短編・掌編

あさみかぜ

1「四番目の女」

 私は四番目の女! 四番目の女だった!


 取り立ててかっこいいというわけでもないし、スタイルが抜群とか頭が良いとか、お金持ちとか、運動ができるとか、あなたってそういうのじゃない。でも、私、あなたが好きだった。



 会えるのが夜だけだったけど、ホテルばっかりだったけど、私、あなたが好きだった。あなたの体重が好きだった。太ってはいないけど、引き締まっているとはいえない。


 でも私、それが好きだった。たまに甘えて私に預けてくる重さが好きだった。外飲みで酔って歩く時に私に預けてくる重さが好きだった。終わった後に私に預けてくる重さが好きだった。あなたは私に関心がなかったから。


 あなたが感じられるあなたの重さを感じるときが幸せだった。



 私、あなたの体温も好き。冷え性の私には、熱すぎるくらいの手。繋いで歩いたら、左右で全然違う温度になる手。あなたはぬるくなる左手。私はぬるくなる右手。


 同じくらいの温度になっていく手。寒い夜に手を繋いでくれるあなたが、私、好きだった。


 私、私以外に女がいるって、私、知っていた。それでも私、あなたが好きだった。一週間に一回でも、私と一緒にいてくれるから。


 私以外にあなたを知っていたとしても、この瞬間だけは私しか知らないあなた。私だけが知っているあなたがいてくれたら、それで良かった。


 私、あなたが好きだった。



 趣味の話しかしてくれなくなった。


 私との将来とか、置きたいインテリアとか、行きたい場所とか、一緒に作りたいお菓子とか、やりたいゲームとか、服の好みとか、私のこととか、私とあなたの話しとか。


 私、あなたのこといつも考えてる。でもあなた、趣味のこと考えてる。私といるとき、話しているとき、してるとき、ずっと違うこと考えてる。分かるよ。


 私、あなたが好きだったから。



 一ヶ月に一度になった。私の部屋ばかりになった。私のものが返ってきた。もうプレゼントはなくなった。遊びに行くのも、ご飯を食べに行くのも、ない。


 ただ体を使われて、私、それでもあなたが好きだったのに。私、私だけだったのに。


 いつから私、四番目の女になったの。いつから私の他に三人も見つけたの。


 私、私は、四番目の女になってしまった!



 私、あなたに後悔してもらいたい。もう四番目の女でいいから。私、あなたが好きだった。今でも好きよ。


 ねえ、あなたの重さが好きよ。あなたの熱さも好きよ。ねえ! 今、私、あなたのすべてを感じてる!


 あなたも同じ熱さを感じている、でしょう? 私、ねえ、今のあなた、大好きよ。私、四番目の女だけど、最後の女になった。


 私、幸せよ。ねえ、私、あなたの重さを、熱さを、体温を、感じてるの。今日くらい、私が刺したっていいでしょう。私、私、あなたが好きよ。


 これからのことを考えたら不安だけど、それでも私、幸せよ。



 冷たい? そんなわけない、熱いでしょ。気持ちいいでしょ。ずっとこのままでいたいでしょ。

 

ね、ね、このまま私の上で死ぬのよ、それってとっても素敵でしょ?


 ねえ。

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