第46話 全智さんにドッキリ

「みんなおはよー。キラキラ以下略、花依でーす」


コメント

・いつにもまして挨拶が適当

・設定よりてぇてぇを選んだ女

・こんな朝から配信は珍しいな


 そう。

 現在時刻は6時半。早朝配信を決行している。  

 昨日、全智さんから『さみしい』というラブコールを貰った私は、即行で全智さんのお宅に向かうことを決めつつ、あるドッキリを仕掛けることにした。

 最近は学力王決定戦で忙しかったし、その埋め合わせ的な? 全智さんも全智さん側で頑張っていることを私は知ってる。

 そのお礼も兼ねてだね。


「今日はちょっとした告知かな。──これから全智さんにドッキリを仕掛けようと思いまーす!」


コメント

・花×全来たァァァァァァァァァ!!!!

・うぉおおおおおお(上質な百合成分補給確定演出)

・素晴らしい予感がする……


「配信で全智さん寝てるのは分かってるし、堂々と作戦立てちゃうよ!」

 

 ドッキリと言っても何か危害を加えるわけじゃない。

 どうせなら幸せになれるドッキリを仕掛けよう、ということで、考えてきたのはこちら!

 私は画面上にドッキリ計画の概要を映し出す。


「まず、寝てる全智さん宅に侵入。それから起こさないように家事全般を終わらせる。その後、朝ごはんを作ってから寝室に侵入。優しく起こしたら、隣に私がいる……って感じだね」


コメント

・すでにてぇてぇやん

・侵入、って言葉が不穏だけどなw

・どうやって全智の家に入んの?


「うん、私、この前いつでも来て、って合鍵貰った」


 瞬間、コメントがざわつき出す。

 まあ、私もびっくりしたからね。流石に不用心じゃないかと思ったし、実際そう言った。

 

 でも──


「『花依だから。一番安心できて、一番この家に来て欲しい。だから受け取って欲しい』……って言われたら断れるわけないよね。嬉しかったし」


 その対象に選んでくれたのは、素直に嬉しい。

 だから合鍵ならぬスペアのカードキーを渡すってのもどうかと思うケド。まあ、全智さんが良いならヨシ!


コメント

・朝っぱらからてぇてぇ過ぎて感情が追いつかんw

・それもう夫婦やんけ

・ファーーーー、てぇてぇええええ!!

・一番安心しきってるもんな。でも、花依がいなくても全智はしっかり自分で立って行動してる。依存関係じゃないのもてぇてぇ

・なんかこいつさり気なく全智の声完全再現しなかったか?


 そう。依存は良くないと再三言っている。

 ……う~ん、でも完全に依存してないかと言われるとノーだケド。ま、基準は私に行動選択、意思決定を任せないか、だね。そこを委ねたらダメ。

 

「そんなわけで、いつでも侵入はできるよ〜。事務所にも許可は取ってるから、そこのところは安心して。ワタシ、アクヨウ、シナイ」


コメント

・おいこらw

・一番重要なとこでカタコトになるなw

・一気に信用度ガタ落ちで草

・侵入言うてる時点でw

・でも、やってること完全に通い妻だよな

・てぇてぇやわ(真理)


 

「じゃ、いざ全智さん宅へレッツゴー! 私の方でマイク繋げるから、続きは全智さんの枠で待っててね〜」




☆☆☆



 ──と、言うわけでやってまいりました全智さん宅。

 ここで全智さんが起きてしまったら作戦の全てが瓦解しちゃうけど、普段は9時起きくらいだし、配信で見た限りまだ寝てるから多分大丈夫。

 

 私はカードキーで素早く開けて、全智さんの家に侵n……お邪魔する。

 部屋は遮光カーテンで閉じられていて、全智さんがまだ起きていない証明が成されていた。  

 そのままリビングに直行。  

 つけっぱなしの配信画面に、私のマイクを接続させれば準備完了だ。


 

「はい、どうもこんにちは、花依でーす。今回は全智さんに通い妻ドッキリを仕掛けたいと思います」


 あの配信を見てない人用に軽く企画の説明をする。


コメント

・花依!?なんで!?

・ホワッ!? てぇてぇ!? 

・待ってたぜこの時をなァァァ!!

・半裸待機


「じゃあ、早速家事の方……って行きたいんだけど、掃除も洗濯もできてるね。……全智さんの成長に泣きそう」


コメント

・花依ママと、家事を習慣付けた全智さんの努力のお陰やで

・全くその通り

・全智も頑張ったからなぁ……。あの退廃した生活を知ってる奴は全員泣いてると思うw


 うんうん、間違いない。

 私は後押ししただけ。

 こういう習慣って、思っている以上に難しい。一時はできても、すぐに元に戻ってしまったりして続けることは非常に困難だ。

 それを全智さんは日々調べながら努力して、しっかりと毎日続けている。素直にすごい。本当にすごいと思う。

 ……私まで何か泣きそうかも。


「じゃあ、朝ごはん作ろうかな。できるだけ音を立てないようにね」


 材料はすでに買って持ってきている。

 さあ! いざレッツクッキング!!



