第7話 イケメン=青春確定!
あのスレッドを立ててから、一時間後に俺の個人宛で
「んんん~?」
『はじめまして。山下と申します。……』
なんだこれ、新手の荒らしか?
こんなもんは無視だ、無視。
この“山下”という名前をはじめ、複数の個人情報を載せてくるあたり精工に見せているが……甘い。
俺がこんなのに引っかかると思ったか、バカめ。
そうだろ? ノーズ。
≪……≫
「ノーズ?」
てっきり「こんなのは無視しましょう。くれぐれも引っかからぬように」なーんて言ってくるかと思ったが、反応が悪いぞ。
≪……本当の可能性があります≫
「はあ!?」
何言ってんだこいつ。
もしかして、ネットリテラシーをご存じでない!?
≪誤字が三つ、内容が突飛でそれほど
「な、何が言いたいんだよ……?」
≪人が焦り、何かに
「本気か?」
≪はい。スパムのような意味不明さもなければ、迷惑メールのような宣伝広告もありません。単純に日本語力が足りていない、そんな風にも読み取れます≫
「そ、そう……」
どうするべきか。
ノーズはこう見えても、俺の意志に反して体を乗っ取るようなことはしない……え、しないよね?
≪しません≫
そうか、よし。
では改めて。
体を乗っ取るようなことはしないので、決めるのは俺だ。
「……」
『良いお返事を、何卒、何卒お待ちしております!!』
そう締められた文章を見て、確かに人間っぽいなとは思う。
けどなあ。
毎日6ちゃんねるでは
今更こんなネットのものを信じられるわけがない。
「でも……」
俺の中のトップの信頼度を誇るノーズが、確定ではないが本物だと言っている。
ノーズと俺の勘、どっちを信頼するかと言われると……
「もしもの時はまた守ってくれよ」
≪はい、もちろんです≫
俺は、山下と名乗る人物との
★
「ふあ~あ」
くそう、昨日のやり取りのせいで寝不足だ。
早く起きたのは相当に偉いけどな。
「それにしても……」
昨日の夜、返事を返した後、そっこーでDMが返ってきた。
「ぜひ会いたい」と。
ブラック企業に勤めてるのかなんなのか、山下さんは来週の日曜まで仕事が入っているらしく、続きはその時に、というところでやり取りは終了した。
「まさか本当のお願いだったとは」
≪言ったでしょう≫
正直まだ会ってみるまでは分からない。
それでも、やり取りをする中で人間らしさというか、ちょっとおっちょこちょいな部分が見えたのはたしかだ。
「ていうか、来週て……」
学校が始まってるよ……。
今回の件はまあまた考えるとして、今は一旦学校のことだなあ。
でもダルい。
大学ですっかりサボリ体質となってしまった俺は、「学校」と聞くだけでアレルギーが発症しそうだ。
「一日目はサボるか。二日目から本気を出そう」
≪体、乗っ取りますよ?≫
「昨日乗っ取らないって言ったよね!?」
はいはい、行けってことね。
せっかくやり直した高校生活、せいぜい頑張りますよ。
★
「ふう……」
朝、隣で妹と共に朝食を食べる。
うん、そこまではいい。
だが問題はその服装。
制服ッ!
「なにじろじろ見てんの。キモいんですけど。てか早く食べれば?」
いかにも「うざ」って顔で見てくるが、俺には見えているぞ。
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石川ひな 好感度:104.1
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前より伸びているじゃないか。
ふっ、可愛い奴め。
「ごちそうさま。お
「あ、ああ」
話を戻そう。
嘘だろ、時間経つの早くない!?
これ俺だけ時間奪われてない?
なんか★とかで時間飛ばされてないよな!?
≪時間は十分ありましたよ≫
「うぐっ」
分かってるよ、分かってるけどさあ。
……いや、この一週間出来ることはやった。
気合いを入れ過ぎな気もするが、俺は青春を送る!
「やるぞ!」
「急に大きい声出さないで。ほら、ひなみたいに準備しなさい」
「は、はい……」
あまりの気合いに急に声を出してしまった。
「バカお兄」
そんな言葉を残して部屋を出ていくひなは、ちょっと笑っていた。
「うわあ……」
まじかよ、
陰キャ時代を過ごした俺に特に思いではないけど、一応三年間通った学校だ。
「ん?」
「あの人、新入生?」
「ちょっと話しかけてみてよ!」
「無理無理! かっこよすぎて」
周りで若干話し声が聞こえる。
内容は聞こえないが、なんだか俺を向いて話しているような……。
≪かっこいい、と言われてます≫
おい! 知ってるよ!
「はあ……」
相変わらず分かってないなあ。
こういう時は自分のことだと分かりながら、「何を話しているんだ?」と鈍感系ラノベ主人公を演じて淡々と歩いて行くもんなんだよ!
≪そうでしたか≫
いいよ、てか
興覚めではあるけど、やっぱり……
「あんなイケメン、雑誌でもありえないって!」
「どうしよう同じクラスだったら!」
「いい匂いするんだろうなあ……」
気持ち良いかも。
≪そうでしょう≫
おう、悪かったな。
全部ノーズのおかげだ。
これで俺の青春は確定だ!
そんな時、
「すみません!」
「ん?」
後方から声を掛けてきた女の子。
「あなたは……」
「やっぱり! この前は、助けていただきありがとうございました!」
遥ちゃんだった。
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