boeotians has been lowered,

「しかし、トルミデス指揮下の千人のアテナイ人の重装歩兵によるボイオティア人に対しての紀元前447年の『コロネイアの戦い』の大失敗からずっと、ボイオティアのデリウムまたはデリオンでの紀元前424年の『デリウムの戦い』または『デリオンの戦い』でのアテナイのヒポクラテス指揮下の千人のアテナイ人の戦死も重なって、アテナイの栄光は、ボイオティア人と比べて、下落してしまっているのを、あなたソクラテスは気づいていますか?」

whilst the spirit of Thebes as against Athens had been correspondingly exalted,

「一方、テーバイの気運も、アテナイと比べて、アテナイの栄光の下落に応じて、高まってしまっています」

so that those Boeotians who in old days did not venture to give battle to the Athenians even in their own territory unless they had the Lacedaemonians and the rest of the Peloponnesians to help them, do nowadays threaten to make an incursion into Attica single-handed;

「そのため、ボイオティア人は、昔は、ラケダイモン人と自称しているスパルタ人と、ペロポネソス半島の他の都市国家に助けてもらえなければ、自分の領土内でさえも、アテナイ人と戦う危険は冒さなかったが、今では、独力で、アッティカ地方内へ侵略して、アテナイ人を脅かしてしまっています」

and the Athenians, who formerly, if they had to deal with the Boeotians only, made havoc of their territory, are now afraid the Boeotians may some day harry Attica.

「そのため、アテナイ人は、昔は、ボイオティア人だけをあしらうのであれば、ボイオティア人の領土を荒らしたが、今では、『ボイオティア人は、いつか、アッティカ地方を蹂躙じゅうりんしてしまうかもしれない』と恐れてしまっています」

To which Socrates:

その言葉に対して、次のようにソクラテスは話した。

Yes, I perceive that this is so,

「ええ、私ソクラテスも、そうであると気づいています」

but it seems to me that the state was never more tractably disposed, never so ripe for a really good leader, as to-day.

「しかし、今くらい、都市国家アテナイが、より従順で、真に優れた指導者にとって機が塾している時は無い、と私ソクラテスには思われるのです」

For if boldness be the parent of carelessness, laxity, and insubordination, it is the part of fear to make people more disposed to application, obedience, and good order.

「なぜなら、仮に勇気が不用意、気のゆるみ、不従順の原因に成ってしまうのであれば、恐怖のほうは人々をより専念する気にさせるし、従順に成る気にさせるし、秩序良くする気にさせるからである」

A proof of which you may discover in the behaviour of people on ship-board.

「その証拠を船上の人々の行動で知る事ができます」

It is in seasons of calm weather when there is nothing to fear that disorder may be said to reign,

「恐れるべきものが無い、穏やかな天候の時期には、無秩序が支配的である、と言えます」

but as soon as there is apprehension of a storm, or an enemy in sight, the scene changes;

「しかし、嵐への恐れが有るか、視界に敵がいると、すぐに、状況は変わります」

not only is each word of command obeyed, but there is a hush of silent expectation;

「命令の言葉が各々守られるだけではなく、暗黙の期待が静かに存在します」

the mariners wait to catch the next signal like an orchestra with eyes upon the leader.

「合唱隊が指揮者を見るように、船乗り達は次の合図をとらえようと待機します」

Per.

次のように小ペリクレスは話した。

But indeed, given that now is the opportunity to take obedience at the flood, it is high time also to explain by what means we are to rekindle in the hearts of our countrymen the old fires-- the passionate longing for antique valour, for the glory and the wellbeing of the days of old.

「では、実に、『今が良い潮時として従順に成る好機である』と考えると、今とは、どのような方法で、古くからの勇気、栄光、昔の時代の良い状態を熱望する、古くからの同胞の心の火に、再び火をつけるのか、説明するべき時でもあります」

Well (proceeded Socrates), supposing we wished them to lay claim to certain material wealth now held by others, we could not better stimulate them to lay hands on the objects coveted than by showing them that these were ancestral possessions to which they had a natural right.

