人間
うさみゆづる
祝福
幸せも五百円で買える時代になったわけだし
今夜はそれで涙を拭きながら
すっかり髪が伸びたあの人について
思いを馳せようと思います。
近所の黒髪が綺麗なお姉ちゃん
あの人のぷっくりした涙袋は
きっとこの銀河系で一番美しいに違いない。
まつ毛の上下に合わせて
新たな星が広い宇宙に爆誕するのです。
いつのまにかあなたの隣には
最愛の柴犬・小雪でもなくて
未だに傘で飛ぼうとする実弟でもなくて
勿論ただの幼馴染の私でもなくて
天気予報が得意そうな頭の男がいましたね。
ニュースを見なくても天気がわかるのは
確かにちょっと楽なのかも。
あなたの髪が腰まで伸びたのも
その男によるものなのでしょうか。
まあ、純白の衣装にその黒髪は
悲しくなるほど映えていたけど
でもね私はやっぱり
振り返るたび私の頬に毛先をぶつける
あのショートが愛おしかったのですよ。
昔あなたがくれた五百円のハンカチで
今夜は涙を拭きたいと思います。
本当はお天気男を夜な夜な呪ってやろうかと
一瞬過ぎったのも事実ですが
しばらく逡巡した後やめました。
みっともない姿は見せたくないのが本音です。
代わりにと言ってはなんですが
これを置いていきます。
どんなに数学が得意なあなたでも
きっと割り切ることなんかできないだろう
私の祝福を
あなたに。
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