【25】聖少女の腕を千切るよりも甘酸っぱい初恋
──刹那を
内にも外にも拡がる
一つ、脊髄と頭だけの顎無し
もう一つは、首から紅い血を流す、貌すらも黒く染まっている最低な黒服。
そんでもって精神や体を操ることができて、考えを読んでくる失礼の塊だ。
そんなものに“傷”をつけられる者がこの世にいようとは……いやいや不思議なものである。
武器はシンプルに“尾髄”。骨の部位を器用に動かし、相手の首元へと刺し込んだ。
闇へと飲み込まれていく尾髄を直ぐさま抜き取ると、武器の所有者は黒服の手から離れ飛んでいく。
まるでその動きは蛇の様で、とても不気味だったがそれすらも愛らしい。
向かった先は、停止した血まみれ
強引に収まっていく体からは血が更に溢れ出し、モノトーンの衣装を更に紅くしていくがそんなことを気にしている暇はない。
奇跡的に収まると断切の境に蛇の鱗の様なものが覆っていき、彼の首を繋いだ。
有り得ないことに体はなんの不自由もなく動き出し、近くに落ちていた顎を拾い上げると、自分の顎へと組み込んでいく。
鱗が覆いながらも全身の動作確認をすると──
予想外にも私の方へと歩き出した。
……何故?
私を置いてさっさと一人で逃げればいいのに。
黒服はそれを逃がさず、ナイフを生み出すと迷わず彼へと投げた。
速度、軌道の変化のブレも無く、ナイフは脚を狙う。
このままいったら、その脚に当たることとなる。
──何も持たぬ生き物であれば。
華奢でか弱い足は突如骨があることを忘れだし在らぬ方向へうねると、ナイフを避けた。
しかし、黒服は呆気にとられることなく冷静に次の手を出そうとした。
が、瞬間自らの異変に気付いた。
頭の角度が前触れもなく直角90度に曲がる。
爆発的に膨れ上がり、光をも受け付けぬ黒い首にマグマの様な赤みが色付けられていく。
焔の原因は、解っていた。
黒服の首から、それは離れていく。
小さく白い、赤いお
正体は、私のもとへ迎えに来てくれるメイドの髪の
その白蛇が細い黒髪へと戻り、ハラリと舞う時──黒服の追撃をする手、思考が断絶される。
奴は無言の中、確信したのだろう。
喰われた瞬間何をされ、安珍・清姫伝説の血を持つ彼がどのような存在なのか。
そして、自らの終わりの時を。
彼……
気付かぬうちに私は、その赫色に染まる優しい瞳に見下ろされていた。
言葉を投げる暇も与えられず、私はアイリの腕に抱かれ、……持ち上げられた。
『え』
心の中で声がこぼれる。
私を抱きかかえたまま黒服を睨むと、アイリは鱗が消えた
「僕を
黒服の首が弾け飛び、血が席全体を一時の間に汚す。
血のスプリンクラーとなって立ち尽くす体の下には、醜く黒ずんだ頭だけが転がっていた。
それを私たち二人は、平然と浴びている。
もうどれほど血で汚れても大差は無い。
芸術品を作り上げた時の達成感があるのに……それよりも私は、別のモノに熱が上がっていた。
アイツが死ぬ時、私は、一人の殿方だけをじっと視ていたのだから。
※
──拝啓、殺してしまったお父様、お母様。
あの時、私は全てが嫌になって、お父様の頭を壁に叩きつける形で殺害してしまい、ふと、お母様が本当に私を産んだのか気になって、殺した後に子宮を取り出して確認してしまいました。
聖女でありながら鬼の私に沢山の愛情を込めて頂きありがとうございます。そして、この様な形で終わらせてしまい申し訳ございません。
そんなことよりも
してくれている方は凄く可愛いんです、すごい美人さんなんです。
私よりも背が低くて、年下で、何故かメイド服を着用している童子。
幼くも凛々しいその姿を見て──
抱かれたいけど、それよりも沢山抱いてあげたい。
苦しいです。死にたいほど苦しいです。
彼のことをたくさん愛して、たくさん食べてあげたくてしょうがないです。
私の純潔を彼と共に激しく殺してやりたくて、もう頭と心が壊れちゃいそうです。
どうしましょう。どうしましょう。
顔の火照りが治りません。
どうしましょう。どうしましょう。
私、恋しちゃったみたいです。
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