①犯罪探偵社JAMESの事件簿
紅りんご
プロット
〇参考作品
シャーロックホームズの冒険
ルパン三世
The Great Pretender
コンフィデンスマンJP
〇世界観
・現代ファンタジー
舞台は裏社会や秘密結社といった日の当たらない世界が発展した現代日本。裏社会の人間に犯罪プランを提供する主人公が、自分以外が計画した事件を解決していく。主人公は裏社会を統一することを目指す。
貧富の格差が拡大し、社会からドロップアウトした人間が裏社会に流入することで裏社会が発展した。裏社会の人間は都市の内部、路地裏を開発して生活している。
一時は治安は悪化の一途を辿っていた東京も、対裏社会治安維持組織『SHALOCK』の登場で状況は緩和された。現在は『SHALOCK』が日本の治安維持の中枢を担っている。
裏社会には多くの秘密結社がある。中でも大きな影響力を持っているのは『CHILDREN』。孤児を暗殺者として育て、派遣などを行う組織であり、表社会にも影響を与える有害組織。
『SHALOCK』と『CHILDREN』のトップは同一人物であり、裏社会を支配し、表社会を蹂躙する「ライヘンバッハ計画」を最終目標としていた。治安維持は表社会の中枢を握るための活動である。
しかし、計画の核だったシャロが逃亡したことによって、「ライヘンバッハ計画」は失敗する。その結果、シャロという協力者を得た裏社会は更に発展し、混迷を極めて現在に至る。
〇主要キャラクター
①黒川健斗(くろかわけんと)
・ビジュアル
黒目黒髪、中肉中背の青年。一重で目つきが悪い。動きやすさを重視しており、常に軽装。『CHILDREN』の制服が黒だったため、黒色が苦手。身につけるものも、黒はなるべく避けている。
・設定
生きたまま対象を拘束し、連行することを仕事としている、と本人は言っているが仕事は全くない。ただ、殺さずに相手を無力化することにかけては一流。
幼い頃から暗殺者として育てられたものの、とあるきっかけから正常な倫理観を得て相手を殺すことを躊躇するようになった。唯一の家族である妹が最優先行動事項であり、それを利用されることが多い。警戒心の無さというよりも、例え一パーセントでも希望を捨てられない甘さが彼の多くを占めている。その甘さ故に危険なことに巻き込まれることも多いが、優しさとも言える甘さは裏社会において異質で、裏社会の人間を惹きつける魅力でもある。
なお、シャロと出会ってからは、『ワンコ』という愛称で呼ばれるようになる。シャロのことは、そのまま呼ぶか、「ご主人様」と呼ぶこともある。
秘密機関『CHILDREN』によって、妹と共に暗殺者として育てられた。自分が暗殺者であることに疑問を抱いてこなかった。しかし、『CHILDREN』に潜り込んだ自称世界一のコンフィデンスマン、天王寺アルと出会ったことで、自分の価値観を揺るがされてしまう。『CHILDREN』では優秀な教師だった天王寺アルと話を重ねていく内に、暗殺者ではなく普通の人間の倫理観を得てしまった健斗は誰も殺せなくなる。そして、天王寺アルが『CHILDREN』を去り、優秀だった妹が裏社会に暗殺者として輩出され、行方不明になったことをきっかけに、『CHILDREN』から脱走、フリーのアウトサイダーとして妹を追い始める。全ては妹と表社会で過ごすために。
健斗の中では、天王寺アルの言葉が強く息づいている。健斗にとって彼は親代わりの存在でもあった。ただ、実際の家族ではないため、『CHILDREN』で教師として潜入していた彼のことは「先生」と呼んでいる。
・セリフイメージ
「俺の目的は、妹を、寧々を見つけることだ。」
「誰も殺さないでいいなら、それが一番だろ。」
「残念だったな、俺は自分で思ってるより忠犬らしい。」
「うちのご主人様の目は誤魔化せねぇよ。」
②M(エム)(主人公)
・ビジュアル
紫の長髪、赤と青が混ざり合った瞳。健斗と同じ位の身長。服装は黒紋付にコルセット、レースをあしらった黒のスカート。全体的な色合いは毒蜘蛛を思わせる。
・設定
