第4話 疑いの声

「しかし、うさん臭いよな?」

「タダって言うのがな? 信用できない」

「全員美形ってのは何なの? いやみ? 比べられたくないわ!」


 表向きは歓迎であったが、裏では宇宙使節団をバッシングする声があった。


 もちろん恩恵自体は受けたい。それはそれとしての不満であった。人間とは身勝手で狭量な生き物である。


 市民生活は大きく変わった。

 エネルギー、インフラはすべて無料となった。


 しかし、新規開拓が軌道に乗るまでは既存資源に頼らざるを得ず、「材料費」はただにはならない。

 機械化と自動化は未だかつてないレベルで進められたが、それでも「人件費」はゼロにはならなかった。


 とはいえ、逆に言うとコストはそれだけであった。その他すべてのコストは無料化された。


 5年経つと、海底資源が潤沢に利用可能となり、「材料費」問題さえクリアされた。


 結局、経済とはお互いの人件費をやり取りすることに集約された。通貨は意味を無くし、労働時間を価値として交換するシステムが普及した。


「エネルギーや資材はタダなのに、何で俺達が働かなきゃならねえのかなあ?」

「全部タダにしてくれりゃいいのにな」

オリオンズ・・・・・がなんか隠してるんじゃねえの?」


 市民の暮らしは豊かになり、貧困は解消されたが、別の形で不満は生まれてくるものであった。

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