人吸い

藤間伊織

第1話

久々に完全フリーの休日が手に入ったので、前からの計画を実行に移すことにした。

残念だが、猫カフェに癒されに行こうとか、景色のいいところでお弁当を、とかそういうのではない。


俺はお祓いに行きたいのだ。


一ヶ月前、友人らと飲み歩いてべろべろになった俺は誘われるまま地元の心霊スポットに赴いた。特に何も起きなかったが、翌日の頭痛がひどかった。そのときはただの二日酔いだと思っていたが、何日か経ってもたびたび襲う痛みに悩まされ続けていた。

病院にも行ってみたが異常なし。精密検査までしたがいたって健康だと言われてしまった。

それから悪寒もするようになって、やっと心霊スポットに行ったことを思い出した。体が重いしさっさとお祓いなりなんなりに行こう。そう思った次の日から予定が急にたくさん入ってくるようになった。そのせいでのらりくらりと一ヶ月も……というわけだ。


しかし、こういうのはどこへ行けばいいのだろうか。寺か?神社か?

今まで平々凡々な人生を送ってきたため、伝手は一切ない。寺なり神社なりに電話して「お祓いお願いしたいです」とでも言えばいいのだろうか。もし予約制なら面倒だな……と思いつつ、とりあえず駅まで来てみた。

さて、どうするかと思っていると、


「お兄さん。そこのお兄さん」


と声を掛けられた。見ると路地から怪しげなおばさんがちょいちょいと手招きをしている。そんな不用心な人間ではないので無視しようとすると、向こうから寄ってきた。


「お兄さん、悩みあるだろ。しかも、あっち系の」

なんなんだ、この人は。すると心の中を読んだように

「私はちょっとした霊能者さ。今なら安くしとくよ?もし失敗したらお代は結構」

奥の方に視線をやると、よく占い師が使ってるみたいな机が見えた。

まあ、どこかに連れ込まれるわけでもなさそうだし変なもの売りつけられたらすぐ帰ろう。

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