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その帰り道、真琴は大阪環状線の青い椅子に座って目を瞑り、思索を巡らした。
彩の彼氏について詳しくは聞けなかったが、少ない情報から考えても、リスクを冒してまで彩と付き合い続けるだとか、彩を守るような男ではなさそうだった。
男は三十二歳で、一歳年上の妻と三歳になる娘がいる。彩曰く「出世コースを邁進している、期待のホープ」とのことで、現在は店舗マネージャーをしているらしい。
肩書通りのご立派な男が、全てを放り出して一人の部下と一緒になる覚悟があるのなら、そもそも既にさっさと妻も子供も捨て去ってしまっているはずだ。彩の心を弄んでいることについては、その状況こそがまさに証明している。
でもな、と真琴はため息をつく。
自分たちは大人で、互いの恋愛に無遠慮に踏み込むのはルール違反だ。たとえ友人が破滅の道を突き進んでいるとしてとも、通せんぼしてはいけない。
仮に行く手を阻もうとも、恋愛のエネルギーに負けてしまう友情を目の当たりにするほうが辛い、と真琴は思った。
電車のドアが開くと、焼肉の匂いが車内に流れ込んでくる。飯田とのLINEのトーク画面を開き、来週の同伴は焼肉に行きたいと打ち込んだ。
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