第612話 花が咲く ⑦

 注)残酷な描写、生き埋め等の不快な描写があります。

 過去公開作を改定しておりますが、不謹慎とされる描写も残っておりますので、心理的に困難な状況に置かれている方は、目を通さずに飛ばしてお読みいただければ思います。

 また、作中、死者などを冒涜する行為も描写される事が多々ございます。

 詳細な描写を避けるようにはしておりますが、ご不快と感じる場合は読まずに閉じていただければと。


 ***




 次に、別の手が私を掴んだ。

 小さな手。

 掌を差し出すと指を握り込む。


 痩せ細った子供だ。

 外見に暴力の跡は無い。


 彼女からは驚きが伝わる。

 彼女が見たのは、殺された少女と花になった男達の最後だ。

 蔦に覆われ四肢が最後に引きちぎられて草むらに消えていく。

 次に彼女が見たのは、墓守達だ。

 草むらに消えた男達を呼んでいるが、誰一人答えず不思議がっていた。

 不思議がっていたが、探す素振りもなく作業を始めた。


 作業。

 少女の死体を解体し始めたのだ。


 狂気の沙汰である。

 子供の視点が揺れ、あたりを見回すとたくさんの死体が積み上がっていた。

 解体場にしていたのだ。


 女を集め、拷問し殺害する。

 そして家畜を解体するように、腑分けをした。

 取り出した内臓を切り刻み、この円を描く土に捏ねて混ぜた。

 あまりのことに子供は、泣くこともできなかった。

 そして最後の仕上げとまかりに、彼女を埋めた。

 この土の真ん中に、生きたまま。


 ざくざくと土が降ってくる。

 やめてと何度も叫んで。

 なんども、なんども。


 私も苦しくて喘いだ。

 あぁそんな、助けて、怖い。

 彼女の悲鳴、懇願。

 ちいさな子供の、声。


 喉にも鼻にも土が入って苦しくなる。

 硬い土に胸が押しつぶされて、そして。


 伝わる苦しさに口を開く。

 酷い。

 女達の最後はここだ。


 グリモアよ。

 彼らは何をした?

 擾乱などという術ではない。

 死霊術も確かに忌まわしい行いはある。

 だが、死霊術とは死者と語らい、その力を借りる術だ。

 神に願い魂をとりもち、理の中で力をふるう業だ。

 この私の考え方は間違っていたのか?


『使う者次第さ』


 では、これが死霊術、呪術であると?


『ふふふっ、皆の声が聞こえるだろう?

 我らの怒りが聞こえるだろう?

 それが我らの答えだ。

 このような洗練とは程遠い児戯を。

 我らが認めると思うか?

 奪うはもっと素早く。

 己が死をもわからせぬ程に、速やかに密やかに行うのだ。

 力を悟らせる事なく支配をし。

 同じ恐怖を与えるとしても、このような醜い有り様ではない。

 そしてな、このように糧を多く必要とするのは、無理な力を使っているということだ。

 低能な輩が、使えもせぬ術に手を出した。

 その力不足を贄にて補おうとしているのだ。、

 無駄に命をすり潰し、己の愚かさを晒しているというわけだ。』


 何故、わざわざ残虐なことをした?

 女を集めたのはどうしてだ?

 女の方が弱いと思ったからか?


『嬲り殺しにしたのは、そういう男達だったからさ。

 と、言いたいところだけれど、まぁこれも理由がある。

 講釈を始めてもいいのかい?』


 泣く子供の姿の後ろ、つぎつぎと女達が浮かび上がる。

 淡い姿は人の形を辛うじて留めていたが、何故か薄い。

 それでも私にとりすがり、必死に何かを訴えていた。


『そうだね。

 君もしたようだし、ながら、少しだけ説明しようね。

 何、そんなたいした話じゃないさ。

 僕だったら、こういう術の使い方をしないのになぁ。

 これだけ命を手にしたのなら、もっともっと別の使い方をするのになぁ。

 死んだことにも気が付かないほど、をして使役したのにね。

 はいはい、、そんな事はしないよぅ。

 だって、僕はいい子だからね。

 さて、ちょっとばかり、まじないをしようか。

 グリモアのは、チクッと痛いかも知れないね。

 お友達のも、協力してくれるってさ。

 さぁ、ように、皆でお願いしようね。

 こんな酷い奴らは、生きて腐れて、お花の養分になっちゃえばいいのさ』

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