(次のようにソクラテスは話を続けた。)「ええ、今は他の民族にとられてしまっている、それらの物質的な富をアテナイ人に獲得させたいと望むのであれば、『それらの富は、アテナイ人には当然の権利が有る、先祖からの財産である』とアテナイ人に明らかにする方法こそが、切望している諸物をアテナイ人に獲得させようと鼓舞する事ができる最良の方法なのです」

But since our object is that they should set their hearts on virtuous pre-eminence, we must prove to them that such headship combined with virtue is an old time-honoured heritage which pertains to them beyond all others,

「ただし、私ソクラテスと、あなた小ペリクレスの目的とは、高徳な超越へアテナイ人の心を向けさせる事なので、『徳と結びついている、このような主権は、全ての他の民族を超越してアテナイ人に付属されている、古くからの遺産なのである』とアテナイ人に証明する必要が有ります」

and that if they strive earnestly after it they will soon out-top the world.

「そうして、もしアテナイ人が、それらの富を得ようと真剣に努力すれば、アテナイ人は、すぐに、世界の最高位に成るだろう」

Per.

次のように小ペリクレスは話した。

How are we to inculcate this lesson?

「どうしたら、このような知恵を教え込む事ができるでしょうか?」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

(*Version A: )I think by reminding them of a fact already registered in their minds, that the oldest of our ancestors whose names are known to us were also the bravest of heroes.(*Version B: I think by reminding them of a fact to which their ears are already opened, that the oldest of our ancestors whose names are known to us were also the bravest of heroes.)

「アテナイ人の記憶に今も残っている、『名前が知られているアテナイ人の最古の先祖達も最も勇敢な英雄達であった』という事実をアテナイ人に思い出させる事によって、『このような知恵を教え込む事ができる』と私ソクラテスは考えています」(「アテナイ人に今でも知られている、『名前が知られているアテナイ人の最古の先祖達も最も勇敢な英雄達であった』という事実をアテナイ人に思い出させる事によって、『このような知恵を教え込む事ができる』と私ソクラテスは考えています」※別の版)

Per.

次のように小ペリクレスは話した。

I suppose you refer to that judgment of the gods which, for their virtue's sake, Cecrops and his followers were called on to decide?

「『(都市国家アテナイの最初の王である)ケクロプスと家臣達は、ケクロプス達が高徳であったので、(戦闘的な知恵の女神アテナと海神ポセイドンが、どちらかをアッティカ地方のアテナイ人に崇拝させるために競争した)裁判の判決を神々が下すために(証人として)呼ばれた』のをあなたソクラテスは言及する、と私、小ペリクレスは思います」(ケクロプスは後に「アテナイ」と呼ばれる都市国家の最初の王に成った。アッティカ地方のアテナイ人に自身を崇拝させるために、まず、海神ポセイドンはアクロポリスに海水の泉を創造し、次に、戦闘的な知恵の女神アテナはケクロプスを証人としてオリーブの木を植えた。主神ゼウスがアテナとポセイドンの競争を仲裁して、神々がアテナとポセイドンの競争を裁判した。神々の裁判でケクロプスはアテナに有利な証言をした。アテナは、ポセイドンとの裁判に勝ってアッティカ地方を所有し、「アテナ」という名前からケクロプスの都市を「アテナイ」と名づけた。アテナとの裁判に負けたポセイドンは怒ってアッティカ地方を海水で水浸しにした。ケクロプスは下半身が蛇である象徴的な姿で壺などに描かれている。ケクロプスは、ゼウスへの捧げ物を動物から菓子へ変えた。ケクロプスは、アテナを崇拝するようにアテナイ人に勧めた。)

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

Yes, I refer to that and to the birth and rearing of Erectheus, and also to the war which in his days was waged to stay the tide of invasion from the whole adjoining continent;

「ええ、それと、(アテナイの王の一人である)エレクテウスの誕生と生い立ちと、エレクテウスの治世での、ちょうど陸続きの都市エレウシスからの侵略の流れを止めた戦いにも、私ソクラテスは言及します」

and that other war in the days of the Heraclidae against the men of Peloponnese;

「また、ペロポネソス半島の人達に対する『ヘラクレイダイ』の時代の、あの他の戦いにも、私ソクラテスは言及します」

and that series of battles fought in the days of Theseus--

「また、(アテナイの王)テーセウスの時代の、あの一連の戦いにも、私ソクラテスは言及します」

in all which the virtuous pre-eminence of our ancestry above the men of their own times was made manifest.

