その1-3 一体何があったっていうんだ……?
「龍虎くんっ!」
朝早く、
席に座っていた俺に、なんと遥ちゃんの方から話しかけてきた。
ここ数日ではとても珍しい。
「どうしたの?」
驚いた顔を頑張って抑え、冷静に聞き返してみたつもりだ。
内心ドキドキしているの、バレていないよね!?
感情を表に出さず、顔を取り
≪……さあ?≫
おい!
ここにきて敵対するなよ!
くっそお、こんなのドキドキするなって方が無理に決まってる。
なんたって、
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青井遥 好感度:80
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ここ数日間、じれったくずっと動かなかった好感度が、ついに恋愛感情ライン(好感度80)を突破しているんだぞ!
ドクン、ドクン!
ドキドキして胸が苦しい。
昨日、一体何があったっていうんだ……?
「ううん、ごめんやっぱりなんでもないっ!」
「そ、そう?」
「うん」
そう言うと遥ちゃんは、鞄だけを置いて後ろの席の方へ行った。
あやちゃんと話でもするのだろう。
それにしても今の「なんでもないっ!」の顔。
可愛かったなあ。
まさに、太陽のような眩しい笑顔だった。
≪好きになりましたか? 遥ちゃんのこと≫
な、なんだよ急に。
≪この前、西川に聞かれた時には誤魔化したではないですか≫
まあ、そうなんだけど。
「うーん……」
結論から言うと、俺から遥ちゃんへの恋愛感情はない気がする。
……多分。
恋愛どころか、女の子と話した事すら無かったため、優しく話しかけてくれる遥ちゃんにドキドキしているだけ……だと思う。
正直、さっき遥ちゃんの好感度が80を超えた時は、過去最大級に胸の鼓動がうるさくてどうなってしまうかと思ったけど。
男は、自分のことを好きな女性を好きになるというしな。
「けどなあ……」
付き合いたいかと聞かれると、素直に首を縦に振ることは出来なくて。
今は、ただ仲良くしたい。
多分それだけだ。
でも、また遥ちゃんから話しかけてくれてすっきりしたなあ。
また前みたいに話せると良いな。
キーンコーンカーンコーン。
朝のチャイムが鳴り、遥ちゃんが俺の前の自分の席に戻ってくる。
「何話してたの?」
「ふふっ、内緒」
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青井遥 好感度:80.1
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前言撤回。
やっぱもう
★
「よし、帰るか~」
今日は一日がとても早かった。
遥ちゃんがよく話しかけてきてくれたからだ。
彼女の隣にはいつも通り、あやちゃんもいた。
「バイバイ、龍虎くん!」
「んじゃね~」
「うん、じゃ」
そんな遥ちゃんとあやちゃんを、手を振って教室から見送る。
二人は、調理部の仮入部に行くそうだ。
どうして急に、とは思うが二人が頑張りたいなら俺は応援したい。
俺は例のごとく帰宅です。
誘ってくれる太一や西川には悪いけど、どっかの部活に入る気もないしなー。
外面や友人関係は変わっても、本質は根暗なのかも。
「って、今日は金曜か」
黒板の曜日・日付を見てふと気づく。
なんだかんだ、一週間はめちゃくちゃ早かったな。
前世はとにかく、さっさと終われ、早く土日になれ、と隙あらば願っていたものだが。
そう願えば願うほど、土日がどんどん遠くに感じるんだよな。
ちゃんと学校生活を楽しむと、こんなに早いものなのか。
来週の学校も楽しみだ。
「けど」
やっぱり土日は土日で嬉しい。
久しぶりにのんびり過ごすか。
この時代のゲームって何があるんだっけ。
本屋やゲームショップ巡りも良いなあ。
と、そこまで考えて俺は用事を思い出す。
「あ」
6ちゃんねるで、未来のソシャゲを書き込んだ時に届いた一件のDM。
『山下さん』との約束が明後日だ。
手ぶらで行くのもなあ、あちらはかなり本気っぽかったし。
となると……
「よし」
軽く準備をしますか。
俺の土日の予定が決まった。
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〜後書き〜
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「こういうことあったら良いなあ」とぼんやり考えて始めたこの作品ですが、たくさんの方にお読みいただいて大変光栄です!
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