3-2

 金曜日の営業終了後、聖子ママがカウンター下の収納をゴソゴソしたかと思いきや、いつぞやの商店街の福引で当ったという銭湯の割引券をくれたので、私は寄り道してから帰ることにした。


 サウナ、水風呂、外気浴。一巡して、更にもう一巡しようとしたときだった。

 頭を棒か何かで殴られたような、強い衝撃が走った。痛みが引く前にもう一度。またもう一度。何度も見えない何かで殴られるような感覚に見舞われる。

 見えない殴打が繰り返される衝撃の間隔がどんどん短くなっている気がする。

 近くのベンチに腰を掛けた。ガン、ガン、と痛む頭を両手で包んで俯く。

 私以外の客はいないらしく、湯船の循環ろ過装置がお湯を吐き出し続ける音だけが聞こえる。

 原因を一つ一つ洗い出そうにも頭が痛くて回らない。助けを呼ぶこともできず、ただただ痛みに耐え続けた。


 気がついたとき、時計を見ると午前四時三十分を指していた。もうすぐ閉店の時間だ。

 いつの間にか私はベンチに上半身を横たえていた。どれだけ時間が経ったかわからないけど、多分五分や十分どころではない。

 裸の体はカピカピに乾いて冷え切っていた。

 体をゆっくりと起こすと頭の奥がズキンズキンと痛む。硬いベンチに無理な格好で長時間横たわり続けたせいで、肩も背中も腰も痛い。

 冷えた体に掛け湯してから湯船に浸かる。少しでも体を温めたかった。

 しかし、髪を乾かさなくてはいけないし、営業終了ギリギリに会計をして店員に白い目で見られたくないし、と時間が気になって、結局十分と入っていられなかった。

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