「これらの全てにおいて、我々アテナイ人の先祖の、同時代の人達を超越している、高徳な超越性が明らかにされています」

Or, if you please, we may come down to things of a later date, which their descendants and the heroes of days not so long anterior to our own wrought in the struggle with the lords of Asia, nay of Europe also, as far as Macedonia:

「また、よろしければ、アジア、いえ、ヨーロッパ、マケドニアまでの王者達との戦いで行われた、アテナイ人の先祖の子孫の後日談や、現在から、あまり古くない時代の英雄達の後日談に、我々アテナイ人は言及する事もできます」

a people possessing a power and means of attack far exceeding any who had gone before--

「アテナイ人の先祖の人達は、過去の全ての人達を遥かに超越している力と戦闘手段を所有していました」

who, moreover, had accomplished the doughtiest deeds.

「さらに、アテナイ人の先祖の人達は、最も勇敢な行為を成し遂げてきました」

These things the men of Athens wrought partly single-handed, and partly as sharers with the Peloponnesians in laurels won by land and sea.

「アテナイ人(の先祖)は、これらの事、陸と海で勝ち取った栄光を、一部は独力で行い、一部はペロポネソス人と共有しました」

Heroes were these men also, far outshining, as tradition tells us, the peoples of their time.

「伝説によると、アテナイ人の先祖も、同時代の人達よりも遥かに優れている、英雄であったのである」

Per.

次のように小ペリクレスは話した。

Yes, so runs the story of their heroism.

「ええ、そのように、アテナイ人の先祖の英雄的行為の話は記されています」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

Therefore it is that, amidst the many changes of inhabitants, and the migrations which have, wave after wave, swept over Hellas, these maintained themselves in their own land, unmoved;

「定住者達による多くの変化の最中や、ギリシャ人が『ヘラス』と呼んでいる『ギリシャ人の地』に次々と押し寄せてきた移住者達による多くの変化の最中、アテナイ人の先祖の英雄的行為によって、アテナイ人の先祖は自分達の土地でアテナイ人達を保持し、不動だった」

so that it was a common thing for others to turn to them as to a court of appeal on points of right, or to flee to Athens as a harbour of refuge from the hand of the oppressor.

「そのため、外国人達が、正義という点における訴訟のための法廷として(アテナイに)頼ったり、避難所としてアテナイへ抑圧者の手から逃げたりするのは、一般的な事であった」

Then Pericles:

すると、次のように小ペリクレスは話した。

And the wonder to me, Socrates, is how our city ever came to decline.

「では、『どうして我々の都市(国家)アテナイがずっと衰退してしまったのか?』と私、小ペリクレスには不思議に思われます、ソクラテスよ」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

I think we are victims of our own success.

「『アテナイ人は自分達の(過去の)成功のとりこに成ってしまっている』と私ソクラテスは考えています」

Like some athlete, whose facile preponderance in the arena has betrayed him into laxity until he eventually succumbs to punier antagonists, so we Athenians, in the plenitude of our superiority, have neglected ourselves and are become degenerate.

「競技場で楽々と成し遂げてしまった優勢によって、自分よりも弱い競争相手にいつか負けるまで、自身を誤って弛緩しかんさせてしまった、ある競技選手のように、同様に、我々アテナイ人も、豊かな優勢によって、自身の世話をおろそかにしてしまって、衰退してしまったのです」

Per.

次のように小ペリクレスは話した。

What then ought we to do now to recover our former virtue?

「では、以前の美徳を取り戻すために、我々アテナイ人は、どうするべきですか?」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

There need be no mystery about that, I think.

