良かったね


私と同じく、高校から少し遠いA市から

通っている美代。


実家が近いのもあって仲良くなり

今では一緒の電車に乗って帰るのが

当たり前になっていた。



今日も2人で電車を待っていると

美代は子供みたいないたずらっぽい笑顔を浮かべて言った。



「ねえ、まぁちゃんは幽霊とか信じる?」

「え?どうしたの急に。」

「実はさ、撮れちゃったんだ。」

「な、何が?」

「し・ん・れ・い・しゃ・し・ん!」

「嘘っ!?ほんとに?」



美代は得意気に笑って

「私も最初は気にならなかったんだけど、影みたいなのが写っててぇ。」と言いながら

ぐっと私に近寄り、スマホの画面を見せる。



可愛い服を着た自撮りや食べ物などカラフルな写真が並ぶ中、一つだけ薄暗い森を写したかのようなの写真があった 。




「ほら!これ。近所の公園で撮ったんだけど…。」



森の写真をタップすると

一瞬読み込み時間がかかり画面が真っ暗になった。


そして、パッと写真が表示される。




その瞬間、私は叫んで目を逸らした。



画面の右端、ブランコを覆い隠すように

鼻から上をのぞかせた灰色の顔の男が写っていて、濁った三白眼でこちらを睨んでいたからだ。




「えっ?…え!嘘!こんなの写ってなかったのに!ごめんごめん。もう、消した!」

「びっくりした…。」

「最初はほんとにちいさな影だったんだよ。

まさか…。ごめんね。」

「ううん、まあ良かったね、消したなら。」



心臓がまだドキドキしていて上手く返せなかったけど、何とか声を絞りだした。



美代はいつもの調子で笑って言った。



「そうだよね!確かに驚いたけど、ただ影が大きくなってただけだし!」



え?と戸惑う私を置き去りに美代は続けた。



「別に人が写ってた訳でもないしね。

 良かった、良かった。」





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