「虹の種」
あるところに正直者の青年がいました。
青年は農夫でした。
しかし、親の代からの借金があり、とても貧乏でした。
それでも青年は、雨の日も、風の日も毎日毎日こつこつと働いていました。
ある日のことです。
青年が畑仕事をしていると、一人の美しい女の人が現れて言いました。
「私は旅をしている者です。しかし、手持ちの食料が尽きてしまいました。どうか、食べ物を分けていただけないでしょうか」
青年は女の人に言いました。
「それはそれは、大変お困りでしょう。大したものはございませんが、どうぞお入り下さい」
青年は女の人を家へと招き入れました。そして、質素ながらも食べ物を振る舞いました。
食事が終わり、お金を払おうとした女の人に青年は言いました。
「こんな食事にお金を払うだなんてもったいない。困っているときはお互い様です。もしどうしてもというのであれば、困っている人を見かけたときに助けてあげて下さい」
女の人は青年の言葉に感動し、一粒の種を青年に渡しました。
「これは魔法の種です。これをあなたの畑に植えてみてください。きっといいことがありますよ」
そう言って、女の人は去っていきました。
「さてさて、不思議なことを言うものだなあ」
青年は不思議がりましたが、ものは試しとその種を畑に植えてみることにしました。
するとどうでしょう。
畑の土が光ったかと思うと、そこから七色の虹が空に向かって伸びているではありませんか。
青年はポカンと口をあけたまま空を見上げていました。その時青年は女の人の言葉を思い出しました。
そして、青年は意を決したようにその虹の上を歩き始めました。
「虹の先に何があるんだろう」
女の人の「きっといいことがある」という言葉も気になっていました。
どれくらい歩いたでしょう。青年は虹の頂上にたどり着きました。もう雲の上です。遠く下を見れば、青年の暮らしている村が小さく見えました。
「ずいぶんと遠くに来たものだなあ」
それでも更に進むと、虹の先に大きなお城が見えてきました。雲の上にできた立派なお城でした。
お城の門のところに着くと、門が開き女の人が現れました。
青年が畑で出会った女の人でした。
青年は女の人に言いました。
「ここはどこですか」
「ここは天使の住まう天空の城です。私はこの城の女王です。あなたは私に選ばれました。あなたが王です」
「王?」
青年は首をかしげました。
「私は世界を旅して、天空の城の王にふさわしい人間を探していました。そして、やっと清く優しい正直者に出会うことができました」
女の人はとても嬉しそうでした。
「王さまになれば、どうなるんですか」
「あなたの望む通りに何でもできます。世界中の富も名誉もあなたの物です」
すると青年はにっこりと笑って言いました。
「そうですか、それではひとつだけお願いがあります」
「なんなりと、あなたはもう王なのですから、どんな願い事も叶えることができますよ」
女の人は言いました。
「それでは…私は、大変お腹が空きました。どうか食べ物を分けてください」
女の人はキョトンとしています。
「お願いとは、あなたの望みとはそれだけなのですか」
「はい、私に王になる資格はありません。そんな立派な人間ではありません」
青年はそれだけいうと、食料をもらって虹の道を引き返していきました。
畑に帰り着くと、青年はいつも通りこつこつと畑仕事を始めました。
青い空の上に大きな白い雲が浮いていました。
いつまでも…
「ロンよりショウコ」
ロン「いやぁ、お腹いっぱい」
ショウコ「言われるまま出されたものを食べるからそうなるんですよ」
ロン「出された食事を食べないと失礼になるじゃないか」
ショウコ「それにしても、食べ過ぎです!」
ロン「いやいや、悪かった。でも、あまりに居心地が良くってね」
ショウコ「そうですね。見ていて気持ちのいいくらい仲の良い夫婦でしたね」
ロン「特に奥さんなんて、気品というか、風格というか。どことなくそういう気質が感じられたね」
ショウコ「……私に対して何か不満でもあるんですか」
ロン「いやいや、決してそのようなわけでは…」
ショウコ「あやしいなぁ」
ロン「おほん、とにかくだ。あれだけ気立てが良くって、料理がうまいんだったらレストランでもやれば良いんだよ。きっと繁盛するよ」
ショウコ「そういえば、あの夫婦にレストランをやってみろ!みたいなこと言ってましたね」
ロン「僕は、本当のことしか言わないからね」
ショウコ「きっと畑 仕事をしするよりいいですよ」
ロン「レストランか…開店したら行ってみたいな」
ショウコ「お店の名前はどんなのがいいですかね」
ロン「そうだね、『天空のレストラン』ってのはどうだい?」
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