第6話 FC「オリ推し団」

 地球市民間に差がなくなると、人々は別の場所に差を求めた。心理的な代償行為であった。


「ジェーンたん、カワユス」

「ジョン、さいこー」


 市民はBSL4施設に隔離されたオリオンズのファンクラブFCを結成し、「推し活」を生きがいとした。


「オリ推し団」と自称するFCは世界規模の会員ネットワークを誇り、他の社会活動を飲み込んでいった。


 使節団とテレパシーで結ばれたいという願望がFCメンバーの悲願となり、「俺は●●と結ばれた」という妄想が飛び交うようになった。


 連邦政府としても市民のガス抜きを考慮し、オリオンズにある種のパフォーマンスを求めた。


自撮動画セルフィーで構わないので、定期的にメッセージを発信していただけないだろうか?」

「我々はそちらで言う「芸能人」とやらではないのですが……」


 オリオンズは困惑を示した。


「特別なことは必要ないのです。今日はどうやって過ごしたとか、昨日は何を食べたとか……」

「そんな日常生活の情報を欲しているというのですか?」

「何でしたら衣装や小道具、食事や飲料など撮影に必要なものは、すべてこちらで用意いたします」

「はあ……」


 結局それが市民の不安解消につながるならということで、オリオンズは動画配信を了承した。

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