一家転生 ~家族丸ごと転生したら僕以外の家族が最強でした~
猫寝
プロローグ
第1話 愉快な家族をご紹介。
どうもこんばんは。
こんにちはでしょうか、おはようってこともありますか?
まあともかく初めまして、戦場から失礼します。
僕たちは今、だだっ広い草原でおよそ100匹のモンスターに囲まれています。
ゴブリンやらスライムやらお馴染みのモンスターに加えて、なんか見たことない熊みたいな奴とか、虎みたいなやつとか、強そうなやつもいっぱい居ます。
普通に考えたら大ピンチなのですが――――
「オラオラオラオラ!!大剣で轢き殺すぞ雑魚どもがぁ!!ヒャッハー!!」
えーと……ご紹介しますね。
あそこで、ヒャッハーしながら身長より大きい大剣をぶん回して大量のモンスター相手に無双してるバーサーカーが、恥ずかしながら僕の母です。
「くきゃきゃきゃきゃ!!楽しいなぁ!!蹂躙楽しいなぁ!!」
……すいません、ちょっと母が蹂躙ハイになってるみたいで、お聞き苦しいセリフで失礼しますね。
ええ、その、母は十代の頃に女性の暴走族、いわゆるレディースの総長を務めあげた、その界隈では知らない人間が居ないほどの豪傑だったようで、どうにもその血が騒いでいるようです。
見てください、赤と金の入り混じった長髪を振り回し、裾が引きずるくらい長い真っ赤な特攻服のポケットに片手を入れております。
もう片方の手は、先ほども言いました巨大な大剣を振り回しているのですから、恐るべきパワーですね。
両手で持てばいいのにね。
アレが母かぁ……と思うといろいろ考えてしまいますが、少なくとも戦闘においては頼りになる存在です。ええ、尊敬する母ですよ?
特攻服の背中に書かれた「人・即・殺」の文字が輝いてますね。
「悪・即・斬」に影響されたと本人は言ってますが、悪ですらない人を即 殺すのは、どういう感情なんですか?
「良いよーママ。今日も絶好調だね。強いママが一番素敵だよ」
その母の後ろを、母を褒めながらニコニコついていってるのが、残念ながら僕の父です。
「狂暴なママが一番美しいよ!」
などと言っております。謎の性癖ですね。
そんな父は、真っ白でゆったりした法衣に身を包み、先っちょに玉の突いた杖を持っているハイプリーストです。簡単に言うと、凄い僧侶です。
低身長で小太りの父は全体的に丸みのあるフォルムで、さらに丸いメガネをかけておかっぱみたいな黒髪なので、もう言ってしまえば丸です。父は丸い、と覚えて頂ければ問題ないです。
母の後ろを歩き、時に当たりそうになる母の大剣を巧みにかわしつつ、母に補助呪文をかけて攻撃力や防御力を上昇させています。
さらには、防御呪文で上から飛んでくる敵の攻撃魔術や弓矢を防いだり、疲れてきた母を回復呪文で回復させたりと、とにかく母が気持ちよく暴れられるように万全の環境を作り続けています。
攻撃魔術こそ使えませんが、頼れる補佐役の父です。
「戦いが終わったら、甘いケーキを作ろうねー」
「ヒャッハー!!」
テンションを上げることも忘れません。さすがですね。
「おにぃ!!動いて動いて!!!ほら!!早く!!」
そして、僕の頭の上……というか、僕に肩車されてるのが、妹です。
正確には、僕の方が肩車をさせられているのですが、それはまあ良いでしょう。
「遅い!!もう敵が近づいてきてるでしょ!!この愚鈍!!」
おやおや、肩車してあげてるのに罵倒されましたよ?
