パーフェクトゲーム
フカミソ
パーフェクトゲーム
パーフェクトゲーム。
それは圧倒的実力と技術力の証明。投球者なら誰もが憧れる名誉と名声。ひとたび達成すれば賞賛を、歓声を、讃美を受けるという。
そんなパーフェクトゲームを成し遂げようとしているとある試合のお話。
◇ ◇ ◇
8月の夏真っ盛り。太陽が照りつける炎天下。外気温は35℃を超え、道行く人々の額には汗が滲んでいた。
ここは兵庫県西宮市甲子園町のとある会場。互いの応援団の掛け声が喧騒となって響いていた。しかし、今では片側の座席からしか声は聞こえてこない。
決勝戦。圧倒的得点差がA高校、B高校の間に横たわっていた。試合中盤にも関わらずB高校には早くも諦めムードが漂っていた。電光掲示板に光る4つのゼロの文字。
4回互いのターンを経たがその間の投球の尽くを外しまくり一点すらも得点を獲得することは敵わなかった。
一方、A高校は湧いていた。パーフェクトゲームの可能性があったからだ。
A高校の誇るエースSによる投球は単純なストレートやカーブにも関わらず驚くべき速さと正確性を兼ね備え、ストライクを量産し、B高校の追随を許さなかった。Sの投球はとどまるところを知らず5回、6回、7回と続き、遂に8回までストライクを連発した。
そして9回、投球に立つS、迎え撃つはB高校のT。パーフェクトゲームの懸かるSが放つ極限の緊張感は応援団にも伝播し、会場一帯は異様な静寂を保っていた。対戦相手であるB高校でさえ固唾を呑んで見守る中、Sは短く深呼吸をして目を瞑った。
「いける」
そう、小さく呟きニヤリと笑った。
そのSの表情を見たTは後に「自信に満ち溢れた表情とはああ言う顔のことを言うんだね」と語ったという。
Sが大きく振りかぶって投げた球はストレート。確かな手応えを感じさせるその投球はレーンのド真ん中を突き進み正三角形に整然と並んだ10コのピンを弾き倒し見事ストライクを達成した。
しかしその後、10回の最後の一投で7ピンと10ピンを残してしまい結局Sの得点は298点でパーフェクトゲームとはならなかった。
とはいえSは優勝し、大いに盛り上がってA高校B高校合同ボウリング部トーナメント大会は幕を下ろしたという。
パーフェクトゲーム フカミソ @fukami1345
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