〜〜調理中〜〜


「はい、完成。だし巻き卵にナメコの味噌汁。鮭の塩焼きに暖かいご飯。うん、味も問題なし」


コメント

・それなりに手前かかるのに、手際よく短期間でこれだけのクオリティの朝飯作る花依ってヤバくね?

・お前、Vとしてのレベルもトップなのに、家事も勉強も司会も何でもできるとか、逆に何ができねぇーんだw

・花依にできないことはない!


「私ができることは精々寂しがりやな女の子を抱きしめるくらいだよ」


コメント

・今すぐそれをやってもろて

・てぇてくするな

・それをヤりに来たんだろw


 まあ、平たく言えばそうだよね。

 ぶっちゃけ、私にだってできないことは幾らでもある。手の届く範囲を努力で補っているだけに過ぎない。

 努力とは、手の届く範囲を広げる行為だ。

 いざ何か起こった時に無理をして無理やり手を広げるのも、一つの手段ではある。けれど、それが間に合うとは限らない。  

 そのいざ。何が起こるか分からなくても、努力をすればきっと役に立つ。


 ──だからとりあえず全智さん抱きしめよっか!


「じゃあ、起こしに行こう」



 私はよっころしょ、と椅子から立ち上がり、全智さんが寝ている寝室へと向かう。

 ゆっっくりと静かに扉を開ける。

 そこには天使の寝顔を晒す全智さんがいた。


 身長が小さく童顔だからか、その表情はあどけなく、守ってあげないと……という使命感まで湧き出てくる。


「くそかわいい」


コメント

・おい本音

・思わず出ちゃった感じでワロタw

・絶対今真顔で言っただろwww

・草


 私は誘蛾灯に誘われる虫のように、ふらふらと全智さんが眠るベッドまで吸い寄せられていく。

 全智さんの傍らに腰を下ろし、すぅと髪をなぞる。

 サラサラした感触が非常に触り心地が良い。


「ばかかわいい」


コメント

・本音ver2

・今一体ナニをしてるんでしょうねぇ

・合鍵悪用してんじゃねぇかてめぇ!w

・その言葉脳介してます?多分こいつ脊髄で会話してる


 そのまま全智さんの白い肌をなぞる。

 すべすべした触り心地は、本当に同じ人間とは思えないほどで、私は天使と言われて納得できる気がした。


「天使」


コメント

・それはそう

・間違いない

・当たり前だよな


「──はっ! 趣旨を忘れてた!」


コメント

・今かよ()

・結構前から多分忘れてだよなw


 いや、全智さんが可愛すぎるのが悪い。

 というか合鍵使用して寝室に侵入して体触る、って今更ながらに犯罪じゃない? いや、本当に今更なんだけどさ。

 ……危ない部分触ってないからセーフってことで。犯罪者はみんなそういうんだケド。


「全智さん、起ーきて」

「んんぅ……ん」

  

 ぷにぷにと頬を突きながら私は全智さんを起こす。

 しかし一向に目を覚まさない。

 私は全智さんの体を揺り動かして起こしにかかる。


「全智さーん。おーきーてーー」


 すると、全智さんの瞳が薄く開いた。

 寝ぼけ眼で、全智さんは甘い声を出した。


「んぅ……はなより……?」

「そうですよ、花依です。起きてください」

「……夢ぇ? そっかぁ、夢かぁ……」

「え、ちょ全智さ──おわっ」


 次の瞬間、全智さんは私をベッドに引きずり込んで抱き締めた。

 そしてそのまま入眠。


コメント

・何が起きた!?

・てぇてぇの波動を感じる!!

・状況説明求む

・多分今コメント見れない状況と予想


「ちょ、全智さん。寝ぼけてますって。それはまず……柔らか……え」


 全智さんの体の感触が全身に広がる。  

 甘い匂いと暖かい体温。あどけない寝顔が至近距離にあって、私は思わず頬が熱くなるのを感じた。

 これはてぇてぇじゃ済まないって。

 ……こっちの気も知らないで眠ってる全智さんが恨めしい。


「はぁ……。私もちょっと寝るね。起きたら状況説明する……ぐぅ」


 マイクをポチッとオフにして、私は暖かい感触のまま意識を暗闇に染めた。


コメント

・お預けかよぉおおおお!

・仕方ない待とう

・私も寝る、ってことは多分一緒に寝てんだろうし

・それはてぇてぇすぎる





☆☆☆


「花依……!? なんで……!?」

「んむぅ? 全智さん、おはよー」

「……っっ」


 再び起きたら、顔を真っ赤に染めた全智さんがいた。


 そんな1日。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お久しぶりです。更新滞ってすみません……!

ですが、上質なてぇてぇをお届けしたつもりですので許してください!

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