第55話 レオールのお願い

10の月に入ったのはこの世界に来て2か月半過ぎたあたり

日本だったら体育祭やら文化祭が行われる時期だな~なんてことをボケッと考えているとレオールが背後から飛びついてきた

「びっくりした…」

程よい重みに尻尾がパタパタ振られる気配

「どうしたのレオール?」

「お姉ちゃんピクニック行きたい」

「ピクニック?」

なぜ突然?と思ったけど昨日の晩そんな話をしていたことを思い出す


「そうねぇ…どうせなら皆も誘おうか?」

「誘う!」

即答だった

「じゃぁ日にちを決めて準備してからになるね」

「…今日じゃない?」

「今日すぐには難しいかな」

そう答えると耳も尻尾もぺたんと下がる

本当可愛いわ


「今日は皆の予定を聞く日にしようね」

「予定を聞く日?」

「そうよ。皆が同じ予定で動いてるわけじゃないでしょう?」

「そっか…泊りがけで漁に出る日やグズリスに行く日もあるから?」

「正解。だからレオールはこれからアネラと森と海に行ってくれる?」

「うん」

「伝えるのはピクニックをすること、尋ねるのは参加するかどうかとダメな日ね」

「ピクニックすること、参加するかどうか、ダメな日」

レオールは繰り返しながらリュックから取り出したノートにメモを取る

読み書きのスキルは持っていたけど使ったことはほぼなかったらしい

いっしょに暮らす様になってから少しずつ練習して今ではかなり上達した

最近ではパリスとメイア、エリナが一緒に練習するようになっていい刺激をもらってるみたい

この世界には学校なんてものが無くて、そういう教養的なことは親から子に伝えられる

どうせ学んだり練習したりするなら仲間がいた方が張り合いも出るだろうと、自然と集まる様になったのだ


「みんながいいって言ったら明日でもいい?」

そう尋ねる目がキラキラ輝いていてダメなんて私には言えそうにない

「そうね。みんなが問題なければいいよ」

「やった!」

「じゃぁそれも含めて聞いてきてくれる?」

「まかせて!アネラと行ってくる!」

ノートをしまうなりレオールは飛び出して行った


「この分だと明日になりそうね」

普段話してる感じでは直近で大きな出来事はなさそうだった

レオールのあの感じから明日で説得してくることも充分考えられる

「適当に準備しとこうかな」

サンドイッチやおにぎりなんかを一口サイズで大量に作ることにした

あとは揚げ物やスティックサラダみたいなつまみやすいものかな

亜人が多いことを考えれば肉と魚大量にいるかなぁ

明日じゃなかったとしてもアイテムボックスに入れておけば問題ないしね


ごはんを炊いてる間に唐揚げととんかつ用の肉を切って下味を付けておく

量が多いだけあってかなりの時間がかかるけど仕方ない

後はキュウリのようなスティック状で食べやすい野菜を切っていく

ディップは作り置きしてるのが大量に有るからそれを使えばいいかな


「ただいまー」

レオールが帰ってきたのはそんな時だった

「おかえり。どうだった?」

「みんな明日でいいって!」

やっぱり…

半分呆れながらも嬉しそうな顔を見れば微笑ましさが勝る

「良かったね。じゃぁレオールも準備手伝って」

「うん。あ、これみんなから」

そう言いながらレオールが作業台に置いたのは肉と魚介

パッと見る限りいわゆるレア素材も含まれていたりする

みんなそれだけ楽しみということだろうか

「いっぱい食べるからこれも使ってって」

「なるほど?」

正直助かる

量もだけど種類が増えるのは有り難いもんね

「エビはエビフライにしようか」

「準備する」

素っ気なく聞こえるものの尻尾はブンブン動いてる

唐揚げとエビフライはレオールの好物だから当然かしら?

「唐揚げいっぱい?」

「そうだよー。種類も色々作るから楽しみだね」

「貰って来た肉も?」

「一部はそうなるかな。あとは煮込んだり焼いたり」

煮込んだ後温かいまま置いとけるのはアイテムボックスならではの利点よね

結局レオールと1日がかりで準備した

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