「『以前の美徳を取り戻す事について不思議がる必要は無い』と私ソクラテスは考えています」

We can rediscover the institutions of our forefathers--

「我々アテナイ人は、先祖の規則を再発見する事ができます」

applying them to the regulation of our lives with something of their precision, and not improbably with like success;

「アテナイ人の先祖の規則を我々アテナイ人の人生の規則に幾らか厳密に適用すれば、(アテナイ人の先祖と)同様の成功が可能なはずです」

or we can imitate those who stand at the front of affairs to-day,

「また、我々アテナイ人は、現状の最前線にいる人達を手本にできます」

adapting to ourselves their rule of life, in which case, if we live up to the standard of our models, we may hope at least to rival their excellence, or, by a more conscientious adherence to what they aim at, rise superior.

「現状の最前線にいる人達の人生の規則を我々アテナイ人の人生の規則に(手本として)適用した場合、我々アテナイ人が手本の規範に従って行動すれば、我々アテナイ人は、『現状の最前線にいる人達の優勢に匹敵できる』と少なくとも期待できますし、(現状の最前線にいる人達よりも、)より入念に、現状の最前線にいる人達の目的を固執する事によって、(アテナイ人の)優勢を復活させる事ができます」

(*Version A: )You would seem to suggest (he answered) that the spirit of beautiful and brave manhood has taken wings and left our city;(*Version B: )You would seem to suggest (he answered) that the spirit of beautiful and brave manhood has taken wings and is far enough away from Athens.

(次のように小ペリクレスは応えた。)「『美しく勇敢な男性らしい資質という精神が翼を得て我々の都市(国家)アテナイを去ってしまった』と、あなたソクラテスは、ほのめかしているように思われます」(「『美しく勇敢な男性らしい資質という精神が翼を得て我々の都市国家アテナイから遙か遠くに離れ去ってしまった』と、あなたソクラテスは、ほのめかしているように思われます」※別の版)

as, for instance, when will Athenians, like the Lacedaemonians, reverence old age-- the Athenian, who takes his own father as a starting-point for the contempt he pours upon grey hairs?

「例えば、『自分の父を軽視の出発点としてしまっている、あるアテナイ人は、白髪(の老人)を軽視してしまっているが、いつに成ったらアテナイ人達は、ラケダイモン人と自称しているスパルタ人のように、老人を畏敬するのだろうか?』のように」

When will he pay as strict an attention to the body, who is not content with neglecting a good habit, but laughs to scorn those who are careful in this matter?

「善い習慣の軽視に満足せず、善い習慣をするように注意している人達を笑いものにしてしまう、あるアテナイ人は、いつに成ったら、同様に、厳密に、肉体に注意を払うのだろうか?」

When shall we Athenians so obey our magistrates-- we who take a pride, as it were, in despising authority?

「言ってみれば、アテナイ人達は権力を軽視する事を誇っているが、いつに成ったらアテナイ人達は、公職の人達に従うのだろうか?」

(*Version A: )When, once more, shall we be united as a people-- we who, instead of combining to promote common interests, delight in blackening each other's characters, envying one another more than we envy all the world besides;(*Version B: When, once more, shall we be united as a people-- we who, instead of combining to promote common interests, delight to deal despitefully with one another, envying one another more than we envy all the world besides;)

「さらに、共通の利益を増進するために協力せず、世界の全ての人達に嫉妬する上に、相互に嫉妬し合って、相互に評判を傷つけ合って楽しむ我々アテナイ人達は、いつに成ったら、アテナイ国民として一致団結するのだろうか?」(「さらに、共通の利益を増進するために協力せず、世界の全ての人達に嫉妬する上に、相互に嫉妬し合って、相互に意地悪く扱い合って楽しむ我々アテナイ人達は、いつに成ったら、アテナイ国民として一致団結するのだろうか?」※別の版)

and-- which is our worst failing-- who, in private and public intercourse alike, are torn by dissension and are caught in a maze of litigation, and prefer to make capital out of our neighbour's difficulties rather than to render natural assistance?

