rkgk―――雑文置き場

刈田狼藉

銃の手入れをしながら少年ヴォルフは泣いてしまう


太平洋二十年戦争の末期、

主な戦場は北ローディニア大陸各地の主要都市だった。

共産連邦の国内シンパである反政府ゲリラとの戦いは熾烈を極め、

今日も郊外で激しい銃撃戦があった。


銀髪に頬肌の白さが際立つ十五歳の少年兵―――ヴォルフは、

銃撃戦を終え、

仲間と合流するために移動しなければならなかったが、

銃身が熱を持ち砂も被ってしまっていたから、

分解して点検する必要があった。


分解して機構内部に砂が入っていないか確認し、

素早く組み上げると、

弾倉の取り付け、

装填ボルトの動き、

銃床にガタツキは無いか、

引き鉄は正常に引けるか、

銃身は真っ直ぐか、

照準に狂いは無いか、

それらを手速く確認した。

少年兵とは思えない、

流れるような手慣れた銃さばき。


ベテラン兵にも匹敵する技量で狙撃銃を点検しながら、

ヴォルフは、

しかし子供みたいに泣いてしまっていた。


いつものことだった。

戦闘のあと、

気持ちが高ぶったその後は、

きっと泣いてしまうのだ。


眼のまわりを赤く上気させ、

汚れた頬肌を涙に濡らして。

子供みたいに、

泣いてしまうのだ。


彼にとって戦闘とは、

復讐、

なのかも知れなかった。


まだ十一歳の子供だった彼が受けた、

いくつもの仕打ち。


戦災孤児だったヴォルフは浮浪児となり、

街を徘徊し、

悪い大人たちに攫われたのだった。


空腹の苦しみ、

暴力の痛み、

血の味とにおい、

怒鳴られる怖ろしさ、

下着をみずから脱ぎ下げるその惨めさと、

捩じ込まれ、

引き裂かれる痛み、―――


でも、

その直前に、

少しだけ優しくされる、

その時だけはちょっと安心で、

頬肌と髪とを撫でてもらうと、

おかあさんとおとうさんを思い出して、

ちょっとだけ、

ちょっとだけうれしくて、


「大好き」


そんな自分が、

あの頃の自分が惨めで、

悲しくて、

悔しくて、

少年は泣いてしまうのだ。


あんなのぼくじゃない、

あんなのうれしくない、

あんなの好きじゃない、

でも、

でも、

ぼくはとても怖くて、

安心できる場所が欲しくて、

あたたかい場所が欲しくて、


それであんなこと、

あんな言葉、

あんなかお、

あんなこえ、―――!!!


あんなのぼくじゃない!!

あんなのぼくじゃない!!

あんなのぼくじゃない!!

あんなの、

ぼくじゃない、………


そうして、

殺人機械と化した少年は、

しかしこころだけはどうしても殺すことが出来なくて、

泣いてしまうのだ。


数時間後には、

戦場で獲物を追う獰猛な殺し屋に戻る。

しかし今だけは、

親からはぐれた子供に戻って、―――















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