オリオンからの使者

藍染 迅@「🍚🥢飯屋」コミカライズ進行中

第1話 オリオンからの使者

「火星軌道上に未知の物体が観測されました」

「既に観測衛星からの画像が届いています」

「画像解析の結果、物体は人工物と推定されます」

地球外知性観測チームETIOTは当該人工物を恒星間宇宙船と推定しております」


 地球連邦宇宙局に立て続けに報告が殺到した。衛星天文台、宇宙科学研究所、地球外知性観測チーム(Extra Terrestrial Intelligence Observation Team)などからの緊急報告であった。


「全衛星レーダー、宇宙船に観測照準各合わせ!」

「了解。衛星レーダー軸合わせ完了」

「衛星軌道パトリオットによる迎撃態勢取れ!」

「宇宙船推定進入軌道に対する迎撃角セット。セット完了は90秒後」

「衛星軌道パトリオット発射制御渡せ!」

「パトリオット発射制御解放。連邦首相および防衛司令の生体認証により発射可能となります」


 地球連邦首相マーガレット・チャンと地球連邦防衛司令ジム・カインズは指静脈と虹彩認証により本人確認を行った。


「生体認証を確認。物理キー接続によりパトリオット発射可能となります」


 防衛本部は未だかつてない緊張に包まれた。

 都市を消滅させることができる規模の防衛兵器が、初めて起動状態となったのだ。


 唯一の救いは発射方向が宇宙空間に向いていることであった。


「光通信に感あり! 連邦公用語です」

「PAにつなげ!」


『……に告げる。こちらは宇宙連邦オリオン大星雲施設団です。我々の目的は友好と親善です。敵対の意思はありません。繰り返す。地球連邦市民に告げる。こちらは宇宙連邦オリオン大星雲施設団です。我々の目的は……』


「連邦首相よりのメッセージを告げる。録音後ただちに送信。『こちらは地球連邦首相マーガレット・チャン。当方には貴船迎撃の用意あり。敵対意思なき事の証明を要求する。本メッセージ受信後1分以内に返信されたし』。以上、送れ!」

「メッセージ送ります。……送信完了」


「こちらのメッセージが届くまで約3分。待機時間の1分と、返信が届くまでの3分。合計7分の待機となります」

「くっ。まるで大航海時代の手旗信号だな。コーヒーを、濃いやつをくれ!」


 チャン首相は火星軌道上の宇宙船を映し出した大型モニターを睨んだ。この映像とてライブではない。


「感喪失! 該船を見失いました!」

「蝕に入ったのか? 探せ! 再発見後ただちに報告せよ!」


「月軌道に新物体! 入感あります! 映像をサブ・モニタに出します」


「今度は何だ? ……こ、これは?」


「火星軌道上にて確認した宇宙船とID取れました。同一です」

「何だと? 馬鹿な! 瞬間移動したとでもいうのか?」


『……繰り返す。地球連邦市民に告げる。こちらは宇宙連邦市民団です。我々の目的は友好と親善です。敵対の意思はありません……』


 地球連邦は自らの防衛手段が無力であることと、宇宙からの来訪者に敵意が無いことを知った。

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