異世界転生者を夢に見るお仕事

かれん工房

プロローグ

 西暦二〇〇〇年代。世は異世界転生ブームに侵されていた。現状に絶望した若者達、未来に絶望した若者達、果ては、何年も引きこもり続けてどうにもならなくなったおっさんおばさん達まで、トラックの前に飛び出す始末だった。 もちろん全員が転生できるわけがない。多くの者達が無駄死にだった。

 だが、コンマ数パーセントの確率で、異世界へ転生できた者もいたという。もちろん、異世界に転生したとしても、成功するとは限らない。そこは生存バイアスだ。異世界に転生し、成功した者の話だけが、まことしやかに都市伝説として広がっていった。

 ついには帰還者まで現れた。数年間の記憶がなく、異世界の魔法を使う者が現れたのである。異世界へは、ほぼ一方通行だと思われていたが、希望が生まれてしまった。異世界と行き来できる可能性である。

 だが、別の可能性を多くの者達は忘れていた。異世界から転生してくる者も、また存在したのである。彼らは、現代人の知らない物理法則に従い、科学ではなく魔法を使う。科学が進みすぎた結果、魔法に見えたのかもしれない。そこを見分ける方法はあるわけがなかった。

 とはいえ、現代人の中にも、脈々と受け継がれた秘法を使う者達が生き残っていた。呪法、陰陽道、超能力、そして異世界や未来、宇宙から伝えられた様々な技術達。

 それらを使う人々は、各国政府に集められ、様々な災害に対応すべく秘密裏に組織化されていた。異世界人は必ずしもこの世界の味方ではない、それは今や一部の人々の間では常識となっていた。

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