勇者に追放された男、何でもこの世から消滅させるスキル「追放」で古竜も一撃で倒し、王家専属のSランク冒険者に成り上がる!〜今まで魔物もダンジョンの罠も全部俺が消していたって、ちゃんと説明したよね?

もなか

第1話 追放された男、スキル<追放>に目覚める

「ディーン、貴様を追放する!」




『ピコーン!』


 勇者からそう告げられたとたん、俺の頭上で電球が点滅した。

「……つ、追放だと……」

「驚いているようだな。その程度のことに気づかないクズだから、お前は追放されるんだ。ならば言ってやろう、お前が……」

「ちょっと待って。今忙しい」


 俺はステータス画面を確認する。

 

 名前:ディーン・アレクシス

 性別:男

 年齢:16才

 

 などといった、見慣れた記述の下に、


「スキル」


<追放>


 という、見慣れないスキルがある。


「どういう事だ……」


「どうした、ディーン。自分のクソみたいなステータスを見て、追放の理由をかみしめてるのか?」

「追放……追放……」


 勇者の皮肉も、自分の置かれた状況も忘れて、俺は自分の身の上を考える。



 思えば、俺はあちこちで追放されてきた。

 追放の多い人生を送ってきました……と自叙伝なら始まるところだろう。

 

 俺の名前はディーン。

 俺は、ビイング王国の貴族の息子として生まれた。

 父親は『剣聖』と謳われた王国の将軍。

 俺も当然、父の跡を継ぐ者と思われていた。

 そうして、毎日剣術の稽古に明け暮れていた。

 十歳になったら王国の魔法学院にも通い、学問と魔法の訓練にも励んできた。


 だが……。


「……ディーンどの、あなたには授けられるスキルはありません」


まさかの宣告。


 王国の民は十歳になれば、『スキルの神殿』でスキルを授かることになっている。

『上位剣術lv100』『究極剣技』などの高位スキルを手に入れることで、将来を明確にするのだ。


 だが、僕にスキルはなかった。


「ま、まさか……そんなことって……」

 スキル神殿の神官は、あっけにとられた俺を、憐れむ目で見つめた。

「残念ですが……あなたのステータスには、いかなるスキルも見当たりません……」

 彼は、俺のステータスを提示した。

 そこにあるのは、見事な白紙。

 期待していた高位スキルはおろか、『初級剣技』『火属性魔法』のような、赤子でも持っているようなスキルさえ、俺は持てなかった。

「ノースキル……こんなことは始まって以来です……」



 俺の将来の道は閉ざされた。

 のみならず、家族の、学園の恥となった。


「ディーン、お前のような無能をこの家に置いておくわけにはいかない……出て行け。顔も見たくはない」


 父からの無情な宣告。


「我々学院も『スキルなし」』の人間を置いているなどというと外聞が悪い。君をこれ以上、置いておくわけにはいかない」


 学院長からの無慈悲な通告。


 そうして僕は、自分の立場を追われて、一介の冒険者となった。


 魔法学院では、俺は首席だった。

 それだけの努力を払ってきた。

 それにもかかわらず、俺は追放された。

『スキルなし』というのは、それほど恥ずかしいことなのだ。


 スキルなしの冒険者。

 それでも、自分を鍛え続けた。

 スキルなしの状態でトレーニングするのは本当に辛い。

 

 けれど精進を続けて、今のパーティに入ることができた。


 俺が入ってから、パーティは連戦連勝を続けた。

 なぜかピンチになるたび、敵がいなくなったり、行き止まりのかべが消えたりしていたのだ。

 ダンジョンの罠が、なぜか俺たちが来る前にすべてなくなったりしていた。

 最下層のダンジョンで、最強のボスモンスターが何故かいなくて、アイテムだけ悠々と手に入れるなんてこともあった。

 そして最難関と言えるクエストを、最短時間でくぐり抜け、見事Aランクパーティとなった。


 その晩の、酒場での出来事だ。

 俺はパーティのリーダー、勇者ジーグから呼び出された。

 何事かと思っていると、いきなり「追放」を言い渡された。

 

 そして――。


(スキル「追放」?)


 俺は首を傾げる。

 そんなの、聞いたことがない。


 ――その時、俺の視界が卓上のナイフを捕らえた。


「追放?」


 例えば、このナイフ。

 このナイフを「追放」したら、どうなるんだろう……。

(この世界から……追放?)

(抹消……消し去る?)


「……おい、ディーン。聞いてるのか?」


「待ってください!」


 そのとき、甲高い声が響いた。

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