自称:ジェームズ・モリアーティ。本名:東雲美花。仕事相手に対してはMと名乗っている。Jではないのは、語感が気に入らないから。情熱的かと思えば、冷徹な面も併せ持つ浮世離れした雰囲気を纏った少女。基本的には自己中心的な行動を取る。シベリアンハスキーが描かれたクッションと棒付きキャンディがお気に入り。裏社会の犯罪者と彼らに提供した犯罪、そして自分が解決した事件をまとめたスクラップ・ブックを持ち歩いている。豊富な犯罪史の知識と驚異的な連想力、裏社会の隅々まで張り巡らされた情報網で事件を解決する。彼女にとっての完全犯罪とは、「必要のない血を流さずに目的を達成すること」。完全犯罪の定義が自分の介入が悟られないこと、あるいは犯罪行為が露見しないことではないのは、彼女がその存在を『SHALOCK』か『CHILDREN』に対して知らしめるため。あくまで犯罪者であるよりも先に、探偵であることに重きを置いている。
普段は『M』と名乗り、裏社会の犯罪を解決する探偵を生業としている。裏社会にいた以前の記憶が存在していない。そのため、自分が何者かを明らかにすることを目的としている。一番古い記憶は、『SHALOCK』と『CHILDREN』が共同で運営する研究所から天王寺アルによって助け出された時のこと。そのため、自分の出自の謎はその二組織が握っていると睨んでおり、その二組織の壊滅も目的の一つである。鋭い洞察力と観察力は生まれつき、だと思っている。相手の行動が推測できるため、相手に心を乱されることはない。しかし、自分の生きる目的を笑わなかった黒川の行動だけは予想外であり、彼を気に入るため要因になった。
ごく普通の女子高生だったが、対裏社会組織『SHALOCK』と『CHILDREN』の取引を目撃したことで、脳に特殊な改造を施されてしまう。記憶を失った代わりに鋭い洞察力など圧倒的なまでの才能を手にした。当初は、裏社会と表社会の両方を力で牛耳ることを目的とした『ライヘンバッハ計画』の頭脳として運用される予定だった。しかし、感情や倫理観を排除する最終調整が済む前に天王寺アルに救出され、数日間面倒を見てもらう。天王寺アルは『SHALOCK』や『CHILDREN』の追手からシャロを守り通して、亡くなってしまう。彼の任務が『SHALOCK』と『CHILDREN』の壊滅だと知ったシャロは、自分が何者か知るために、その二組織を相手取ることに決める。探偵、を名乗っているのは、天王寺アルからシャーロックホームズの冒険についての話を聞いたため。『SHALOCK』に対する当てつけである。その際、ホームズと対立する存在としてジェームズ・モリアーティについても聞いており、自分の名前として利用している。JではなくMを名乗っているのは、語感がいいかららしい。
・セリフイメージ
「私は自分が生まれた理由を知りたいだけだよ。」
「阿呆か、君は。」
「これこそ完全犯罪だよ。」
「悪いね。お行儀の良い探偵サマじゃあないんだ、私は。」
「うちの愛犬が世話になったみたいだね。」
「美しくない犯罪は嫌いなんだ、虫唾が走る。」
③黒川寧々(くろかわねね)
・ビジュアル
丸い瞳、しなやかな身体とほっそりとした顔は猫にそっくり。健斗といた頃は、黒髪を両側でおさげにしていたが、今はボブヘア。健斗との身長差は15cmくらい。(160cmくらい。)
・設定
黒川健斗の妹。『CHILDREN』出身の凄腕の暗殺者であり、『クロネコ』と呼ばれていた。現在は裏社会の壊滅を目指す政府直轄の組織『SHALOCK』の一員。黒猫を模したフルフェイスマスクに、黒のジャケットにパンツ、ネクタイ、とスーツ姿が戦闘服であり、手にしたものを武器として扱える天性の殺し屋。
基本的には心優しい性格ではあるが、自分と兄を取り囲む現状自体には憎しみを抱いている。『CHILDREN』に所属していた頃は、自分の境遇について何も疑問を抱いてこなかった。しかし、兄を置いて一人裏社会で暮らし始めたことで、表社会の存在を知る。多くの人間を殺してきた自分の生活に疑問を持ち始めた頃に、『SHALOCK』からのスカウトを受ける。表社会の『SHALOCK』で暮らしているため、表社会の法律にも通じているが、『CHILDREN』時代の教育が抜けきっておらず、道徳観については兄より低く、命を奪うこと自体に何ら躊躇はない。寧々にとって重要なのは、兄と共に暮らせる生活を取り戻すことである。
『SHALOCK』に入隊したのは、『CHILDREN』から兄を救い出すため。兄が脱走したことは知らない。そのため、一巻の最後、会場で兄の姿を目撃した時は驚いた。そして、兄を裏社会に縛り付けるシャロに対して激しい憎しみを抱き、抹殺を志すようになる。