「また、これはアテナイ人の最悪の失敗であるが、個人的な交流でも公的な交流でも同様に、意見の相違で分裂してしまって、訴訟という迷路にとらわれてしまって、隣人の苦難に自然な援助を与えるよりもむしろ、隣人の苦難を利用してしまうのを好んでしまうのは、誰か? (現在の堕落したアテナイ人である!)」

To make our conduct consistent, indeed, we treat our national interests no better than if they were the concerns of some foreign state;

「アテナイ人は、自分達の行動を一致させるのに、自国アテナイの利益が何らかの外国と利害関係に有る場合は、実に、自国アテナイの利益を外国の利益も同然に扱ってしまう」

we make them bones of contention to wrangle over, and rejoice in nothing so much as in possessing means and ability to indulge these tastes.

「アテナイ人は、自国アテナイの利益を口論の骨子にしてしまって、口論に勝つ味わいを楽しむ事ができる手段と能力を所有する事を何よりも喜んでしまう」

From this hotbed is engendered in the state a spirit of blind folly and cowardice,

「この口論という悪の温床から、愚かな臆病な盲目の精神が、(都市)国家に生じてしまいます」

and in the hearts of the citizens spreads a tangle of hatred and mutual hostility

「そして、都市国家の市民の心の中に、憎悪と相互の敵意による、もつれが広がってしまいます」

which, as I often shudder to think, will some day cause some disaster to befall the state greater than it can bear.

「『国民の心の相互の憎悪と敵意は、いつの日か、国家に降りかかる、何らかの、国家が持ちこたえる事ができないほどの大いなる災いをもたらすだろう』と私、小ペリクレスは時々考えて、身震いしています」

Do not (replied Socrates), do not, I pray you, permit yourself to believe that Athenians are smitten with so incurable a depravity.

(次のようにソクラテスは応えた。)「どうか、『非常な不治の堕落のせいでアテナイ人は神罰を受けて滅ぼされる』と思い込む事を自ら許すなかれ」

Do you not observe their discipline in all naval matters?

「全ての船の苦難におけるアテナイ人の節制、自制心をあなた小ペリクレスは認めないのですか?」

Look at their prompt and orderly obedience to the superintendents at the gymnastic contests,

「諸々の体操競技でアテナイ人が指導監督者に迅速に規則正しく従うのを見てください」

their quite unrivalled subservience to their teachers in the training of our choruses.

「アテナイの諸々の合唱隊の訓練でアテナイ人が教師に完全に他の追随を許さずに従うのを見てください」

Yes (he answered), there's the wonder of it;

(次のように小ペリクレスは答えた。)「ええ、それらを不思議に思っていました」

to think that all those good people should so obey their leaders, but that our hoplites and our cavalry, who may be supposed to rank before the rest of the citizens in excellence of manhood, should be so entirely unamenable to discipline.

「全てのアテナイの善良な国民は指導者に非常に従うのを考えると、多分、他の都市国家アテナイ市民よりも上位であるべき、アテナイの重装歩兵達と騎兵隊は、規則に非常に全く素直に従わないのです」

Then Socrates:

すると、次のようにソクラテスは話した。

Well, but the council which sits on Areopagos is composed of citizens of approved character, is it not?

「ええ。しかし、『アレオパゴス会議』は、『善良である』と認められた都市国家アテナイ市民で構成されています。そうではありませんか?」

Certainly (he answered).

(次のように小ペリクレスは答えた。)「確かに」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

Then can you name any similar body, judicial or executive, trying cases or transacting other business with greater honour, stricter legality, higher dignity, or more impartial justice?

「では、(『アレオパゴス会議』よりも、)より栄光が大きく、より厳しく法を守って、より高貴に、より公明正大に、裁判する(『アレオパゴス会議』と)同様の何らかの司法の団体や、裁判以外の他の務めを行う(『アレオパゴス会議』と)同様の何らかの行政の団体の、名前をあなた小ペリクレスは挙げる事ができますか?」

No, I have no fault to find on that score (he answered).

