「勇者の買い物」


店主「いらっしゃい。なにか探し物かい?」

勇者「ああ、大魔王と戦うための武器がほしい。攻撃力の高い武器はないか?」

店主「武器…防犯用のことかい。これなんかどうだ」

勇者「なんだこれは」

店主「これは野球のバットだ」

勇者「鈍器だな…悪くない」

店主「…野球のバットだ。グリップ部分が左手にかかりやすくなっているから、打球の飛距離が伸びるんだと」

勇者「攻撃力アップの追加効果が付与されているのか」

店主「…まぁ、そんなところだ。他になにか欲しい物は?」

勇者「何か身を守る物があれば…店主、それは何だ」

店主「これか。さっき鍋を売った時にいらないって返されたんだが」

勇者「これは…勇者の盾だな」

店主「…鍋のフタだ」

勇者「透視効果も付与されているのか」

店主「…耐熱ガラスだ」

勇者「耐熱…ならばドラゴンの炎も防げるのか?」

店主「………あ、ああ。そうだ。そうだ。全くそのとおりだよ!」

勇者「鎧はないのか?」

店主「これでいいんじゃないか!」

勇者「これは?」

店主「これは…雨の日でも大丈夫。スーパーレインコートだ!」

勇者「水属性に対して防御力が高いということか」

店主「そんなところだ」

勇者「私は行かねばならない。魔王を倒すために」

店主「一体何のイベントなんだ?」

勇者「邪魔をしたな。代金はこれで足りるか?」

店主「これは…金の指輪じゃないか。これじゃお釣りを出せない」

勇者「釣りはいらない」

店主「太っ腹だなぁ。こいつはおまけだ」

勇者「この玉は何だ」

店主「飴玉だよ。食べると元気が出るんだ」

勇者「回復アイテムだな。かたじけない。店主の好意に報いるため。私は必ず大魔王を倒してみせる!さらばだ!」

店主「気ぃつけてなぁ」


「ロンよりショウコ」


ショウコ「見てください。あの人。なんだか変な格好してますよ」

ロン「あれは…この世界の勇者だね」

ショウコ「バット持って鍋蓋持って、レインコート着てますけど…」

ロン「なかなか様になっているじゃないか」

ショウコ「あの装備で大丈夫なんですか?」

ロン「あれは異世界で手に入れた伝説の装備らしい」

ショウコ「…どう見てもフリーマーケットか何かの商品っぽいんですけど」

ロン「いや、あれには神の加護ある!あれだけの加護があれば邪悪なドラゴンにも勝てるさ」

ショウコ「大魔王に挑むフリーマーケット勇者ですか…」

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