検体B

 我々はコロニーファイブで過ごしている。


 人類の進歩は素晴らしい。


 人類はいつか来る地球滅亡に備えて、宇宙空間にコロニーを作った。


 ここでは、食料などを作っては地球に宇宙船で送っている。


 実際に、地球という星は見たこともないが、我々と同様の種が、何十億人といるらしい。


 コロニーは何百万人という規模であるから、想像も出来ない。


 他のコロニーはどうなっているのか。


 これが、コロニー中の会話で、最もされるものである。


 誰もが興味を持つが、興味を持ったところで誰も知らないし、誰も教えてくれない。


 私は、今日もコロニーの端に来て外を眺めようとする。


 そこに映るのは無限に広がるコロニーファイブの景色。


 ここは永遠に広いようで、塞がれた閉鎖環境。


 我々は宇宙空間にポツンと、佇んでいる。



 ― コロニーファイブの状況報告


 こちら、コロニーファイブ。本日も特に異常なし。


 実験開始まで残り3日。


 ここまでは順調に進んでいる。


 また、検体Bのマイクロチップの動作も測定した外気温、圧力等の値と一致しており、実験に問題ない。


 一つ、気になったが、検体Bはコロニーの仕組みを他の検体よりも理解している。


 単なる個体差かもしれないため、念の為、報告しておく。


 本日の報告は以上とする。

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