terrible〜酷〜 10万

鷹山トシキ

第1話

 2010年

 京都伏見北堀公園近くの閑静な住宅街。

 少女・麻美は印刷会社社長である父・和義と、美しく優しい母・彩子と共に幸せに暮らしていた。しかし麻美の誕生日の4月12日深夜に、突然家へ押し入ってきた黒いフェイスマスクの謎の5人組に母を惨殺され、父も両足の自由を奪われてしまう。

 何故母は殺され、麻美は生き残ったのか?


 2011年

 元特殊要員の但馬は、派遣会社社長を営みながら丸太町で細々と暮らしている。彼を訪ねて来るのは、ゴルフ仲間と隣家に住む少女、那美だけだ。那美は但馬を慕い、但馬も次第に那美に心を開いていく。東日本大震災の前日、那美がコンビニでジャガリコを盗んだと警察に捕まり、親の名前を訊かれていたところに但馬が通りかかる。那美は但馬をパパだと指差すが、但馬は無視して立ち去る。

  

 那美の母親は麻薬事件に関与しており、那美も母親と共に拉致されてしまう。麻薬取引や臓器売買の元締めである安塚兄弟は母子を人質にし、但馬に麻薬の運び屋を引き受けさせる。取引と同時に警察に通報し、但馬と取引相手を引き渡そうと企てていたのだ。当日、警察は取引相手のボスである雷電を取り逃がすが、但馬が使った車のトランクの中に臓器を抜かれた那美の母親の死体を発見する。

 場所は七条にある立体駐車場だ。3月19日午前2時5分だった。

 

 殺人と臓器売買の容疑で逮捕された但馬は身元を調べられ、前科や麻薬歴はないものの、1997年以降の記録が抹消されていることが発覚。調査の末に、但馬は97年から暗殺を主な任務とする特殊部隊要員として従事しており、2004年に起きた脱線事故を最後に記録が途絶えていることも判明する。その事故の際に但馬の妻が死亡している。彼女は但馬の子を身籠っていた。捜査官の隙を突いて逃走した但馬は、再び那美の行方を捜し始める。


 2020年4月11日

 麻美はカレー屋でアルバイトする大学生。店は二条大橋の近くにある。養父の和島のお陰で輝かしい青春を送っていた。牙城って素敵な彼氏まで現れた。麻美の最近の趣味は料理だった。カレーやステーキなどが作れるようになった。

 バイトを終えて店を出ると牙城がいた。マスクもせずにスマホで喋ってた。コロナになったらどうするんだろうか?麻美は眉をひそめた。

 琵琶湖疏水近くの牙城のアパートでセックスをした。麻美の90cmのムッチリお尻に牙城は釘付けだ。牙城の目を見つめながら麻美はフェラをした。 牙城のピストンに麻美はカワイイ声で喘いだ。

 激しく麻美は牙城の上で腰を振った。

 だが、牙城がイクことはなかった。

 牙城がゴムを外してると麻美が「大地は運がいいかもね?」と言った。  

「どうして?」

「イカないから」

「君はアホか? 明日でハタチだね? 誕生日は何がいい?」

「そーゆーのはサプライズでするもんだろ?そうだな〜プラダの靴とか?」

 牙城は真顔になった。彼は稼ぎもあまりない派遣社員だ。ボーナスもないらしい。彼とはマッチングアプリで知り合った。

「ジョークだよ。何でもいいよ」

 牙城は花柄のハンカチをプレゼントしてくれた。

 

 5月7日 - 新型コロナウイルス感染症の治療薬として、抗ウイルス薬レムデシビルが承認された。通常は医薬品の承認申請から実際に承認されるまでは1年程度を要するが、今回は医薬品医療機器法の特例承認の制度を使い、申請からわずか3日というスピード承認となった。

 この日から麻美は牙城が捨てたゴミ袋を盗み、牙城の生活を覗き見することが楽しみになる。そんな麻美の前に、残間という男が現れる。彼に誘われて家に行ってみるとハンマーやノコギリ、ロープなどがあった。

 5月20日の出来事だ。日本高等学校野球連盟が夏の全国高等学校野球選手権大会中止を発表。同大会の中止は戦後初。

「アパートの迷惑な住人を退治すんのが趣味でな……」


 5月25日 - コロナウイルスに伴う緊急事態宣言が約1ヶ月半ぶりに解除された。

 この日の夜、麻美の友人らがゴミ捨て場で女子高生をレイプし、傷を負わせて逃亡。麻美は女子高生を助けるふりをして連れ帰り、彼女を殺しバラバラにし、捨てようとゴミ捨て場に行く。するとそこで残間と会い、焼却した方がいいとアドバイスされる。麻美はさらに残間を殺害し、彼から拳銃を盗む。


 6月5日 - 俳優の生田斗真と女優の清野菜名が結婚を発表する。

 この日の夜、牙城が麻美の働くカレー屋に女とやってくる。彼女は単なる高校の同級生なのだが、牙城に異常な愛情を抱いていた麻美はショックを受け、女の勤め先のスーパーに行く。尾行して人気のない公園で女を残間のハンマーで撲殺する。麻美はハンマーにケルベロスと名付けた。


 牙城は翌朝、公園にやってきてベンチの前で女の死体を見つけて泣き喚いた。

「那美ィーッ!!」

 冷たい雨が降り始めていた。

 

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