・セリフイメージ
「兄さんとの幸せを邪魔するつもりなら、殺します。」
「待ってて。『CHILDREN』は私が始末するから。」
「喚くな。悪なら全て殺す。ただ、それだけ。」
「兄さんがいなければ、私は生まれた時から死んでいたのと変わらなかった。」
「犯罪探偵……兄さんを縛る女……。」
④マイ
・ビジュアル
赤毛のボブに赤い瞳。健斗やシャロよりも身長は高く、年齢も上。常にヘルメットとライダースーツを着用しており、服装と乗り物は必ず赤色。
・設定
本名、彩速舞子(さいそくまいこ)。『運び屋』と呼ばれる運搬業を担っている。彼女曰く、「金さえ払えば、地獄の底まで運んであげる」とのこと。同業者が多く、その恰好は裏社会においては目立ちすぎるため、新規の客は中々つきにくい。そのため、ほとんどM専属の運転手となっている。
あっけらかんとした性格。裏表がない、というよりも裏表がどちらも表象に現れている。Mからすれば読むまでもなく、行動が分かるため、一緒にいると楽でもあり、絡まれるため面倒な姉的存在。Mのことをませた妹分として扱っている。黒川のことは、Mに出来た初めて出来た友人だと好意的に捉えている。
その実、天王寺アルとは古い友人であり、彼からMを見守るように頼まれていた。だが、本人がそのことを口に出すことはない。ただ、その胸から下げているアクセサリーは天王寺アルが付けていたイヤリングを加工したものであり、外すことはない。
・セリフイメージ
「アタシは『運び屋』。右から左に物を運ぶだけ。目的なんて私の荷物じゃないもの。」
「しっかり掴まってなさい。飛ばすわよ!!」
「アタシの可愛い妹を頼んだわよ、ワンコちゃん。」
「目的地に送り届けるまでが『運び屋』の仕事よ。」
「はぁ。運び屋であって、ベビーカーじゃないっつうの。」
⑤久野忍(ひさのしのぶ)
・ビジュアル
鈍色の髪をポニーテールにまとめた少女。髪色と同じマントに片眼鏡を付けている。逃走と侵入には邪魔になるものの、シルクハットは絶対に手放さない。
・設定
・セリフイメージ
「私は『
「妹を助けたいの、私。だから、貴方達は邪魔しないで。」
「似てるわね、私達。」
「返してもらうわよ、私の宝物っ!!」
「ふふっ、盗みたいものができたから。続けるわ、この仕事。」
⑥天王寺アル
・ビジュアル
目がチカチカする様な金髪天然パーマの男。いつもワイシャツ一枚にシワシワのズボンを履いている。煙草は吸わないが、いつもシャツのポケットに入っている。口が上手く、顔もいいが、胡散臭い雰囲気が漂っている信用ならない男。両耳に付けた狐を模したイヤリングが悪目立ちしている。似合わないキッチリとした腕時計を付けているが、壊れているため動いていない。時間に縛られることが嫌だから壊した、というのが本人談だが、実際は親友の形見。時計がなくても遅刻はしない。
・設定
本名:不明。いつもふざけている様で、その実よく相手のことを見ているため、コンフィデンスマンとしての腕は一流。仕事は仕事として割り切っているため、どんなことがあっても自分の身大事に生きてきた。アルの狙いは裏社会を支配し、その力で表社会をも支配しようとする『SHALOCK』と『CHILDREN』を壊滅させることだった。近々大きな計画を始めるという噂を聞きつけ、『CHILDREN』の中枢に潜入し、計画の資金を巻き上げる算段だった。しかし、『CHILDREN』に暗殺技術の指南役として潜入した際に黒川健斗と出会い、何度も言葉を交わすことで、仕事一筋だった心に揺らぎが生じてしまう。それは、健斗が親友に似ていたから。
親友との出会いは高校。卒業後、親友は大学へ、アルは就職した。平和を望んでいた親友は『SHALOCK』に入隊し、順調にその地位を上げていたが、任務中に死亡する。親友がエリートコースを突き進む中、就職先からドロップアウトして詐欺師になっていたアルは、偶然事件の現場に居合わせる。そこで親友が『SHALOCK』の一員に殺される場面を目撃するが、その後事故死だと発表されたことに違和感を覚える。敵が表社会と裏社会に精通している組織だと知っているアルは、一年発起し、コンフィデンスマンとして海外で修業を積み始める。『CHILDREN』に潜入するのは、それから数年後のこと。
