三分間で世界を救え!「えっ!ヒーローライセンスD級の僕がですか!」 就職したくないからヒーローになった男は世界唯一のタイムリープ持ち。 負け知らずと言われた、世界一のヒーローは世界で一番負け続けていた

ネムネム

撃破1・赤波新屋

その日もいつもと変わらない、日常が過ぎていくはずだった。


「東都に突如現れた、怪鳥が街を破壊して暴れています。近くの住民の方々は直ちに避難して下さい」

街の中心部にある大型モニターに映し出された映像には、巨大な鳥が暴れまわっている姿が映し出されていた。


「私達も避難するわよ」

現地に居たレポーター達もその場から離れようとした時、その男は現れた。


「ちょっと待て、あれは!あの姿はまさか!」

カメラマンがとらえた姿は、怪鳥のくちばしに佇む(たたず)一人の男。

なにをする訳でも無く、くちばしの上を悠然と闊歩している。

全ての支配から解放された様に、その男は「ただ歩いた」


「視聴者の皆さん見て下さい、彼が来てくれました。ヒーロー赤波新屋」




~次の日~

「新屋、アンタまた一人で倒したの!」

赤波新屋・この物語の主人公であり、ここヒーロー事務所「BBB」

大手事務所の様に人気なトップヒーローも所属していない貧乏事務所に所属している。


「えっまぁ」

事務所の扉を勢いよく開け、一人の女性が駆け寄って来た。

女性の名は「春木奈々」B級ヒーロー。


「まぁ。じゃないわよ」

怒っているのか、歩み寄って来る姿は鬼神が宿っているよう。

風を切り、口からは白い息を吐いて向かって来る。


「俺は悪くないって」

迫りくる脅威、それは怪物だけとは限らない。男はこの事務所に入ってから最初に覚えた真実だった。


「悪くない?・・・・・・」

手を握りしめ、奥歯を噛み締めた女性は赤波新屋に向かって指をさして口を開いた。


「アンタがいくら強い怪物を倒しても、事務所に支払われる報酬がD級上限までしか支払われないの分かっているの!」


ヒーローに支払われる報酬は「級」と「難易度」の合算で決まる。

ちなみに赤波新屋のD級は、基本的に戦闘に向かない個性が多く「準ヒーロー」として緊急時に避難誘導などに協力をしてもらう。多くは一般市民として過ごしている。

D級ヒーロー活動時に支払われる報酬金額・時給1.050円

怪物退治をした時は時給×8が支払われる。

平たく言うと赤波新屋の稼げる金額は1体につき、8.400円


「だってあの時」


「だってじゃない。怪物だって毎日湧いて出て来る訳じゃ無いんだから、収入源減らしてどうするのよ」

二人が言い争いをしていると、その背後に一つの影がゆっくりと迫って来ていた。


「お前らいい加減にしろ」

棒状にくるまれた新聞紙で二人は頭を叩かれた。

煙草をふかしながら呆れた様子で二人の見つめる男。


「大鐘さんおはざす」

「なにするのよ、モジャモジャ」

二人は叩かれた頭を押さえている。


「お前ら朝からうるさいんだよ、事務所は学校じゃあないんだから仕事をしろ」


ダルそうな目をしている男の名は「大鐘響」

ヒーロー事務所「BBB」の代表を務めるA級ヒーロー。


「新屋、お前が昨日倒したバケモン。あれA級相当ってさっき本部から連絡来たよ」


怪物には危険性、退治難易度で等級を振り分けられている。

そして、A級相当の怪物を倒すにはA級ヒーローが適正である。

仮に下位のヒーローが立ち向かうには、数で押し切るしか勝ち筋は皆無である。


「新屋、アンタいい加減昇級申請出しなさいよ。A級って幾ら貰えると思っているのよ」


「出してはいるんだけどね」


昇級申請とはヒーロー達が上の階級に上がる為に、本部に提出する書類の事である。


「出しているのになんで、C級になれないのよ」


「俺に聞くなよ、俺だって不思議なんだよ」


C級は書類を提出すれば基本は問題なく、C級に昇級する事ができる。


「新屋、お願いだから怪物を倒す前に、私かこのモジャモジャ待ってよ」


「善処します」





「無敗のトップヒーロー」と呼ばれる男

赤波新屋がまだ無名の時の話である。

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