(次のように小ペリクレスは答えた。)「いいえ。私、小ペリクレスは、その点において、『アレオパゴス会議』に欠点を見つける事ができません」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

Then we ought not to despair as though all sense of orderliness and good discipline had died out of our countrymen.

「では、まるで、同胞のアテナイ人達から、秩序正しい全ての感覚や、優れた節制、自制心が、消えて失くなったかのように、絶望するなかれ」

Still (he answered), if it is not to harp upon one string, I maintain that in military service, where, if anywhere, sobriety and temperance, orderliness and good discipline are needed, none of these essentials receives any attention.

(次のように小ペリクレスは応えた。)「ですが、唯一の弦しか無い竪琴を奏でる必要が無いのであれば、『落ち着きと節制、自制と、秩序正しさと優れた節制、自制心が、どこでも必要とされる、軍務において、(現在の堕落したアテナイ人は、)節制、自制心といった、これらの必要不可欠な特質に注意を払っていない』と私、小ペリクレスは主張します」

May it not perhaps be (asked Socrates) that in this department they are officered by those who have the least knowledge?

(次のようにソクラテスは尋ねた。)「多分、この(軍務の)分野では、最も知識に乏しい者どもが、重装歩兵達と騎兵達を指揮してしまうのではありませんか?」

Do you not notice, to take the case of harp-players, choric performers, dancers, and the like, that no one would ever dream of leading if he lacked the requisite knowledge?

「竪琴の奏者達、合唱の演者達、踊り子達などの例を挙げると、『必須の知識が欠如している場合は、誰も指揮しようとは決して夢にも思わない』と気づきませんか?」

and the same holds of wrestlers or pancratiasts.

「また、レスリング選手達やパンクラチオン選手達の例を挙げても同様である」

Moreover, while in these cases any one in command can tell you where he got the elementary knowledge of what he presides over, most generals are amateurs and improvisers.

「さらに、竪琴や合唱といった、これらの例では、全ての指揮者は、『指揮する物事の基礎知識をどこで取得したのか』を話す事ができるが、(現在の堕落したアテナイの)大多数の将軍どもは、未熟者どもで、即興で行きあたりばったりで指揮する者どもなのである」

I do not at all suppose that you are one of that sort.

「(ただし、)『あなた小ペリクレスも、そういったたぐいの(無学な)将軍どもの一人である』とは私ソクラテスは全く考えていません」

I believe you could give as clear an account of your schooling in strategy as you could in the matter of wrestling.

「『あなた小ペリクレスは、レスリングの物事について明確に説明できるのと同じくらい、戦略や戦術について教わった教育について明確に説明できる』と私ソクラテスは信じています」

No doubt you have got at first hand many of your father's "rules for generalship," which you carefully preserve, besides having collected many others from every quarter whence it was possible to pick up any knowledge which would be of use to a future general.

「疑い無く、あなた小ペリクレスは、あなたの父である大ペリクレスの『戦略や戦術の法則』を直接、習得して用心深く保持していますし、さらに、将来の将軍の役に立つ全ての知識を得る事ができる世界の全ての地域から大ペリクレス以外の他の多数の戦略や戦術の知識を収集してきています」

Again, I feel sure you are deeply concerned to escape even unconscious ignorance of anything which will be serviceable to you in so high an office;

「さらに、『あなた小ペリクレスは、無意識ですら、非常に高位な将軍職の自分の役に立つ何らかの知識が無い事を避けようと深く願っている』と私ソクラテスは感じています」

and if you detect in yourself any ignorance, you turn to those who have knowledge in these matters (sparing neither gifts nor gratitude) to supplement your ignorance by their knowledge and to secure their help.

「そして、あなた小ペリクレスは、もし自分に戦略や戦術の何らかの知識が無い事に気づいたら、知識が有る人達の知識によって、無かった知識を補完するために、また、知識が有る人達の助けを確保するために、(贈り物と感謝を惜しまずに、)戦略や戦術の知識が有る人達を求めます」

To which Pericles:

その言葉に対して、次のように小ペリクレスは話した。

I am not so blind, Socrates, as to imagine you say these words under the idea that I am truly so careful in these matters;

「ソクラテスよ、私、小ペリクレスは『私、小ペリクレスが戦略や戦術について本当に、とても注意を払っている、と、あなたソクラテスは考えて、これらの言葉を話した』と思うほど盲目ではありません」

but rather your object is to teach me that the would-be general must make such things his care.