『CHILDREN』内で昇格し、『SHALOCK』に潜入したアルは「ライヘンバッハ計画」に利用されようとしているMの姿を目撃する。健斗に今は亡き親友を重ねてしまったアルは、親友の言葉を思い出していた。友は、子どもが守られるべき存在だとよく言っていた。だから、自分の信条を曲げ、計画を投げ捨ててまでMを助ける選択をした。その後はこれまでの人生で培ってきた口八丁手八丁で危機を乗り切るが、二組織を一人で相手取るのは厳しく、自分を囮にして騙すことでMを助けた。Mを追う追手を巻き込んで爆発を起こしたため、死体は見つからなかったが死亡扱いとなっている。
・セリフイメージ
「こら。おじさんじゃない、お兄さんだ。まだ、な。」
「泣いてる子がいるなら助ける、当然だろ?」
「俺はいつも、お前に教えられてばっかりだ。」
「俺の人生最後の大仕掛け、付き合ってもらうぜ。」
「俺は……世界一の嘘つき野郎なんだよ……。」
⑦Mr. H
・ビジュアル
白髪の混じった灰色の髪をオールバックに撫でつけた壮年の男。スーツを着た死神、という言葉がよく似合う程細身で色白。常に黒手袋を手放さない。銀縁の眼鏡をかけているが、伊達眼鏡。ただ、周囲には目が悪いと思わせておくために、眼鏡を外している時は目を細める。時間に正確で、時計のズレを修正するのが趣味。
・設定
相手のことは基本的に○○さんと呼び、一人称は「私」。基本的に物腰は柔らかであり、高圧的な態度に出ることはない。それは、相手の行動を読んでいるから。護身術もそれなりに身につけており、健斗と互角に争えるほどの実力を持っている。
治安維持組織SHALOCKの代表。信条は「世界平和」。そのために、まずは東京から悪人を消すことを計画した。頭脳明晰で人心掌握術にたけており、暗殺者養成組織CHILDRENを抗争を起こすことなく、傘下として従えた。そして、CHILDRENの中で有望な人材をSHALOCKに採用し、東京に裏と表の両方から支配網を広げていった。その最終段階となったのが――自分と同等の頭脳を持つ存在を作ることで、裏社会により盤石な支配体制を敷く――ライヘンバッハ計画だった。しかし、中々彼の頭脳に耐え切る適合者がおらず計画は頓挫していた。そこにひょんなことから巻き込まれたMが適合したことから、計画が再開される。だが、もうすぐ実行、という所で天王寺アルの妨害を受けて計画は失敗。それどころか、Mの逃走、裏社会の活発化を招いた。ただ、計画自体は諦めておらず、犯罪探偵と名乗り始めたMを捕らえることを重要な目的に据えている。
組織名、推理小説が好きだった妹に由来している。妹はシャーロックに憧れており、彼をマイクロフトとして扱った。そんな妹と両親は、彼の留守中に強盗に殺害された。これは、心優しい青年がMr.Hと名乗り始めるきっかけとなった事件であり、治安維持組織SHALOCK最初の事件でもある。
・セリフイメージ
「私が目指すのは世界平和です。是非、貴方の力をお借りしたい。この手を取っていただけますか?」
「護身術は紳士の嗜みだとも。」
「シュークリームです。貴方も食べますか?」
「他の誰を欺けても、私だけは欺けない。」
「さながら、裏社会の帝王、と言ったところでしょうか。」
〇物語構成
・全五章構成
プロローグ~1章
社会が表と裏の二つに分かれた時代。裏社会で姿を消した妹を追う黒川健斗は、心許ないお財布事情から新居を探していた。そこで提案されたのが、裏池袋3-12のBだった。自分に気持ち悪いほど当てはまる奇妙な入居条件に対して覚悟を決めた健斗は、そこで『犯罪探偵』Mと出会う。法外な依頼金と引き換えに事件を解決する裏社会における探偵であるMは、初対面の健斗の個人情報を言い当て、その洞察力と連想力の高さを見せつける。卓越した才能に驚く健斗に向かってMは、「妹を見つける代わりにボディーガードを引き受けてくれ」という提案をする。彼女の能力に、失踪した妹を見つけられる可能性を見出した健斗はその手を取り、契約が成立する。そこに依頼者が現れる。彼の名は荒川紘一、名の知れた実業家だった。彼の依頼は、盗まれた絵画を取り戻すこと。ここ最近世間を騒がせている『怪盗』の仕業だった。荒川紘一が法外な依頼金をその場で払ったことと『怪盗』と勝負ができるかもしれない、という条件に満足したMは依頼を引き受ける。
第二章 飼い犬 と ご主人様
