たぁちゃん
私が実家と疎遠になった理由?
子供の頃、親に存在を無視されてたから、かな。
いや、毒親とは違うんだけど...
聞いてもらえる?
私には兄と姉がいて、よく可愛がってもらってた。
姉とは一緒におままごとしたり、
兄には本を読んでもらったり。
でも、両親と遊んだという記憶がない。
共働きで家をよく空けていたとかそういう訳じゃ無い。
父は仕事が忙しかったけどカレンダー通りの休みがあったし、母は専業主婦で家にずっと居た。
だけれど、父はおろか母とも話した憶えがないの。
学生の頃、一人暮らし始めてすぐくらいかな。
電話で母の日のプレゼント何欲しいか聞くついでに
当時のこと聞いたんだ。
今でこそ、私のことを認識しているし、産んだという記憶もある。
だけれど、私が2歳から3歳の間、全く認識できなくなったんだって。
たとえば、兄と姉のおやつを用意すると姉が「たあちゃんの分は?」と言う。
『正直、それを聞いた時、
イマジナリーフレンドかな?って思ったの。否定しちゃダメかなっておやつを用意した瞬間、貴方が見えるようになる...そんな感じのことが何回もあったの。』
それは父も同様で、
とにかく2人には見えないけれど子供に言われて気がつくということがあり、変だねなんて話をしていた。
ぱたっと無くなったのは、私が3歳になって七五三のお参りに行った時、その日を境に見えるようになったそうだ。
『へー、変な話。まあ話の種にはなったし、今度友達に話してみようかな。』
『信じてもらえるのかしらね、こんな話。』
『分からないけど、面白いじゃん!上手く話せるかな。』
『母の日の話からこんな昔話になるなんてね。』
『そういえば、プレゼント何がいいかで電話したんだった。スカーフの件は了解!また送るね。産んでくれてありがとう、なんて!』
私が照れ笑いしながら言うと、母は黙った。
『お母さん?』
『そうねぇ。たぁは私が産んだんだもんね。』
『え、え、なに急に。記憶はあるって言ってたじゃん。』
変な動悸がし始めた。
電話越しだが、雰囲気がおかしいのが分かる。
『記憶というか、そうね。
うーん。ほら、貴方がさも私達の子みたいな顔して家にいるからさ
押し入れを漁ったらたしかにたぁちゃんって書いてある母子手帳が出てきたのよね。
だから、私が産んだんだろうなって。』
他人事のように話す母に、冷や汗が溢れる。
『でも、その母子手帳の字、私の字じゃないんだよね。』
今度見てみる?と言う母に私は見ないって答えて、電話切ってそれっきり。
以上が実家と疎遠になった理由かな。
え、ところで私の名前はなんだって?
今更!?長い付き合いじゃん!
私の名前はたぁだよ。
たぁ。
え、なんでそんな顔するの?
変なの。
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