「実に、むしろ、あなたソクラテスの目的とは、『将軍志願者は、これら戦略や戦術のような物事に注意を払う必要が有る』と私、小ペリクレスに教える事ですよね」

I admit in any case all you say.

「とにかく、私、小ペリクレスは、あなたソクラテスの話してくれた事を全て受け入れます」

Socrates proceeded:

次のようにソクラテスは話を続けた。

Has it ever caught your observation, Pericles, that a high mountain barrier stretches like a bulwark in front of our country down towards Boeotia--

「ある高山という防壁が、我々の国アテナイの前の防護壁のように、ボイオティアまで広がっているのを、小ペリクレスよ、あなたは、かつて気づいた事が有りますか?」

cleft, moreover, by narrow and precipitous passes,

「さらに、(その高山に、)裂け目が狭く断崖絶壁で通っています」

the only avenues into the heart of Attica,

「(その高山の裂け目の)道は、アッティカ地方の中心にまで通っています」

which lies engirdled by a ring of natural fortresses?

「アッティカ地方は、天然の要塞である山々の輪で囲まれています」

Per.

次のように小ペリクレスは話した。

Certainly I have.

「確かに、私、小ペリクレスは、そのように気づいた事が有ります」

Soc.

次のようにソクラテスは話した。

Well, and have you ever heard tell of the Mysians and Pisidians living within the territory of the great king, who, inside their mountain fortresses, lightly armed, are able to rush down and inflict much injury on the king's territory by their raids, while preserving their own freedom?

「ええ、では、『(ペルシャの)大王の領土の中に住んでいるミュシア人とピシディア人は、天然の要塞である山の中にいて、軽装で、山を急降下できて、急襲によって(ペルシャの)大王の領土に多大な損害を与えるが、自分達の自由を保持し続けている』と、あなた小ペリクレスは、かつて聞いた事が有りませんか?」

Per.

次のように小ペリクレスは話した。

Yes, the circumstance is not new to me.

「はい。その状況を聞いた事が有ります」

And do you not think (added Socrates) that a corps of young able-bodied Athenians, accoutred with lighter arms, and holding our natural mountain rampart in possession, would prove at once a thorn in the enemy's side offensively, whilst defensively they would form a splendid bulwark to protect the country?

(次のようにソクラテスは言い加えた。)「では、『若く健康で丈夫な肉体のアテナイ人の軍団は、より軽装を与えられて、山という天然の要塞である防壁を占拠すると、敵側をすぐに攻撃的に苦しめる事を証明するだろうし、一方、防御的に自国を守る見事な防壁を形成するだろう』と、あなた小ペリクレスは思いませんか?」

To which Pericles:

その言葉に対して、次のように小ペリクレスは話した。

I think, Socrates, these would be all useful measures, decidedly.

「ソクラテスよ、『確かに、全く役に立つ手段である』と私、小ペリクレスは思います」

If, then (replied Socrates), these suggestions meet your approbation, try, O best of men, to realise them--

(次のようにソクラテスは応えた。)「では、もし、これらの私ソクラテスからの提案が、あなた小ペリクレスの承認を受けられたのであれば、おおっ、人々のうち最優である小ペリクレスよ、実現しようと試みてください」

if you can carry out a portion of them, it will be an honour to yourself and a blessing to the state;

「もし、あなた小ペリクレスが一部でも成し遂げたら、あなたの栄光と成るであろうし、国家アテナイへの恩恵と成るであろう」

while, if you fail in any point, there will be no damage done to the city nor discredit to yourself.

「もし、あなた小ペリクレスが何らかの点で失敗しても、都市(国家)アテナイにとって何の損害にも成らないであろうし、あなたにとって不名誉にも成らないであろう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る