『怪盗』は古典的な怪盗で、何かを盗む前には必ず予告状を出し、悪人からしか盗まない。連続絵画窃盗事件の犯人『怪盗』の情報を二人が集める中、『怪盗』の犯行予告が公開される。『怪盗』の口から目的を聞き出すため、Mと健斗は次の標的となった美術館へと潜入する。Mは『怪盗』を捕らえるための罠を張り巡らせるが、何者かに雇われた兵隊に邪魔され、怪盗を取り逃がす。ただ、絵画の強奪には成功し、二人はアジトに絵画を持ち帰る。
第三章 盗み屋 あるいは 絵画
絵画を調べた結果、絵の下に人身売買が行われる会場と日時が記されていることが判明した。全てMの想定通りであり、後は『怪盗』を押さえるだけだった。だが、『怪盗』の行方は知れず、現れるとしたら、人身売買の会場だった。自分の計画を邪魔した何者かに対して制裁を加えるため、そして『怪盗』との決着をつけるためにも、人身売買の会場に乗り込むことを決意する。
第四章 問題編 その後 解決編
会場に潜入したMと健斗。表社会の人間と裏社会の人間が入り混じる会場で始まる人間の展示会と売買。その内の一人、健斗の妹と同年齢位の少女が壇上に上げられた時、『怪盗』が動き、彼女の身柄を奪還しようとする。しかし、彼女の登壇は『怪盗』をおびき出すための罠であり、あと一歩の所で『怪盗』は取り押さえられてしまう。裏の社交場に不穏な影を落としていた『怪盗』への怒りはすさまじく、公開処刑が決定される。その権利がオークション形式で売られ、法外な金額が飛び交う中、『百億円』を提示したMが競り落とす。健斗と共に壇上に上がったMは司会者から受け取った拳銃を天井に向けて撃つ。合図と共に会場の奥から無人のバイクが走り込んできた。
第五章 再会 そして 解散
混乱する室内を的確に走るバイクに乗り込んだMと盗み屋&妹。Mは健斗に殿を頼んで、三人を乗せたバイクは屋上へと向かう。屋上にはヘリコプターと運び屋が待ち構えており、三人はバイクから飛び移る。ヘリコプターはすぐさま飛び立つものの、健斗の守備をすり抜けた追手による銃撃を受ける。しかし、Mは動じることなくヘリコプター内に積んでいたジェラルミンケースを開ける。中から解き放たれたのは大量のお札だった。空を覆うようにバラ撒かれたお札が追手の視界を阻み、見事に逃げおおせる。
一方、会場はあらかじめMが呼んでいた警察が突入したことによって、更に混迷を極めていた。三人が乗ったバイクを追う人間を無力化していた健斗は、その混乱に応じて撤退しようとするが、警察と共に突入してきたらしい傭兵の襲撃を受ける。黒猫を模したフルフェイスマスクにスーツ姿の彼、または彼女は自分を『SHALOCK』の人間だと名乗った。その所属通り、犯罪者を許さない黒猫の猛攻を受けた健斗は戦闘中に変装用の仮面を失い、素顔を露わにしてしまう。そこにもう一撃加われば、危ない、といった所で何故か黒猫の動きが鈍る。その隙を逃さず、健斗はMとは反対方向、入り口に向かって逃走する。
入り口を警察と『SHALOCK』の面々が取り囲む中、警官の変装を施して一階の入り口を抜ける。だが、警察の恰好のままその場を離れられる筈も無く、万事休すか、という時に屋上からバイクが落ちてくる。自動操縦らしいバイクは先ほどまでMたちが乗っていたものであり、Mたちが無事に逃げおおせたことを知った健斗はそれに跨って逃走する。
その姿を遥か上、屋上から眺めながら、黒猫はマスクを外して呟く。
「兄さん……。」
エピローグと次章への引き
荒川紘一から受け取った依頼金は、逃走時にばら撒いてしまったため、収支がマイナスになった。そんな赤字財政を全く危惧して居なさそうなMと焦る健斗。ただ、彼らに残ったものもあった。「盗みたいものができた」らしい盗み屋と、元々Mの保護者的立ち位置らしい運び屋だ。彼らが今後も力を貸す、と約束したことを受けて、Mは犯罪探偵社『JAMES』を本格的に始動させることを宣言する。
場面は変わって『SHALOCK』本部。黒猫こと黒川寧々が上司に事のあらましを報告する。ただ、犯罪探偵に兄である健斗が関わっていたことだけは報告しなかった。上司である黒スーツの男は、ビルの最上階から階下を見下ろし、笑う。
「滝底から帰ってきたか、
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