可愛いですね。甘えてるんですねこれは。
見た目的には8歳くらいに見える妹ですが、実際は14歳です。
まあその辺の説明は後々するので今は置いておきますが、ボブの黒髪と、ゴスロリの衣装が良く似合ってます。母の趣味です。
そんな妹は、マジックアーチャーです。僕に肩車されながら、炎を纏った矢とか、氷を纏った矢など、さまざまな魔法の矢を放っています。
けど、魔法の矢は弓矢に魔力を込めるのに少し時間と集中が必要なので、油断するとすぐに敵が近づいてきてしまいます。
遠距離攻撃が得意なアーチャーにとっては致命的です。
そこで僕の出番なのです。
さて、そんな僕はと言えば……盗賊です。
特技は、ちょっと素早く動ける事と、簡単なカギを開けられること……以上です。
戦闘に必要な能力はまるでなく、力も人並み、特殊能力らしきものは何もない、駆け出しの盗賊が、僕です。
なので、唯一の「ちょっと素早い」という特技を活かし、僕は妹の足となって助けているのです。大事な役目です。
「左!!今度は右!!ああもう!駄馬!!」
おやおや、駄馬だそうですよ。まあ、反論も出来ませんが。
けど誤解なさらずに。妹はこう見えても可愛いやつなんです。
普段は割ときつく当たってきますが、怖がりで人見知りなので、何かあったらすぐ僕の後ろに隠れて、「おにぃ……」と泣きそうな顔で僕の服のすそを掴んできます。
ええ、守りたいって思いますよね。そりゃそうです。
「グワァァァァ!!!」
おっとしまった油断しました。
でっかい熊みたいなやつがすぐ近くまで来ています。これはピンチ!
しかしご安心あれ、こんな時にはあの子が居ます。
「にゃううっ!」
はい来ました。飼い猫のピィです。
子供の頃に、僕と妹が捨てられていたこの子を拾ってきてしまって、両親を説得して飼うことになった、という実に心温まるエピソードがあるのですが、それはともかく今は忍者猫です。
忍者刀を口に加えて、目にも留まらぬスピートで動き回って熊みたいなやつを綺麗に切り刻みました。強いです。
忍者がよく付けてる「忍」って書いてある額当てをつけています。ピィもお気に入りみたいです。ちなみに父の手作りです。手先が器用なんです父は。
っていうか、猫まで強いのに何で僕だけ弱いのだろうか……?
そりゃないよ神様って思いますよね。
いろいろありまして、日本に暮らしていた僕たちはちょっとした事故にあい、気づいたら家族全員 異世界転生。
家族みんなが最強の力を手に入れているのに、僕だけ弱い盗賊……猫ですら強いのにですよ?おかしな話ですよね。
世の中は理不尽ですね。それは異世界でも変わらないようです。
おっと、そんなことを考えていたら、妹が僕の髪の毛をギュッと掴んできています。
さっきの熊が怖かったのでしょうね。
僕は腕を上げて、妹の頭を撫でてあげます。
「大丈夫 大丈夫。兄ちゃんと一緒なら安心だろ?」
すると、髪を掴む妹の力がスッと緩みます。少し落ち着いたようです。
「ぜ、全然安心じゃないし!怖いし!ちゃんと守ってよね!」
ツンデレです。ツンデレが出ました。
ゴスロリアーチャーの妹ツンデレです。要素が多いですね。
けど可愛いから許します。大事な妹ですから。
というか、「そもそも別に怖くないし!」とか言いそうなところですが、怖いっていうことは素直に認めちゃう辺りが、可愛いですね。ね!ですよね!
可愛いんですよ僕の妹は!!!!!
なんて言ってる間にも、もう戦いは終わりそうです。
「おらぁぁぁ追いつめだぞ雑魚共がぁぁ!!! 惨殺してやろうか!圧死させてやろうか!!それとも轢死させてやろうかぁ!!」
「ああっ!なんて神々しいんだろうママ!!」
「あにぃ!!後ろ後ろ!!前に行くのと同じ速さで後ろ下がってよ!!」
「だいぶ無茶言うね!?」
「にゃあー!」
とまあそんなわけで、これが僕たち風霧(かざきり)一家です。
どうぞお見知りおきを。
あ、戦いは終わりましたね。圧勝でした。なによりなにより。
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